吉岡里帆 「目が笑っていない」演技で示した力量

3月18日(土)16時0分 NEWSポストセブン

吉岡里帆は独特の存在感を見せた

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 予定調和的世界とはまったく正反対のドラマだった。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が『カルテット』について分析した。


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 異色のドラマ『カルテット』(TBS系火曜午後10時)。最終局面で謎が謎を呼ぶ怒濤の急展開に、視聴者はとまどい身をよじり、嬉しい悲鳴をあげています。


 単に、ミステリードラマとかラブコメディのようには「くくれない」のが、このドラマの最大の魅力。坂元裕二完全オリジナル脚本の輝きが、いかんなく発揮された独自世界。それはまるで建築物のように、立体的な構造をしています。


 いくつもの部屋があって、それぞれが結合し組み合って一つの『カルテット』という構築物を形作っている。ざっくり分けると、ドラマは3つのパートからできています。


 最初は出会いのパート。巻真紀(松たか子)、世吹すずめ(満島ひかり)、家森諭高(高橋一生)、別府司(松田龍平)の4人がカラオケボックスで偶然出会い、弦楽四重奏団・カルテットとして軽井沢で活動を開始する。


 一人ひとり人物のテイスト感が描き出され、やがて4人の関係性、微妙な距離感とバランスが見えてくる。目の表情によるやりとり。ああいえばこう返す言葉の応酬。レトリック感覚満載のセリフ。舞台芝居にも似た、不思議な雰囲気が漂っていました。


 そして、第2のパートへ。少し風合いが変わって、真紀の夫(宮藤官九郎)が突然出現する。「夫婦」にフォーカスが絞られ、二人の間の微妙なすれ違いが立ち上がる。離婚へとつながっていく過程で、真紀がどこかに抱えている「闇」の匂いがたち上ってきました。


 そして最終パート。一気に速度が上がり、ミステリードラマのような急展開。実は真紀とは架空の人物であり、戸籍を買って別人となり、しかも義父殺しの容疑者として捜査対象に……。


 それぞれのパートが独特な色彩を放っています。視聴者は、一つの部屋からまた次の部屋、次の部屋へと誘われていき、とうとうどっぷりとドラマ世界に心をさらわれてしまう。そしてドラマには4人以外にもう1人、画面に映る時間は短いけれど実に暗示的な存在がいます。


 レストラン・ノクターンのアルバイト、来杉有朱(吉岡里帆)。


「大好き大好き大好き大好き、殺したい!」「小学校のときはいつも学級崩壊させてた」「不思議の国につれてっちゃうぞ〜」と、一見意味不明なセリフを、実にカワイらしく、つぶらな瞳で語る有朱は「接客業であるがゆえに、常に笑顔を絶やさずにいるが、その目は全く笑っていない」(番組公式ウエブ)。


「目が笑っていない」というキャラ設定が、実に興味深くて怖い。形としての「微笑み」はあっても、表情は崩れずシワは寄らず顔の筋肉は動かず、まるで鋼鉄製の仮面のよう。大きなその黒い瞳が「金属的」。冷たさにシビレます。


 実はカルテットの4人の関係を破壊したい、と心の奥底で思っている。そんな「目が笑っていない」有朱を演じる工夫として、吉岡さんは他の人のセリフをできるだけ上の空で聞きながら演じているのだとか。


 そして、有朱(ありす)という名前からは……「不思議の国のアリス」が透けて見えてきます。元地下アイドル、穴に落ちる、お茶会、ウサギのお菓子といった、「不思議の国のアリス」を連想させるいくつもの符丁がセリフに散りばめられていることを、吉岡さん自身もブログの中で明かしています。


 有朱は、不思議の国へと導かれるアリス。と同時に、先導役であるウサギ。その両方の役をドラマの中で担う複雑で意味深な人物。クセのある有朱を見事に演じ切っている吉岡さんの力量に注目です。そして、地上の部屋だけでなく地下空間まで用意されている『カルテット』の見事な建築的な世界にも。


 ちなみに「目が笑っていないタレントランキング」(VenusTapのリサーチ)によると、1位は堀北真希。2位は三船美佳、3位・上重聡 4位・村本大輔(ウーマンラッシュアワー)5位・石塚英彦、有吉弘行とか。次回のリサーチではきっと、「吉岡里帆」という名前が堂々とランクインされるでしょう。


 いよいよ最終回を迎える『カルテット』、いったいどこに着地するのか。吉岡さんの今後と共に楽しみです。

NEWSポストセブン

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