高畑充希演じるココネと歴代神山ヒロインの意外な共通点は!? 映画『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』、神山健治監督インタビュー!

3月16日(木)20時0分 おたぽる

神山健治監督

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 3月18日、ついに公開を迎える神山健治監督によるオリジナル劇場アニメ『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』(以下、『ひるね姫』)。

『東のエデン』シリーズや『攻殻機動隊S.A.C』シリーズなど、スタイリッシュなSF&アクションの印象が強い神山監督だが、初の劇場オリジナル作『ひるね姫』の舞台は2020年、東京オリンピック開催直前という近未来というのにも近すぎる超近未来、主人公は普通の女子高生・森川ココネ(演:高畑充希)と意表をつく組み合わせで、意外に思ったファンも多いかもしれない。

 ただ、物語はココネが頻繁に同じ夢を見ることを端とし、次第に現実が歪みはじめ、さらに事件にも巻き込まれてしまう。自分が見る夢には何か秘密があるらしいと感じ取ったココネは、事件解決のために東京まで出かけることになるのだが——というもの。夢と現実が交錯し、2つの世界を行ったり来たりするSFであり、ロードムービーでもある。

 AI、ネットワークといったモチーフも盛り込まれているし、重厚な世界設定、緻密な物語といった神山監督作品らしい一面もうかがえるが、それにしてもなぜ“夢”をテーマとして描こうと思ったのか。制作を終えたばかり、取材続きでちょっとお疲れ気味にも見える神山監督に、『ひるね姫』の見どころ、気になることをいろいろと聞いてみた!


■ “世代の断絶”を描くために選んだ“自動運転”

—— 『ひるね姫』の物語はどのように構築されていかれたのか、教えてください。

神山健治監督(以下、神山) まず普通の女子高生の個人的な家族の話を作っていこうということでスタートしました。ただ、ファンタジーとして飛躍する何かしかけも欲しいということで、僕自身、子どもが小さかったときに、寝る前にはお話を聞かせてあげていたことがあったので、それが現実になってくるお話はどうだろうかと——そこからだんだん話が広がっていったという感じです。

—— 映画のパンフレットのインタビューでも応えられていましたが、最初から世界を救ったり、難事件に挑むというのは考えていなかったんですね。

神山 そうですね。なるべく今回はそういう話ではない、もっとスケールの小さいものでいいのではないかと。むしろ何も起きないことが現代ではファンタジーなんじゃないかというところからスタートしていった感じです。

—— 何も起きないということですが、構成要素はすごい山盛りで。気になるキーワードがいっぱいあるんですが、まずは「自動運転」は安倍総理大臣が「東京オリンピックは自動運転を〜」と触れたニュースもあったり、だいぶ現実が追いついてきた感じもあります。

神山 社会の一番ミニマムケースが家族になるのではないかと思っていまして、その中で“世代”に関することもテーマの一つとして描いてきたいと思っていまして。その時、「テクノロジー」がわかりやすく世代の差異を浮かび上がらせられるんじゃないかなと考えたんです。

 日本は、昭和=20世紀の成功体験が足かせとなって、21世紀になってだいぶ経つのになかなか新しいステージにいけないでいる。そういった日本の現状について、若い人たちには、意識的な垣根はないんだけど、成功体験を持っている上の世代によってもたらされたものが、足かせになっているんじゃないかなっていう思いがありまして。
 
“世代の格差や断絶”を、テクノロジーをキーワードに描こうしたときに、かつて成功した「自動車産業」を使ってみた。インフラを含めて、大きく自動車そのものも変わってこようとしている時代に、自動車の世界一のシェアをとっている日本の車が、スタンドアローンなまま、ネットとつながらないのはなんで? という疑問もありまして。

 そういうところから、「自動運転」というのは、“世代の格差や断絶”を表現しようとした時、一番わかりやすいのではないかと考えたんです。

—— なるほど。ちなみに「2020年」という時代は、なぜ選ばれたのですか?

神山 東京オリンピックも日本にとっての最大の成功体験でしょう。これは後付けなんですけど、21世紀にもう一度同じ東京オリンピックをやったら若い人たちはどう受け取るのかなと思って、今より少し未来ということになったという感じです。

—— 2、3年なんてあっという間ですから、ほぼ現代ですよね。

神山 そうですね。そんなに遠い未来ではなくなりましたね。

■もう一つの世界“夢の世界”を分かりやすく伝えるための『桃太郎』

—— ココネが見る夢の世界が、スチームパンクのようでもあり、おとぎ話のようでもあり、面白かったです。

神山 絵のほうから考えていく際、ファンタジーの世界というとどうしても中世ヨーロッパのようなものになりがちなんですが。今回はココネの父親であるモモタロー(演:江口洋介)が若き日に東京に行って感じたことが、あの夢の世界の根本にあり、それをココネ自身が夢想して出来上がった世界、ということで、あのような世界になっています。

“ファンタジー=昔話”となりがちなんですけど——ココネは男親に一人で育てられていましたから、与えられていたおもちゃなんかも、自動車工場にあった機械だったんじゃないかなとか、そういったバックボーンを想定しながら作り上げられた設定となっています。

—— パンフレットを拝見したところ、娘さんに見せてあげたい作品という監督の発言もあります。試写を見てもモモタローの活躍が多くて、“お父さん目線”を意識された作品だなと感じましたが、やっぱり監督の思い入れが込められた結果でしょうか?

神山 それはあるでしょう。物語の裏側にはお父さんとお母さんの両親の想いが当然流れていて、それをココネが追体験していくという話ですから、当然そういう部分はあると思います。

—— 岡山という舞台は、監督がたまたま選ばれたそうですが、『桃太郎』をモチーフにしたのは、岡山が舞台と決めてからですか?

神山 岡山が舞台になってからですね。

——なぜ『桃太郎』だったんでしょうか? やはり岡山といえば、という感じですか?

神山 それも当然ありますが、なるべく夢の世界の設定を、直感的にわかりやすいようにできないかと考えてのことです。どうしても、夢の世界の設定を語るだけでそれなりに時間がかかってしまう。なるべく直感的にわかってもらおうということで、誰でも知っているおとぎ話の『桃太郎』をモチーフにしてみたんです。岡山を舞台にしているのでそれがちょうどいいんじゃないとか、そういうところからの選択ですね。

—— ちなみにココネのお父さんがモモタローで、その友人に猿モチーフの佐渡さん(演:高木渉)、雉がモチーフの雉田さん(演:前野朋哉)がいますが、犬はどこに……

神山 犬はここにいます。(ポスターのジョイを指して)分かりにくいんですけど、柴犬なんですよね。熊かなとかいろいろ思う人もいるんですが、一応ジョイが犬なんです(笑)。

■出来上がって気づいたココネと神山監督作品のヒロインとの共通点とは!?

—— 個人的に『攻殻機動隊S.A.C』シリーズの草薙素子、『精霊の守り人』のバルサなど、強くてかっこいいヒロインが神山監督はお好きに違いないと思っているんですが、彼女たちとココネとの違いや共通点はどんなところですか?

神山 ボクは確かに今まで世界を救うようなヒロインを多く描いてきたので、できれば今回はそうではなく、等身大の女の子がどういうことを考えているのかというところから、出発して物語を作りたいと考えていましたから、そこはまぁ大きく違うかなと思いますね。

 ただ、ココネにもちょっと普通の子よりも大胆な行動力があったり、そういうところに、今までぼくが描いてきたヒロインだったりヒーローに近い部分もちょっぴりあるのかもしれません。

 なるべく普通の子にしようと思って描いていたけど、出来上がってみて、僕が今まで描いてきたキャラクターと共通している部分も案外あるなと思って、自分でも少し意外だったというか(笑)。

—— たしかに、決断力というか、「こうといったらこう!」というか……

神山 いざとなったときの行動力はなかなかのものかと。

—— 他のキャラクターたちで、出来上がったら予想より面白くなったというキャラクターはいますか?

神山 映画だと深く描けるキャラクターって本当に数人しかいないんですけど、モリオ(佐渡モリオ/演:満島真之介)というキャラクターはエスコートする側なんですけど、割と直感で動くココネと、ロジックで考える彼は、対比として面白いキャラクターになったかなと思います。

 あとは、喋らないんだけど、モモタローがなかなかね……完成したのを観終えたスタッフから、「かっこいい」という感想は出ていました。

——ある程度の年齢にいった男性だと、「こういうお父さんになりかたかったな」という夢を託せるキャラクターになっているなと思いました。

神山 なるほど。そうかもしれないですね。

—— 高畑さん、江口さん、高橋英樹さんや古田新太さんなど大物俳優を起用されていますが、このキャスティングにはどんな理由があったんでしょうか?

神山 やっぱりキャラクター性と演じる方たちのパーソナリティーが、ある程度共通しているものがないと、同じ“演じる”といってもそこに真実味が出てこないというか。基本的には、僕は声だけ聞いてキャスティングするようにしているんですけど。

 たとえばココネというキャラクターは、最初はもうちょっとギャルっぽい感じの子かなっていろいろ想像しながら探していたんですが、タイトルが『ひるね姫』に決まって、普段はぼんやりしている女の子が、いざとなるとわりと行動力もあってというのが、高畑さんの声を聞いたときに、僕が想像していた以上に、「あ! こういう子に違いない」とリアルに感じられたんですよね。キャラクターの深みというか、僕が想像していたキャラクターよりも広がるんじゃないかなというところがありました。

 あとは、「デイ・ドリーム・ビリーバー」を歌ってほしいというのがありまして。あの曲は主題歌というかむしろ演出の一部だと僕は考えていたんですね。主題歌ではあるけれども、もうこれはダイアローグと同じくらい重要な意味合いがあるんです。他の人に歌ってもらったのでは意味が変わってしまうので、ぜひ高畑さんに歌ってもらいたいなという意味でも彼女をキャスティングしました。

—— 連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(NHK)などを見て、高畑さんをいつか起用しようとか、そういう野望が以前からあったというわけではないんですね。

神山 朝ドラ主演がまだ発表されてはいなくて、オファーを受けていただいたのは、朝ドラの撮影が始まる前くらいですかね、実は。初めてお会いしたのもその頃です。

—— 最後に、2016年は劇場アニメの大躍進の年でした。今年も劇場アニメに期待するファンや関係者は多いと思いますが、監督はそういったプレッシャーというか、期待みたいなものを感じたりされますか?

神山 僕自身はあまりないですし、むしろありがたいなというか。劇場でオリジナルアニメーションを観るということのハードルが以前よりは下がっていると思いますから。

 昨今、配信サイトなどがどんどん増えている中で、劇場でアニメーションを観る、しかもオリジナル作品を観るっていうことに対しての垣根が下がっているタイミングだと思うので、それはありがたいなと。そういう流れがうまくきたときに、僕も劇場作品をたまたま作れて、公開にこぎつけられたので、大変ありがたいなという風に思っています。

 そういう意味で『ひるね姫』はほんわか日常っぽいアニメ風にスタートしておきながら、一見ジャンルの違う冒険だったり、メカアクションだったりがてんこ盛りで、でも最後はチャーミングなラブストーリーになっていますから、幅広いお客さんに観ていただけたらと思っています。結果、今まで僕が作ってきた作品ともつながっているなと感じる部分もありますし、従来のファンのみなさんにも期待していただければと思います。

■『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』
公式サイト http://www.hirunehime.jp

2017年3月18日公開
原作・脚本・監督:神山健治
アニメーション制作:シグナル・エムディ
配給:ワーナー・ブラザース映画

(C)2017 ひるね姫製作委員会

おたぽる

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