印象派の前に、彼らがいた ラファエル前派の為した大仕事とは

3月16日(土)11時0分 文春オンライン

 この展覧会を機に、日本での彼らの人気がぐっと高まるんじゃなかろうか。東京丸の内、三菱一号館美術館での「ラファエル前派の軌跡展」だ。


 ラファエル前派とは、美術史上で最初に生まれた前衛芸術家集団の名称。著名な美術の流派といえば、まずは19世紀後半の印象派が思い浮かぶところ。けれどラファエル前派は、それに先んじる19世紀半ば、すでに結成されていた。印象派の前に、彼らがいたのである。


中世に立ち返って、絵画の進むべき道を模索した



ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ《ウェヌス・ウェルティコルディア(魔性のヴィーナス)》1863-68年頃、

油彩/カンヴァス、83.8×71.2 cm、ラッセル=コーツ美術館

©Russell-Cotes Art Gallery & Museum, Bournemouth


 ラファエル前派が生まれたのは英国でのこと。当時の英国美術界を取り仕切っていたのは、アカデミーと呼ばれる権威的かつ伝統重視の勢力だった。


 凝り固まった世界に反発し、叛旗を翻すのは若い世代の特権だと考えたのかどうか。絵画について先鋭的な考えを抱いていた若者たち、ジョン・エヴァレット・ミレイ、ウィリアム・ホルマン・ハント、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティらは、それぞれのアトリエを行き来しながら、自分たちが信じる芸術を推し進めた。 


 そうして1848年、総勢7人の仲間たちが「ラファエル前派同盟」を結成した。「ラファエル」とは「ラファエロ」の英語読み。レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロと並び称されるかのルネサンスの巨匠、ラファエロのことだ。ミレイら若き芸術家たちは、現在の美術は範にならないと見なし、ラファエロ以前、つまりは中世のころの絵画を目指すべきとの主張を展開したのだった。



型に嵌まった様式美に反発したから、作風には幅が


 メンバーたちは流派の実践として、各々が作品を発表していく。ロセッティは妖艶かつ生々しく女性像を描き、ミレイは風景と人物が溶け込むような調和の美を画面内に実現した。





 同時に、グループとしての共通点を見出すことも可能だ。絵画上の決まりごとにこだわらず、外界をよく観察することから始めているから、描写が丁寧かつ精細である。描く題材を神話や歴史から引っ張ってくるのは伝統絵画と似ているけれど、解釈がかなり自由で、そこに画家のオリジナリティがよく出ている。個人の考えを絵画に反映するので、画面から感情がはっきり読み取れて物語性も豊か、などなど。


 彼らの後続世代は、印象派も含めてどんどん作風が多彩になっていくのだけれど、それら発想の源泉にはラファエル前派の影響が見え隠れする。それら近現代絵画の「芽」を作品から探してみるのも、今展のよき愉しみ方だろう。



(山内 宏泰)

文春オンライン

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