本宮泰風 大河ドラマ「べらぼう」で伊藤淳史とダンスバトル!「刀で斬り合うくらいの勢いで」【「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】
2025年3月16日(日)20時45分 エンタメOVO
(C)NHK
−第12回の俄祭りで若木屋与八は、大文字屋市兵衛と“雀踊り”で対決するそうですが、撮影前の準備も大変だったそうですね。
台本を読んだときは、こんなに大変な撮影になるとは思ってもいませんでした。稽古は本番の一カ月くらい前から始まりましたが、音楽を体になじませ、音が鳴ったら自然に体が動くくらいにしたいと思い、いただいた先生のデモ映像を毎日、他の仕事をしながら、食事の時間も惜しんで繰り返し見ていました。ただ最初は、僕も伊藤くんも、同じ踊りをやると思っていたんです。でも、お互いの稽古日がいつも別だったので、どうやら違うらしいと途中で気づいて。伊藤くんと、どっちの方が難しい、なんて競ったこともありました(笑)。
−本番当日のお気持ちはいかがでしたか。
本番に向けて稽古を重ねていたので、当日は久しぶりに運動会当日の朝の気分を思い出しました。セットは非常に大きくリアルに作られていて、隅から隅まで見学したくなるほどで、本当に吉原の大通りにいるような気持ちになれました。長いこと役者をやっていますが、あれほど素晴らしいセットで撮影できる機会はなかなかないので、本当にありがたく、うれしかったです。
−総勢100人を優に超える規模で撮影に臨まれたそうですが、その様子を教えてください。
お互いに大変なことはわかっていたので、僕も伊藤くんも、直前まで振り付けを確認しながら、「あとは勢いだね」と励まし合い、何とか乗り切りました。本番では、一緒に踊る舞踊家の方たちが、僕をサポートするようにフォーメーションを組んでくださるなど、皆さんのご協力があったおかげで、撮影が進むうちにとてつもない一体感が生まれていきました。そういう意味では、全体的にすごくいい形になったと思います。
−伊藤さん率いる大文字屋チームの様子はいかがでしたか。
大文字屋チームの見事な仕上がりには圧倒されました。ただそれは、運動会の徒競走などで、一緒に並んだ他の人たちが自分より速そうに見えるのと同じで、向こうもきっとそう感じているはずだと、気持ちで負けないようにしました。見た目で激しいやりとりがあるわけではありませんが、僕らはこの対決を“ダンスバトル”と呼び、刀で斬り合うくらいの勢いでやっていたので、気持ち的にはヤンキー映画以上のものがありました(笑)。
−激しい対決になったようですね。
ただ最終的には、一日中何度も踊っているうちに、伊藤くんとも一体感が生まれ、二つのチームが一つになっていく感覚がありました。撮影が終わった時は、ボクシングで最後まで戦った相手同士がお互いを称え合うような気分で、伊藤くんと抱き合って喜びました。おかげで、僕と伊藤くんの距離も縮まり、その後の撮影にもいい影響があったので、苦労したかいがありました。
−若木屋は大文字屋だけでなく、ほかの忘八の親父衆ともかかわり、集会にも顔を出すそうですが、撮影現場の様子を教えてください。
現場では、僕は(駿河屋市右衛門役の)高橋克実さんとお話しすることが多いですね。伊藤くんと(りつ役の)安達祐実ちゃんが、よく食べ物の話をしているので、それを僕と克実さんで目を見合わせながら微笑ましい気持ちで聞いています。みなさん一緒に撮影される機会が多いので、回を重ねるごとに居心地がどんどん良くなっていき、今ではなじみ感がすごいです。蔦重の芝居をメインで撮るとき、その周りにいる僕らがアドリブを指示されることも多いのですが、そういうとき、アドリブ合戦になることも多くて。仕掛けるのは大体、(松葉屋半左衛門役の)正名僕蔵さんです(笑)。
−どんなアドリブが繰り広げられるのでしょうか。
おかしかったのが、踊りの撮影が終わった後、忘八のメンバーが集まった日のことです。そこで僕と伊藤くんの踊りの苦労話が出たのですが、その日、ちょうどアドリブが必要になって。そこで祐実ちゃんが、踊りの思い出話をして、伊藤くんに「もう一回踊って見せてくれよ」と無茶ぶりをしたんです。伊藤くんは「無理です」とかたくなに断っていましたね(笑)。回を重ねて皆さんとスムーズにコミュニケーションが取れるようになったおかげで、そんないい雰囲気が出来上がっています。
−忘八たちの集まりに顔を出す蔦重役の横浜流星さんの印象はいかがですか。
せりふも多いですし、毎日、大変な撮影を頑張っていますよね。その姿を見たら、僕らも頑張らざるを得ない。おかげで、現場には彼よりキャリアのある俳優がたくさんいますが、どんなに大変でも、彼を支えようという雰囲気が自然と出来上がっています。言葉でなく、そんなふうに姿勢で現場を引っ張る感じで、役者からの好感度は抜群だと思います。僕はまだ、蔦重と直接絡む機会は少ないですが、いずれは流星くんとがっつりお芝居をしてみたいですね。
(取材・文/井上健一)
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