『FGO』で新たに配信された「新宿のアヴェンジャー」から学ぶ! その人デュラハン? スリーピー?

3月19日(日)23時0分 おたぽる

『Fate/Grand Order』公式サイトより

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『Fate/Grand Order』((C)TYPE-MOON / FGO PROJECT)の新たなエピソード「悪性隔絶魔境新宿」にて、「新宿のアヴェンジャー」が新たに登場、サーヴァントとして追加されました。

 さて、新宿のアヴェンジャーの外見ですが、「3mを超す巨大な狼と、それに跨った全身を鎧に包んだ首のない騎士」というもので、狼以外は前回記事でご紹介したアメリカの伝承「スリーピー・ホロウの首なし騎士」そのものです。

 新宿のアヴェンジャー、狼の方はひとまず置いておいて、騎士側の原典は短編小説集『スケッチ・ブック』(ワシントン・アーヴィング著/1820年)に収録されている、アメリカの古い伝承を元にした小説「スリーピー・ホローの伝説」となります。この作品から「人間に襲いかかる、身に鎧をまとった首なしの騎士」というモチーフが生み出され、さらに同小説を原作とした映画『スリーピー・ホロウ』(1999年)などで「鎧の上にマントを羽織り馬に乗った、首なしの騎士が人を襲う」という姿が映像化されたことにより、その外見が広く知られることとなりました。

 ところで、新宿のアヴェンジャーとその元ネタを確認した時に、ふと疑問に思ったことがあります。「スリーピー・ホロウの首なし騎士」は、“首がない”という特徴的な外見から、同様に首のない妖精「デュラハン」と混同されがち、というよりは今やほぼ同一視されている、としても過言ではない存在です。

 昨今の創作作品における「首なしの怪物」をモチーフとしたキャラクターは、首なしの鎧を着た騎士「スリーピー・ホロウ型」と、首なしの頭部が別にある妖精「デュラハン型」、果たしてどちらのタイプが多いのでしょうか。

 ここで一旦説明を挟みます。デュラハンとは、イギリスの西にある島国アイルランドに伝承の残る「首のない人間女性(男性とする伝承もある)の姿をした妖精」で、役目は「人間に死を予告する」ことです。デュラハンは首なし馬に乗るか、あるいは4頭の首なし馬に引かせた馬車に乗ってどこからともなく現れ、誰かの家の前に止まります。これが死の宣告であり、その家からは近いうちに死者が出るのです。外見のバリエーションとしては「手に自分の首を持って現れる」というものもあります。

 簡単に分類すると「首なしの騎士」がスリーピー・ホロウで、「頭部を手に持つ首なしの人間」がデュラハンとなります。

 話を戻しましょう。今回は、比較的最近の作品に登場する「首のないことが特徴」というキャラクターを「スリーピー型」「デュラハン型」と分けて、どちらの属性を持っているのか分類しまとめました。

 ただし、あくまでも筆者が知っている限りでの紹介となります。キャラクターや作品に抜けなどありましても他意はございませんので、その点はご容赦下さい。


■セルティ・ストゥルルソン『デュラララ!!』(作:成田良悟/電撃文庫)

 TVアニメ化もされた人気ライトノベル『デュラララ!!』の主人公格の女性です。猫耳の付いた黄色いフルフェイスヘルメットを被り、黒一色のライダースーツに身を包み、バイクに乗って活躍しています。彼女はヘルメットこそ被っていますがその中に頭はなく、首の断面からは黒いモヤが上がっているのみです。作中では「池袋に出没する首なしライダー」として「生きた都市伝説」とも呼ばれています

 彼女の外見は「首のない女性」であり、作中でも「アイルランド出身の妖精デュラハン」と説明されています。また使用する武器も大鎌という、死神のイメージを抱かせるものとなっています。鎧をライダースーツに、首なし馬をバイクに変えた、とのことですが、ほぼ完璧な「デュラハン型」と言ってよいはずです。

 ちなみに名前の「ストゥルルソン」は、『スノッリのエッダ』など北欧神話の原典の著者として知られている「スノッリ・ストゥルルソン」という、12世紀の人物の名前と同一です。セルティの出身地が北欧に近いアイルランドであることから、名前の元ネタはここに求められると思われます。


■町京子『亜人ちゃんは語りたい』(作:ぺトス/講談社)

 胴体と頭部が分離しており、胴体が頭部を持って移動する必要がある、頭部と胴体が若干離れても問題はない、という亜人(デミ)の女子学生です。作品内の設定では、亜人は人間から突然変異的に産まれる存在で、ただ単に伝承におけるデュラハンの特徴を持っている人間、となります。

 さて、自分の首を手に持った女性、という姿は完全に「デュラハン型」となりますが、その他の乗り物や伝承における役割は、作品の設定から見るに取り入れることは不可能です。よって妖精デュラハンの伝承における姿を忠実に再現したキャラクター、と言えるでしょう。


■ララ『モンスター娘のいる日常』(作:オカヤド/徳間書店)

 15年にTVアニメが放送され、愉快で攻めた表現が話題となった『モンスター娘のいる日常』に登場する中二病のデュラハンで、自らを死神と自称する少女です。真っ黒な大鎌を手に持ち、甲冑にロングコートを羽織る、という厳しい姿をしていますが、普段はそれらを身に着けようとしません。また頭部と胴体は付け外しが可能であり、胴体と頭部で性格が異なる、という描写が見られます。

 死後の世界を意識している、自らを死神と名乗る、死神の象徴である大鎌を持つところは「デュラハン型」ですが、甲冑やロングコートなどの外見は「スリーピー型」です。


■ユリ・アルファ『オーバーロード』(作:丸山くがね/KADOKAWA)

 現在総集編劇場版が公開中で、TVアニメ第2期シリーズの制作も決まった『オーバーロード』に登場するメイドチーム「プレアデス」の副リーダーです。種族は動死体(ゾンビ)、首なし騎士(デュラハン)と設定されています。作中では常識外れな人物ばかりの主人公側には珍しい、人間に近い感性を持つ存在です。また、首にチョーカーを巻いて胴体と頭部を繋げており、取り外しは自由自在といいます。

 首なし騎士と書いてデュラハンと読ませる、という種族名はまさに「スリーピー型」ですが、それとは裏腹に近接格闘を得意とする、メイド服、首の取れている描写があまり見られないなど、首なしの怪物をモチーフとしたキャラクターとしてはひと味違う存在と言えるでしょう。


■ベルディア『この素晴らしい異世界に祝福を!』(作:暁なつめ/KADOKAWA)

 第1期のボス(?)で、現在放送中の『2』でもちょくちょく姿を見せる、主人公たちと敵対する魔王軍幹部です。外見は頭部の分離した、胴体に鎧を着込みマントを羽織った騎士という出で立ちで、誇り高い騎士の性格を持っています。種族は明確にデュラハン、元々は不当に処刑された騎士、と設定されています。

 言うまでもなく、分離した頭部を手に持つ以外はすべて「スリーピー型」の特徴で表されています。最もよく見られる典型的な、スリーピー型と完全に同一視されたデュラハンです。


■赤蛮奇『東方project』 (上海アリス幻樂団)

 古今東西の妖怪や怪異が登場する『東方project』ですが、こちらには“らしい”キャラクター「赤蛮奇」が登場します。こちらは胴体から頭部を取り外し独立させ、空を飛ばす能力を持っています。

 この能力はデュラハン型ともスリーピー型とも異なり、分類としては古代中国の伝承を由来とする、寝ている間に頭が胴体から離れ、頭部のみが空を飛ぶ人種「飛頭蛮(ひとうばん)」をモチーフにしたものと思われます。有名な所では『三国志演義』に登場する朱桓(しゅかん)という武将が、この人種に遭遇したというエピソードが残されています。

 ちなみに、日本では首が伸びる「ろくろ首」が有名ですが、その一種として、飛頭蛮と同じく頭が分離して空を飛ぶ「ぬけ首」という妖怪が存在しています。


■デュラハン『真・女神転生デビルチルドレン』シリーズ(アトラス)

 00年から03年にかけて、シリーズ6作(派生作品含む)が展開した人気RPG『真・女神転生デビルチルドレン』に登場するいち悪魔となりますが、是非に知って頂きたいため、あえて紹介しています。

 同作品のデュラハンは、自分の頭部と首なし馬の人形を手に持つ少女型の悪魔で、説明には「死神の女の子。彼女が現れると、近々その家から死者が出ると言われている」と書かれています

 ゲーム『女神転生シリーズ』には、手に首を抱えた女性騎士の姿でもデュラハンが登場していますが、さすが女神転生と言えましょうか、正確な伝承を知った上で作られた完璧な「デュラハン型」です。


——ここまでに挙げた作品だけでなく、モブキャラとして首なしの怪物が登場する各種作品も併せて見直してみると、やはり「馬に乗った首なしの騎士」というスリーピー・ホロウの怪物に、いくつかのデュラハンの要素、特に分離した頭部を手に持つ、という特徴を足して「デュラハン」と呼んでいる作品のほうが圧倒的に多く、現在において双方はほぼ同一視されている、と見てよいでしょう。

 ただし「FGOの新宿のアヴェンジャー」や「デビルチルドレンのデュラハン」のように、首無しの男性騎士を「スリーピー・ホロウ」、死を予告する首なし女性を「デュラハン」と、双方の違いを理解した上で明確に分類している作品も少なからず存在しています。とは言え、首なしの怪物を登場させるにあたって、武器や鎧を身に付けていたほうが見た目が映えるということもあり、難しいところです。

 創作作品に「首なしの怪物」をデュラハンととして登場させる場合は「女性とする」、「首なしの馬」、「死に関連する」などのデュラハンの特徴をできるだけ多く取り入れるのがよいでしょう。ダメ押しとしてアンデッドなど、明確な別種族として「男性の首なし騎士」を登場させれば、「こいつわかってやってるな」という感じになるはずです。

■文・たけしな竜美
 オタク系サブカルチャー、心霊、廃墟、都市伝説、オカルト、神話伝承・史実、スマホアプリなど、雑多なジャンルで記事執筆、映像出演、漫画原作をしています。お仕事募集中です!
Twitter:https://twitter.com/t23_tksn

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