新元号はもう決まっている! 立入禁止の秘密司令部に保管か

3月11日(月)6時0分 NEWSポストセブン

5月1日に天皇は上皇となる(共同通信社)

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 首相官邸と向かい合って建つ内閣府本庁舎の地下1階に「関係者以外 立ち入り禁止」の張り紙が出された部屋がある。看板もない。官邸と地下通路で結ばれたこの部屋は「皇室典範改正準備室」で、天皇生前退位の皇室典範特例法が2年前に成立してからは、事実上、新元号選考作業の“秘密司令部”となっている。


 部屋の“主”は古谷一之・官房副長官補。官僚トップの杉田和博・官房副長官を支える3人の官房副長官補の筆頭格(内政担当)で、事務次官級のポストだ。


 4月1日に予定されている新元号発表に向けて取材にしのぎを削る各紙の政治部記者から最もマークされている人物でもある。


「古谷さんは財務省出身で国税庁長官から現職に転じ、すでに6年目になる。各省庁の官房長をメンバーとする『新元号への円滑な移行に向けた関係省庁連絡会議』議長を務め、新元号選びの実務を一手に担っているキーマン。政府は平成が始まった頃から、著名な学者に非公式に新元号案の考案を依頼し、これまでに集められた多くの新元号案が古谷さんのもとで厳重に管理されているのは間違いない」(政治部記者の1人)


 現在、官邸に提出されている新元号の候補案の数は、「100以上」(読売)、「数十程度の中から、すでに十数個に絞り込んでいる」(NHK)、「非公式に提出を受けた20程度の案から絞り込む作業に入った」(朝日)と報道によって大きな差があるが、原案選定の責任者である菅義偉・官房長官の下で実務を担当する古谷氏の部屋では、新元号案の絞り込み作業が大詰めの段階とみられている。政治部ベテラン記者の話。



「平成改元は、昭和天皇が崩御(昭和64年1月7日)する前年の秋には、竹下登首相、小渕恵三・官房長官との間で『平成』でいくという方向性が決まっていた。今回は新元号発表まで1か月を切った。菅官房長官が情報漏洩にピリピリしていることから各紙控えめな報道だが、当然、安倍首相と菅官房長官は内々に本命の新元号案と、“外れ1位”やその次の候補の3つくらいの案に絞り込んでいるはず」


 新元号はもう決まっているとの指摘だ。


◆改元は「秘密主義になった」


 日本初の元号とされる「大化」(645年)から「昭和」まで約1300年、246の元号は天皇が裁可(決定)して定めてきた。


 戦後は、日本国憲法で天皇は「国政に関する権能を有しない」と定められ、昭和54年(1979年)の元号法では「元号は、政令で定める」として決定権者は「内閣」に変わった。平成の改元では竹下内閣の小渕官房長官が記者会見で元号を発表する“栄誉”に浴している。


 しかし、「元号の歴史社会学」が専門の社会学者・鈴木洋仁氏は、元号の選考過程は逆にブラックボックス化が進んでいると指摘する。


「歴史的にみると、選ばれなかった元号候補も詳しく記録に残されていた時代もあります。大正や昭和の改元の時も、元号選定の初期段階の候補案まで記録にある。だが、国民主権の下で内閣が決めるようになった平成の改元はむしろ秘密主義になった。どんな元号候補があったのか、誰が提案したかも公式に発表されていません」



 まず、誰が考案するのかわからない。


 今回の改元手続きは平成改元の時と同様に、1979年、「元号法」が制定された際に大平内閣が定めた「元号選定手続について」という手順書が踏襲されることになっている。手順書は、〈内閣総理大臣は、高い識見を有する者を選び、これらの者に次の元号とするのにふさわしい候補名の考案を委嘱する〉と定め、1人の考案者に「おおよそ2ないし5」の案を求めるとしている。


 朝日新聞は今年2月27日付で「政府は4月1日の新元号の決定・公表に向け、事前に複数の学者に元号の考案を委嘱する方針を固めた」と報じた。これを読むと“今から考案して間に合うのか”と心配になる。


 実際には、前述のように内閣府地下1階の部屋には、多くの非公式な案が保管されているといわれる。それなのに、なぜ、これから委嘱する手続きをとるのか。


「平成改元の時は、非公式案の中で最終案の『平成』『正化』『修文』の案を出したとされる3人の研究者が、改元当日に正式に考案を委嘱されたとみられています。今回も中国文学や東アジア史、日本の古典文学などの研究者で、文化勲章受章者や日本学士院会員など、その分野の大御所と呼ばれる方が考案を非公式に委嘱されていると見られていますが、最終候補以外の案は、公式記録には残されないでしょう」(鈴木氏)


 つまり実際の流れとしては、官邸でどの元号案を選ぶかの最終候補が固まってから、それを考案した学者に「考案を委嘱」するという順序になるのである。


◆“有識者”にメディア3社トップ



 最終候補のうち、誰がどこで1つに絞り込むかも不透明だ。最も重要な役割を果たすのが、「新元号の原案として数個の案を選定する」(元号選定手続きについて)と定められている菅官房長官だ。


 新元号が決定される4月1日、菅官房長官は複数の原案を選ぶと、「元号に関する有識者懇談会」を開いて意見を求め、結果を首相に報告する。有識者は考案した学者とは別で、そのメンバーも官房長官が決める。


 有識者による元号懇の意見を受けて、次に、安倍首相が原案を衆参両院の議長と副議長に連絡して意見を伺うことと定められている。


 ただし、元号懇も衆参両院の議長らの意見も、そこで多数決を取って決めるようにはなっていない。平成の改元の際、新元号選考の実務を仕切った的場順三・元内閣内政審議室長は有識者懇での議論についてこう述懐する。


「竹下総理や小渕官房長官との間で『平成』という暗黙の了解があり、時間がないなか有識者懇談会では、『修文と正化は頭文字がSで昭和と重なる』と誘導するしかなかった。そもそも元号懇は有識者の方々に“元号はこのようにさせていただきます。よろしくお願いします”という趣旨なんです」


 今回、その元号懇の有識者候補に名前が挙がっているのは、山中伸弥・京大教授や作家の林真理子氏、宮崎緑・千葉商科大教授をはじめ、メディアからは、日本新聞協会会長の白石興二郎・読売新聞グループ本社社長、上田良一・NHK会長、民放連会長の大久保好男・日本テレビ社長たちだ。新聞やテレビの経営者が“有識者”なのは、「みんなで決めた」というアリバイづくりに加えておきたいからだろう。



 しかも、元号懇の参加者は、新元号が記者会見で発表されるまで、情報が漏れないように携帯電話やスマホを禁じられ、外部との連絡を遮断する情報統制下に置かれる見込みだ。


 奇しくも、メディア3社はいずれも安倍政権に太いパイプを持つとされるが、トップが元号懇メンバーに選ばれれば、現場の記者たちはたとえ新元号を“スクープ”できたとしても、報道を自粛せざるを得ないのではないか。


※週刊ポスト2019年3月22日号

NEWSポストセブン

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