人気番組『人生の楽園』 出演に至るまでの道とその反響

3月11日(土)7時0分 NEWSポストセブン

『人生の楽園』に出演、61才で牧場を始めた男性のケース(番組HPより)

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 長い老後をどう過ごそうか。いつか訪れる夫の定年や子供の独立に、「第二の人生」をふと考える人も多いだろう。それを前向きにとらえるか、後ろ向きにとらえるか…いずれにしても知っておくべきは、そんなに甘くはないということ。


 2月20日、2016年度の「移住先希望ランキング」が発表された。1位山梨県、2位長野県、3位静岡県。いずれも風光明媚で都会にも出やすい地域が選ばれた。


 昨今の移住ブームもあってか、ふるさと暮らしを希望する都市住民と地方自治体のマッチングを支援するNPO法人「ふるさと回帰支援センター」に相談に来る人は、前年から20%以上増加。男性が80才、女性は87才と平均寿命が延びる中、「第二の人生」に思いを馳せる人がそれだけ多いのだろう。


「子供が独立したり定年退職を迎える年齢にさしかかったかたはシニア期をどのように生きていくかを考え始めます。そんななかで『新しいことを始めたい』との気持ちから起業の相談に来るかたは、毎年1.5倍くらいずつ増えています」


 そう語るのは、「銀座セカンドライフ株式会社」でシニア世代の起業の相談に乗る、片桐実央さん。


「“やりがいのある仕事をしたい”“今までの仕事や趣味で培った経験を生かしたい”と起業にチャレンジするかたが多い印象です。実際、商品開発の仕事をしていた男性が、趣味のジョギング関連の商品を開発する会社をつくったり、“ケーキ作りが趣味で得意だけど、パティシエ並みではない”という女性がペット用のスイーツを作って売ったりする例もあります。


 健康を維持しつつ生きがいを見つけて働くのが“第二の人生”の理想だと思っていらっしゃるのだと思います」


◆高視聴率番組『人生の楽園』


 そんななか、「自分にとっての人生の楽園」を見つけ、充実した第二の人生を歩む人たちの暮らしぶりを紹介する番組、『人生の楽園』(テレビ朝日系)が人気だ。放送が800回を超えた今も、土曜夕方6時という時間帯に、平均視聴率11%台をキープしている(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。番組プロデューサーの森川俊生さんは、好調の理由をこう見ている。


「高齢化が進む今の日本で、“第二の人生をどう生きていくのか?”は大きな社会的関心事。この番組は時代の要請に応えているのではないかと考えています。放送開始から16年ですが、“第二の人生”は多様化しています。妻が都会に残り、夫が田舎で新しい暮らしに挑戦しながら適度の距離感で暮らしたり、“冬は都会、夏は田舎”のように、季節ごとに生活場所を変えるなど、同じ“2地域居住”でも、時代とともにそのスタイルは変わってきています。そういった変化を番組で見られることも人気の理由なのではないでしょうか」


 石川県でどぶろく造りをしながら冬季限定で農家レストランも営む夫婦や、少年時代の夢を追いかけて薪ストーブ職人になった夫とそれを支える妻など、どの人もうらやましいかぎりのセカンドライフ。ただし、番組では“その先”は描かれていない。


 本誌・女性セブンが調べてみると、実はせっかく始めた「第二の人生」からひっそりと手を引いている人も少なくなかった。店や旅館などを閉めていたり、ブログの更新が止まり、電話がつながらなくなっているところも…。なかには経営している宿泊施設を、「別の人にゆずりたい」と発言している人もいた。


『笑顔育む木曽馬の楽園』として2009年に同番組に出演した『吉良の赤馬牧場』の河井弘康さん(69才)、裕子さん(70才)夫婦も2015年に牧場を閉鎖し、第二の人生に幕を引いていた。“楽園”でいったい何が起きたのか…。


◆「まるで昔の彼女に再会したような気持ち」

 

弘康さんが馬に興味を持ったのは、高校3年生のとき。


「農業高校だったので、北海道に酪農実習に行ったんです。裸馬で走る先輩の姿が、格好よくて、うらやましくて。ぼくも何日か馬に乗せてもらって、すごくうれしくて、“馬と一緒に暮らせたらいいな”と思ったことをよく覚えています」


 しかし、その後、進学・就職と人生のコマを進めるうちにいつしか馬のことは忘れ、妻子のため、公務員として忙しく働く日々が続いた。


「だけど35才の時に家族で『木曽馬トレッキングセンター』に行ったとき、“やりたかったことはこれだ!”って感動したんです。女房はいるけれど、まるで昔の彼女と再会したように、胸がドキドキと高鳴りました(笑い)」


 それからは週末の休みを利用して地元・愛知県から長野県まで通い、乗馬や馬の扱い方を教えてもらう日々が始まる。


「基礎的なことから教えてもらって、乗れるようになったのが40才くらい。この頃から、“仕事を辞めて、牧場を始めようかな”と思っていたんです。だけど子供がまだ学生だったし、財産なんてなかったから、がまんしました。子供が就職して給料をもらうようになったら、好きにやらせてもらおうと、心の中で決めていました」


 シニア向け宿泊予約サービスを提供する『株式会社ゆこゆこ』が行った「第二の人生に関する調査」を見ると、「今、第二の人生が始まっていると思う」と答えたのは、70代以上が92.5%、60代が78.6%であるのに対して、50代は28.7%だった。


 弘康さんもまた、50代のうちは決心がつかなかった。


 平均寿命だけでなく、健康に暮らせる年齢「健康寿命」が男性71才、女性74才と大幅に延びている今、「第二の人生」をスタートさせる年齢も延びているのだ。


「50代に入ると、気力と体力が落ちてくるのを実感して、早く始めたいと焦りました。でも、仕事の給料もよくなってくるし、途中で辞めると退職金が減ってしまうことになるから、踏ん切りがつかなかった。結局、牧場を始めたのは退職後、61才の時でした」


 こうして木曽馬3頭とともに、弘康さん念願の「赤馬牧場」が2009年4月にオープンした。


「牧場は、自宅から車で5分の山の中腹にありました。お客さんが来てくれるか不安でしたが、地元の新聞が取り上げてくれて、初日は大盛況。10時から17時の営業時間中、馬を引きっぱなしでした」


 営業時間外も馬の世話や牧場の掃除で忙しく、牧場のゲル(テント)に寝泊まりし、朝6時に起きて23時に眠るハードな日々。しかし、弘康さんの心は高揚していた。


「“やった! おれの人生、61才からだ!”という感じで、就職した時より、ひょっとしたら結婚した時よりもうれしかったかもしれない(笑い)。やり遂げた達成感や満足感もありました」


 そんな幸せ絶頂のなか、『人生の楽園』のオファーが舞い込んだ。


「牧場を始めて1か月くらいの頃、電話で出演依頼がありました。実はずっと見ていた好きな番組だったから、すごくうれしかったです」(弘康さん)


 出演後の反響は大きかった。放送の途中から友人・知人などから電話が鳴り続け、来場者数も、放送後の土日が、約7年の営業のうちでいちばんのピークに。


「放送から1か月は、本当に休む間もないくらい忙しかった。人を乗せている馬も相当疲れたと思います(笑い)」(弘康さん)


※女性セブン2017年3月23日号

NEWSポストセブン

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