徳永えり、笑福亭鶴瓶&原田知世の娘役に喜び 手紙の大切さも実感「私も夫に…」
2025年3月9日(日)10時15分 マイナビニュース
●「このお二人の子供なんて『絶対やる!』って(笑)」
NHK連続テレビ小説『わろてんか』(17〜18)の女中・トキ役をはじめ、数々のドラマや映画で活躍している徳永えり。プライベートでは2019年に一般男性と結婚し、2023年に第1子を出産して母に。そして昨年2月に仕事を再開し、復帰作となる映画『35年目のラブレター』が3月7日に公開を迎えた。徳永にインタビューし、本作への出演を決めた思いや久しぶりに演じた感想、現場でのエピソードなど話を聞いた。
戦時中に生まれて読み書きができないまま大人になった夫が、35年間連れ添った妻へのラブレターを書くために奮闘する心温まる実話を映画化。最愛の妻・皎子(きょうこ)への感謝を手紙で伝えようと夜間中学に通い始める主人公・西畑保を笑福亭鶴瓶、妻・皎子を原田知世が演じた。徳永は西畑家の長女・浩実(ひろみ)役で出演。保や皎子の悩みに寄り添って気に掛ける、落ち着いたしっかり者の長女という役どころだ。
——この作品で復帰しようと決めた思いをお聞かせください。
『35年目のラブレター』のときはまだ子供が離乳食の全然前なのでどうしても私が必要な時間が多く、復帰しようとは思ってなかったんです。もう少し時間が経って落ち着いてから復帰しようと思っていましたが、あまりにも脚本が素晴らしくて「やりたい!」という思いが強くて。映画なので、すでに台本ができていましたし、スケジュールもある程度出ていたので、これだったらできるかなと思い参加させていただきました。
——鶴瓶さんと原田さんの娘役という喜びもありましたか?
それも出演の決め手の一つでした。このお二人の子供なんて「絶対やる!」って(笑)。ありがたいなと思いました。
——2023年5月から産休に入られ、本作の撮影は昨年2〜3月。約9カ月ぶりのお芝居となりましたが、ブランクは感じなかったですか?
初日が鶴瓶さんとの2人芝居で、私がお父ちゃんにいろいろ話しかけるシーンだったのですが、久しぶりにカメラの前に立って、すごくドキドキしました。赤子とだけ接している時間が長いのに、大勢の大人の方に囲まれて。でも、いざ撮影が始まるとやるしかないので、やってみたら普通にできて、思った以上にブランクは感じなかったです。緊張はしましたが、現場にいてくれたマネージャーも「いつも通りでしたね」と。関西弁の役というのも大きかったですし、お相手が鶴瓶さんだったという優しさもあって、自由にできてありがたかったなと思います。鶴瓶さんとも初めましてではなかったので、甘えさせていただきました。
——鶴瓶さんとはどの作品でご共演を?
20代前半の頃に鶴瓶さんの『スジナシ』という番組に出演させていただきました。『スジナシ』は全アドリブという当時私が一番苦手としていたもので、その前にご挨拶もしたらいけなくて、カメラが回っている状態でご挨拶して自分たちで設定を構築していくというスタイルでした。それから十何年ぶりにお会いしたのですが、私は原田知世さんとも妹役のぎぃ子ちゃんともご一緒したことがあったので、本読みの時点で西畑家はすごく和気あいあいとしていて、その空気感でやらせていただけたこともありがたかったです。
——演じる楽しさも感じられましたか?
楽しさも、難しさも、改めて感じました。
●原田知世に声を褒められ感激「一生の宝です!」
——浩実を演じる際にどんなことを意識されましたか?
(家族キャストの中で)唯一、知世さんだけ関西出身ではないんですけど、「関西弁が難しくて」とおっしゃりながらも、本読みのときの関西弁がめちゃくちゃ素敵で、もともとのお声も素敵だし、関西弁がなんとも柔らかくて、知世さんがしゃべっているだけで全員ふわ〜っとなっていて、「この空気感が欲しい!」と思ったんです。家族間でもらうならここだなと思い、知世さんの声に寄せようと意識して演じました。
——原田さんの声に寄せたポイントとしては、ふわっとした柔らかさということでしょうか?
柔らかさですね。もともと私は、大阪の中でも出身が京都寄りなので、どぎつい関西弁ではなくて、知世さんも私の本読みを聞いて、「こんなに柔らかいんだ」と思ってくださっていたみたいで。キャスティングの方に後々聞いたんですけど、家族構成で私演じる長女はお母さん似、次女はお父さん似にしたと言われて、「寄せて間違いじゃなかったんだ!」と思いました。もちろん鶴瓶さんにも寄せようと思いましたが、鶴瓶さんとは関西弁の掛け合いだけで成立すると思ったので、エッセンスを入れるなら知世さんの声だと思いました。
——鶴瓶さんとのやりとりで印象に残っていることを教えてください。
鶴瓶さんは現場でも本当にあのままで、完全なるムードメーカーというか、その場の空気を作ってくださっていました。でも、メイク前の時間などに「今、落語の勉強してんねん」「自分は落語を始めたのがほかの落語家さんより遅いから」とおっしゃっていて。何か面白いことがあったらメモされている姿も見て、すごい方だなと思いました。
——原田さんについてもお聞かせください。
知世さんに「実は知世さんの声を参考にさせていただいたんです」とお伝えしたら、私の声について「カリグラフィーの文字みたい」とおっしゃってくださって、「カリグラフィーって何ですか?」と聞いたら、西洋や中東の文字のことみたいで、なんておしゃれな表現なんだろうと。しかも「えりさんの声はすごく好き」とおっしゃってくださって、原田知世さんにそんなことを言ってもらえるなんて「一生の宝です!」って。「この声を大事にしよう」と思いました。
——役者の先輩としても刺激を受けるお二人でしょうか。
そうですね。鶴瓶さんも知世さんも全然違うタイプのお二人ですけど、なぜかそこにいると本当に夫婦で、不思議ですよね。鶴瓶さんは落語家さんでもいらっしゃって、知世さんは歌も歌っていらっしゃって、いろんな面を持っている方は強いなと改めて思いました。引き出しの種類の多さがうらやましいなと思いますし、役者以外でも幅広く活躍しているからこその自由さがあるなとすごく感じます。
●「命あるうちに感謝は述べるべきだな」と実感
——出演を決めた理由として、作品があまりにも素晴らしかったとおっしゃっていましたが、作品の魅力をどのように感じたかお聞かせください。
なかなか学習の機会に恵まれず文字が書けないまま大人になった方が、奥様のためにラブレターを書きたいんだという、その頑張っていく姿……純粋なエネルギーだし、愛だし、それに尽きるなと。最初に台本を読んだときも、夫婦間の愛もそうですし、それを支えていこうとする家族、教員の方や生徒さんなど、すべてが愛情で、すごく幸せな世界でした。劇的なことが起こるわけではないですが、真実だからこそ説得力もあるし、すごく美しいお話だなと思いました。モデルになった西畑さんご本人も現場にいらしてくださったのですが、本当にかわいらしい方で、「東京に出てきたからおしゃれしてきました」とにこやかに話されていて。そのお人柄が見ただけでわかるような方で、本当に素敵なご夫婦だったんだなと感じました。
——西畑さん夫妻から影響を受けて、ご自身の夫婦生活でも実践していきたいと思ったことはありますか?
手紙に書いて気持ちを伝えた西畑さんや皎子さんは素晴らしいなと感じ、命あるうちに感謝は述べるべきだなと思いました。忙しかったり、恥ずかしかったりして、夫に「ありがとう」とちゃんと目を見て言ったのはいつだろうって。夫は「ありがとう」と言ってくれることもあるんですけど、私は子供が生まれてからなぜかこっぱずかしくなってしまって、ダメですね(笑)。ちゃんとしなきゃなと気づきを与えてくれました。
——旦那さんとラブレターのやりとりをされたことは?
ないです! 子供が生まれる前は、誕生日や朝早く家を出るときに手紙を書いていた気がしますが。夫は、子供が生まれて退院したときに、お花と一緒に私と子供の分のメッセージを書いてくれたり、1歳になった時に「1年間ありがとう。お疲れ様」という手紙をくれたりしたんですけど、私は一切書けてなかったです。
——旦那さん素敵ですね。
マメなんです。私も夫に書かないとですね。もうすぐ夫の誕生日なので手紙を書こうと思います(笑)
■徳永えり
1988年5月9日生まれ、大阪府出身。ドラマ『放課後。』(04)で女優デビュー。『放郷物語』(06)で映画初主演。近年の主な出演作に、映画『コンフィデンスマンJP -英雄編-』『犬も食わねどチャーリーは笑う』(22)、『正欲』(23)、ドラマ『恋のツキ』(18)など。NHK連続テレビ小説『わろてんか』(17〜18)ではヒロイン・てん付きの女中・トキを好演した。