ねこはいずこへ? 異色のアイドルSF映画『世界の終わりのいずこねこ』初日舞台挨拶 監督"主観"レポート!

3月19日(木)0時0分 おたぽる

劇中写真より。

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 3月は別れの季節。この"卒業"シーズンに、すでに活動を終了したアイドルの映画が公開された。『世界の終わりのいずこねこ』は、大阪のソロアイドル・いずこねこの最初で最後の主演映画。原因不明のパンデミックで東京が壊滅し、人々が大阪に避難した近未来が舞台の終末的SFストーリーである。クラウドファンディングで制作資金を募ったところ目標の150万円を大きく上回り、460万円が集まって無事に企画が成立した。

 昨年10月に完成し、その後はパトロン限定試写会、地方上映、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭での先行上映を終えて、いよいよ3月7日から新宿K's Cinemaにて封切りとなった。初日舞台挨拶は大盛況で、なんと全席完売! そのレポートを、竹内道宏監督の主観視点で撮影の思い出とともにお届けします。

■舞台挨拶中に謎の握手!

"いずこねこ"ってそもそも何を指すのか。
最初に企画プロデューサー・SPOTTED PRODUCTIONSの直井卓俊さんからお話を戴いた時、いずこねこのことを詳しくは知らなかった。当時は茉里さんのことを「いずこねこ」って呼んでいた。「いずこねこさん」と呼ぶと違和感がある。なぜなら、いずこねこはプロデューサーのサクライケンタさんと茉里さんの二人で成り立つもの。とはいえ、「いずこねこの茉里さん」というのも、まるでグループアイドルの一人のような響きになる。

 初めて観に行った東京キネマ倶楽部のワンマンライブで、ステージにいる女の子に「いずこねこー!」と呼ぶ人は誰もいなかった。「茉里ちゃーん!」という声援の中心にいるその女の子こそ、まさに猫のような人だった。「だった」って、まるで過ぎ去った季節のように振り返ってしまった。たしかに、春のように温かければ、夏のように熱く、秋のように切なくて、冬のように澄み切っていた。映画の撮影期間は昨年夏のたった10数日間だったが、1月から12月まで網羅できた。猫のように正直で、人懐っこくて、時折アグレッシブな茉里さんの色んな表情が見えた。活動を終了したはずが、映画の公開によって12月から13月、14月、15月へと延命し、それが本作のエンドクレジットで流れるいずこねこのラストソング『i.s.f.b』の歌詞に重なる。

 偶然にも3月という"卒業"の季節に映画が公開されて、茉里さんが10代を捧げてきたいずこねこが本当に終わってしまう。会場の新宿K's Cinemaに着き、「これで最後になるのか」と物思いに耽りながら楽屋の扉を開いた。

「あーーーっ!監督ぅーーー!監督ぅーーー!」

 感傷はあっけなく潰された。茉里さん、相変わらず元気の塊である。屈託のない笑顔に表も裏もない。楽屋と舞台挨拶までまったく変わることのない姿がそこにあった。

 石井将助監督の司会のもと、茉里さんと竹内が登壇する。ぎっしり埋まった客席に向かって、映画が始まった経緯について竹内が話す。

「この映画は、本作に出演もされているマンガ家の西島大介さん(ミイケ先生役)にプロットを書いてもらい、西島さんから指名をいただき監督をやることになりました。また、クラウドファンディングのCAMPFIREさんを通じて、いろんな方々にご支援いただいた制作費で作りました。企画をいただいた時は、いずこねこの活動が終わるということではなかったんですが、企画段階で突然終了することになりまして、それで"終わる"ということをテーマに作品をつくりました」

 必死に言葉を紡ぎ、伝えたいことを伝えるがなぜか笑いが起きる。なぜだ、なぜなんだ? 緊張で声が震えてるからか? たしかに、マイクを持つ手が生まれたての哺乳類のようにプルプルしている。確認のため、「すみません、ちょっとアガってるのが変なこと言っていたらすみません。またブログとかに書きます!」って言い逃れようとした。

「ブログを見なきゃわかんないんですか......今日、皆さん聞きに来てるんで!(笑)」茉里さんはちゃんとつっこみ入れてくれる。さすが関西人です。「撮影が8月にあって、試写会とかたくさんやらせてもらって、全国各地に監督とトークショーとかいろんなステージに立って、今日また久しぶりに監督に会って!」と続ける。

そこですかさず、楽屋での出会い頭の「あーーーっ!」のエピソードを話す。全然久しぶりな感じじゃない、昨日会ったばかりか錯覚するくらいのテンションで接する茉里さんについて。「最初はすごいやめてくれオーラを出してたんですけど、今はこんなにも仲良くできてうれしいです! ありがとうございます。握手しま〜す♪」と、なぜかこのタイミングで茉里さんと握手することになり、「お、おう」という感じで手を握るが、竹内は初めて接触に挑んだ緊張でガチガチのヲタにしか見えないことになった。現場もこのようにフレンドリーな雰囲気で進んだ。茉里さんが撮影当時を振り返る。

「撮影、めっちゃ楽しかったんですよ! でももう、いろんなところで話し尽くしちゃって、何の話を......。でも本公開だから今までにあったおもしろエピソードを話そうって思ってたんですけど、何から話そうかな? 全体的に面白かったんで、抽出してこれが面白いとかありました?」

......まさか話を振られるとは。「僕は、現場の雰囲気がすごいよかったと思、う......???」と、自信なさげに言うと、「疑問に思う感じでした?」と茉里さん。「自信満々で言ったら、自分だけ楽しかったみたいなことだと寂しいから......」と自信なさげに答えると、茉里さんが「大丈夫!めっちゃ楽しかった!」と言い、さらに石井助監督もすかさずフォローをしてくれる。ほんと、現場が終わってまで"助"監督させてしまって申し訳ございません。

■楽しかった\廃工場!/

 現場のおもしろエピソードでいうと、真っ先に思いついたのが主人公・イツ子の家のシーン。お家を借りて撮影していた時の、イツ子のお父さん役のいまおかしんじさんにまつわる話。重病の役柄なので、いまおかさんに咳き込む演技を何度もしてもらった。が、それが上手すぎたせいか、その家のお母さんが心配して「スタッフの方に体調の悪い方がいるかと思って......」とお薬を買ってきてくれたエピソード。それを明かすと、場内が笑いに包まれた。笑ってもらえて安心した。ちゃんとおもしろエピソードでよかった。

「そうでしたね(笑)。いまおかさん、演技が上手すぎて!」そう挟んできた茉里さんも、人のことは言えない。初演技とは思えない茉里さんについて、竹内は「本当に助けられて。セリフが覚えるのがすごく早い」と絶賛する。さらに、そのセリフの覚え方が独特であることについて、茉里さんに自分から解説してもらった。

「覚え方が変って言われるんですけど、体を動かして覚えるんです。......やっぱアイドルなんで!(笑)振り付けがないと覚えられない。動きがあると覚えやすんです。それをみんなにすごいバカにされた......」と茉里さん。「バカにはしてないよ!」とすかさずフォロー。撮影のテストから、シリアスなシーンでやたらクネクネ動いているのが気になった。「それ、本番では動かないよね......?」と不安になったが、本番では動かずにちゃんと切ない演技をしてくれて安心したことを覚えている。

 そんな茉里さんが最も苦戦した演技は、学校の放課後のシーン。廃工場で蒼波純さんが演じるスウ子と「将来はどうするの?」という話をする場面だという。「純ちゃんと二人で歩きながら喋ってるシーンがあるんですけど、結構セリフも長くて、ずっと向こうの誰もいないところまで歩いていくのが長くて、すごい緊張しました!あれが一番頑張ったな、と思うところで」と当時を振り返る。「動きや掛け合いで違和感あったらダメだから、すごい何回も練習させてもらって」と茉里さんが語るように、そのシーンは7回くらいテイクを重ねた。

 そして、監督として最も悩んだのが自室で行なった配信のシーン。当然、本物の配信のようにコメントが何も出ていない空中を見つめて、あたかもコメントを拾っているかのようにイツ子がリスナーと会話する。「配信のシーンも長回しではあるので、コメントが出るタイミングも、助監督が後ろでタイミング合わせて出したりとか」と言うと、茉里さんが「ピピッと出してくれるんですよね!」と添える。

 そんな配信シーンの冒頭の挨拶、「隕石接近中の地球から〜」の動きは茉里さんがその場で考えたオリジナル。「そう!考えたんです!ひらめいて!」と茉里さん。「さすがアイドル!」と返した。アイドルだからこその瞬発力と、記憶力の凄さ。茉里さんにはたくさん助けられました。

 舞台挨拶も終盤に迫り、映画本編のライブシーンの話題に。

「廃工場のシーンで私が歌っているところは2・3回撮ったんですけど、チラチラ映るようにって理由でももちゃん(緑川百々子さん)も亜子ちゃん(永井亜子さん)が横でずっと見ててくれて、それがめっちゃ恥ずかしくて......」と茉里さん。茉里さんとしては歌うシーンが現場スタッフが真剣に見守る中、さらに緑川さんと永井さんが凝視しているのが本当に辛かったらしい。「悲しい反面、どうしようすごく帰りたい、みたいな気持ちもあったんで、一番頑張ったシーンです」と明かす。でも一方で、「でも、あの廃工場、いろんなところで映画やテレビで使われていて、私もあそこで撮影できたのがうれしいなあと思って」と、ロケ地になった茨城県・高萩の製糸工場跡地で撮影できたことに喜んでいたようだ。

 廃工場は重要だった。終末的雰囲気を漂わせる本作の大事な部分なので、クラウドファンディングでご支援していただいた資金の多くはここでのロケ地代に費やされた。茉里さんも「あの廃工場に着いた途端、やっぱりモチベーション上がりましたね!純ちゃんも、こう、いつもの真顔をイメージしてください。その真顔のまま、着いた途端にちょっと口角上がってる!って思いました。それを見ただけで私、ここに来れてよかったって気持ちになりましたもん」と明かす。たしかに、蒼波さんのテンションが静かに上がっていたのを見逃さなかった。いつもより口数が増えていた。

 そして、口角を上げたのは蒼波さんだけじゃない。西島大介さんも次の現場待機中に廃工場を訪れ、気がつけば廃れた建物の屋上に上がっていた。絵になっていた。そしてサクライケンタさんも撮影中に屋上に上がり、絵になっていた。二人とも、確実にテンションが上がっていた。本作の原案者と脚本家が屋上で黄昏ていたという事実。卒業シーズンだからこそ、これらを卒業式のお決まりの掛け声で表したい。

みんなで向かった\茨城県!/
楽しかった\廃工場!/
口角が上がってた\蒼波純!/
屋上に上がってた\西島大介!/\サクライケンタ!/

 失礼しました。とにかく、満員御礼で初日からうれしかった。ありがたかった。お客さんに感謝の気持ちを伝えて、茉里さんはいずこねこのその後を告げた。「いずこねこは木星に旅立って、今はプラニメという活動が始まっているんですけども、木星でも頑張ってますんで、木星に来られた時はプラニメというアイドルをよろしくお願いします!」と締めくくった。

 廃工場でイツ子とスウ子が水たまりを超えていくシーンがある。水たまり......ミズタマリ......おわかりいただけただろうか。

 終わりの後には始まりがある。何も絶望に酔いしれるだけの映画ではない。希望を描きたかった。ガチガチに緊張している竹内の絶望的な舞台挨拶にも茉里さんのおかげで希望が見えて、終始朗らかに進んだ。

 やはりアイドルは希望なのだろうか? その答えは人の数だけ存在すると思う。一人の女の子が青春を捧げた"いずこねこ"と、その後。きちんとお別れの場を作ることができたなら本望だ。さらに、いずこねこを全く知らない人がこの映画をきっかけに知ってくれて、そして"終わり"について1分でも2分でも考えていただけたらそれに越したことはないのです。これで最後かも、今日で最後かも、なんて気持ちを誰かと会うときに抱かない。気が付けばあれが最後だったとか、もう二度と会えないんだとか、この少ない人生の中でもう幾つか経験してしまった。意外にもあっけなく最後の時は来る。その時まで自分は何をしたいか、何をやるべきか。イツ子の出した結論に、あなたはどう思うでしょうか。

"いずこねこ"は一体どこへ向かったのでしょうか?サクライケンタさんがいずこねこのために最後に書いた詞は、まるで一粒の涙のように寂しくて、とても優しかった。

「濡れていたその白い肌 終わりと始まりを、その目は知っていたんだ」

 ねこはいずこへと消えてった。そこで初めて、"いずこねこ"が完成してしまったのかも知れません。ぜひ、スクリーンの中のいずこねこに会いに来てください。そして「SAY!」と言われたら\にゃんにゃんにゃん!/と返してください。
(文/竹内道宏)

『世界の終わりのいずこねこ』
出演:いずこねこ、蒼波純、西島大介、緑川百々子、永井亜子、小明、宍戸留美、いまおかしんじ、蝦名恵、ライムベリー、みきちゅ、 PIP、コショージメグミ、レイチェル、姫乃たま、あの / ようなぴ / しふぉん(ゆるめるモ!)、篠崎こころ(プティパ -petit pas!-)、木村仁美、宗本花音里、Classic fairy、桃香(Peach sugar snow)、月詠まみ(恥じらいレスキュー)
監督・脚本・編集:竹内道宏/企画:直井卓俊/原案・音楽:サクライケンタ/共同脚本・コミカライズ・劇中イラスト:西島大介
2014|カラー|STEREO|16:9|88分

2015年3月7日(土)〜27日(金)新宿K's Cinemaにて上映中!
上映時間:3月7日〜13日...15:00/19:00 14日〜27日...21:00

トークゲストが目白押し!
3月19日(木)...姫乃たま(出演/アイドル/ライター)×直井卓俊(企画プロデューサー)×竹内道宏(監督/脚本)
3月20日(金)...西島大介(出演/脚本/コミカライズ)×ささかまリス子(秋葉原ディアステージ)×竹内道宏(監督/脚本)
3月22日(日)...吉田豪(プロインタビュアー)×サクライケンタ(いずこねこプロデューサー)
3月23日(月)...宍戸留美(イツ子の母役/声優)×いまおかしんじ(イツ子の父役/映画監督)×竹内道宏(監督/脚本)

その他、地方上映など詳しい情報は公式サイトをご覧ください。
http://we-izukoneko.com/

おたぽる

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