創立65年、劇団四季が愛される秘密に迫る5つのキーワード

3月18日(日)7時0分 NEWSポストセブン

上演中のアラジン役のほか『ライオンキング』のシンバ役なども演じている島村幸大

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 数多くの人々に愛され続けている劇団四季の作品。どうして、これほどまでに多くの観衆の心をつかむのか。その秘密に迫ると“5つのキーワード”が浮かび上がった。


【1】作品至上主義


 松本白鸚の『ラ・マンチャの男』や故・森光子さんの『放浪記』など、看板俳優が公演を引っ張るロングラン作品は数多くあるが、劇団四季では俳優の名前を前面に出さない作品至上主義をポリシーとしている。


 かつて劇団四季の取締役を務めた音楽評論家の安倍寧氏が言う。


「通常、集客力のある俳優をメーンキャストに抜擢しますが、劇団四季では登場人物1人に対して、複数のキャストを立てます。例えば、主役のアラジンであっても日替わりで役者が変わる。世間的に名前が全く知られていない俳優が主演や準主役を演じていることもザラです。当初は“名前もわからない役者の演技に高い金を払いたくない”といった声もありましたが、今では作品のクオリティーの高さが周知されて、そういった批判的な声も聞かれなくなりました」


 劇団四季代表の吉田智誉樹さんが言う。


「お客様に見ていただきたいのは“俳優”ではなく、あくまで“作品”なんです。どの日、どこで見ても同じ感動を届けなくてはいけないという思いでいます」


 また、ロングラン公演を前提としている四季では、特定の俳優だけが1つの役を務められるわけではない。


「ライオンキングは今年上演20周年を迎えます。例えば、初演時に20才でシンバを演じた俳優が40才になった今も当時のパフォーマンスを維持しながら舞台に立つことは難しいでしょう。作品の寿命は、俳優の寿命より長いんです」(吉田さん)


【2】入るより生き残る方が難しい


 作品を守るため俳優の育成も厳しい。役を射止めるまでのステップは何段階にも分かれていると『リトルマーメイド』のアリエル役の若奈まりえが言う。


「オーディションを受けて合格すれば台本をもらえて、作品の稽古に参加することができます。ただし、この時点では役に選ばれたわけではない。稽古を重ねて、ようやく劇場でのお稽古へ進んでも、“やはり役のイメージに合わない”と判断されることもある。晴れて舞台に立てたとしてもレベルを維持できなければ即降板を言い渡されます。それほどまでに“作品第一”なのです」



 現在東京公演でアラジン役を担い、『ライオンキング』のシンバ役なども演じている島村幸大が、過去に経験した“挫折”を語る。


「劇団四季の作品は高い身体能力を求められるものが多い。稽古中にけがをして、なかなか復帰することができず退団を考えた時期もあった。当時、体はもちろんですが、心がついていかなかった。悩んでいるときに、演出家から“明日歌を聴くぞ”と肩を叩かれました。それを機に俳優としての覚悟を決めるとシンバ役を手にすることができました。やはり常に全力で自分を高めていないとダメだと痛感しました」


 また、劇団四季では「1年契約制度」を設けている。前出の吉田さんが話す。


「毎年、1年間を振り返ってどれだけの舞台を踏んだか、どれだけ新しいことに挑戦したか、各々の実力をそうした点を踏まえて翌年の更新を決めます」


 劇団四季は入るよりも生き残る方が難しいのである。


【3】美術のこだわり


 劇団四季といえば、俳優の迫力ある演技や踊りもさることながら、舞台美術も魅力の1つ。その象徴が『キャッツ』の“ゴミ”のオブジェだ。初演からこの作品に携わる舞台美術家の土屋茂昭さんが“ゴミ”へのこだわりを語る。


「この作品では、猫の目線で作られた3倍の大きさのゴミのオブジェが舞台上から客席まで所狭しと飾られています。すべてが精密かつリアルに再現されており、まさに美術品のよう。34年間で蓄積されたメモリーでもあるゴミたちをいつか美術館で展示したいほどです。私にとって『キャッツ』のゴミはアートなのです」


 舞台に散らばるゴミの数は2500以上。中には、公演する地域にあわせて特産品などのご当地ゴミもちりばめられている。その1つ1つを手作りしているのだ。


【4】母音法で言葉を伝える


 これまで劇団の作品を何作も見てきたというファンが振り返る。


「ミュージカルって俳優の声が音楽にかき消されて、物語がわからなくなることも多いんですけど、劇団四季にはそのストレスがない」(48才会社員)


 その理由について、前出の安倍氏がこう語る。


「『母音法』という発声を支えるオリジナルのメソッドが確立されている。今後も継承され、ブラッシュアップしていくでしょう」


 横浜市内にある本拠地・四季芸術センターには、〈一音落とす者は、去れ!〉という心得が掲げられている。



「台本の内容が正確に伝わらなければ、お客様は感動しません。日本語では、相手の耳に届くのは母音だけ。母音をしっかり発音することで正確に言葉を届けられるのです」(吉田さん)


 実際、『リトルマーメイド』公演前にも母音をきれいに発音する発声訓練がウオーミングアップに組み込まれていた。


「劇団四季では改善点を俳優同士で指摘し合ったり、作品に長く携わるメンバーが新しいメンバーにレクチャーしたりもする。“伝える”ことが多いので、普段から1音1音はっきりと届けるように意識しているんです」(島村)


【5】全員が主役


 劇団四季では俳優だけが主役ではない。前述の通り、それぞれの持ち場で、それぞれがプロとして全力を傾けて舞台を作り上げている。全員がかけがえのない戦力であり、“主役”なのである。吉田さんがこんなエピソードを明かす。


「劇団には誕生月の会がある。そこでは俳優や技術、経営スタッフも一堂に会します。私の誕生月の6月は“あじさい会”と呼ばれています。一緒に食事をしながら、それぞれが対等な立場で意見交換できるようになるんです」


 65周年を迎えた劇団四季。代表の吉田さんは強い眼差しで“劇団の未来”について、こう語った。


「少子高齢化の日本では、先細りになっていくことは間違いない。今後は海外にも視野を広げていく必要があります。そのためには輸入作品ではなく、海外で自由に興行できる“オリジナル作品”を生み出すことが必要になってくる。現在の土台は浅利慶太先生はじめ、多くの先輩がたによって築かれたもの。今を生きるわれわれは、この先の65年を見据えて次の世代にバトンを渡していかねばならない」


 劇団四季が世界に羽ばたく日もそう遠くない。


※女性セブン2018年3月29日・4月5日号

NEWSポストセブン

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