レッツ・シンク。私たちも自力で考えよう 『3年A組』——亀和田武「テレビ健康診断」

3月17日(日)17時0分 文春オンライン

 今季のドラマでは、画面から伝わる熱量とクオリティで、『3年A組 今から皆さんは、人質です』が、ブッチギリの首位だ。


 卒業式を間近に控えた高校で、担任教師の柊一颯(ひいらぎいぶき/菅田将暉〈すだまさき〉)が爆薬を用い、二十九人の生徒全員を人質にして教室に立てこもる。ブッキーの仇名で呼ばれる物静かな美術教師は何が目的で、ド派手な劇場型犯罪を決行したのか。



担任教師役を演じた菅田将暉 ©AFLO


 このクラスでは、半年前に女生徒が自殺している。水泳の全国大会でも優勝した景山澪奈(上白石萌歌〈もか〉)だ。五輪候補だった校内一のヒロインが、なぜ自ら命を絶ったのか。柊は死の真相を暴くために決起した。


 誰が景山澪奈を殺したのか。この謎を軸にドラマは猛スピードで動きだす。澪奈の死に加担した生徒や校外の大人が次々と糾弾されるが、所詮は小悪党だ。


 柊は難病に蝕まれ、余命宣告も受けている。残り少ない時間内に、澪奈を死に追いやった真犯人に辿りつくための立てこもりだ。


 情けない生徒たちの襟首を掴んで、柊は怒鳴りつける。「弱い者の気持ちを、なぜ想像しようとしないのか。どうして自分の頭で考えないのか!」


 体育館では校長を始め、柊の同僚教師たちが待機している。その中でも一番ペラいのが、テレビにもカリスマ教師として出演する武智大和(田辺誠一)だ。柊は武智が澪奈を殺した犯人だとネット上で告発する。武智は名声を失うが、彼の上にまだ指示役がいる。



果たして謎は解かれるのか?


 謎また謎。ジェットコースターのような展開に一喜一憂してばかりはいられない。レッツ・シンク。私たちも自力で考えよう。


 柊が立てこもった教室には爆薬が仕掛けられているから、警察も強行突入はできない。教室は外界と隔絶されている。しかし抜け道はある。ピンポーン。SNSで教室と社会はつながっている。柊は生徒たちのスマホを回収したかと思うとまた返却し、外界との通信を許す。ネットを最大限に利用して、柊は世論を誘導していくのだ。


 半世紀前に自衛隊に立てこもった小説家をふと連想した。あのときネットがあったなら、彼は監禁した総監との一問一答も全部拡散させ、世論を一気に味方につけたかもしれないと。


 渋い存在感で、学外で捜査に当たる郡司刑事(椎名桔平)が、ついに最終回を前にして学内で格闘する。このとき突如として特撮ヒーローが現れて柊を救う。おお、NHKではおりしも特撮オタク女子の生態を描いた『トクサツガガガ』が大評判になっていた。柊は実は、病気でスーツアクターを断念した過去がある。


 最終話。謎は謎で回収しなくてよい。景山殺しの犯人を特定できなくても仕方ない。柊の決起を促した最大の動機は何か。それがチラリ判ればよしとしたい。



INFORMATION


『3年A組 今から皆さんは、人質です』

日本テレビ系 日 22:30〜23:25

https://www.ntv.co.jp/3A10/




(亀和田 武/週刊文春 2019年3月21日号)

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