朝ドラ『おむすび』出演の仲里依紗「ギャルになりたくて15歳で芸能界入り。金髪、全身ヒョウ柄、パラパラまで…伝説のギャル・歩役がうれしかった」

2025年3月20日(木)12時0分 婦人公論.jp


「1990年代後半のギャル文化全盛期、私は長崎の片田舎で、ギャルファッションの聖地、《SHIBUYA109》へ行くことを夢見る小学生でした」(撮影:木村直軌)

NHK連続テレビ小説『おむすび』でヒロインの姉を演じる仲里依紗さん。《伝説のギャル》という役柄がピッタリと話題だ。私生活でも好きなファッションに身を包む姿や、飾らない人柄が世代を問わず人気を集めている。以前は求められるイメージを演じていたという仲さんが殻を破ったきっかけは——(構成:平林理恵 撮影:木村直軌)

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朝ドラ出演は「ドッキリ」かと……


連続テレビ小説『おむすび』で、橋本環奈さん演じるヒロインの姉・米田歩役のお話をいただいたとき、「《伝説のギャル》という設定です」と言われ、「本当に? それとも、『ドッキリ』?」と、喜ぶ前にまずは疑ってかかりました。

「ギャル」は夜のイメージがあったので、「朝ドラ」と対極ではないかと感じて。だから伝説のギャルといっても、回想シーンに少し出てくるのかな? と思っていたんです。

そうしたら、とんでもなかった。金髪ギャルメイクはもちろん、チェックのミニスカートにルーズソックスの女子高生ファッション、全身ヒョウ柄に厚底ブーツで、パラパラまで踊っちゃった。朝ドラのヒロインのお姉ちゃん役で、まさかこんなにもギャルができるとは……。うれしかったですね。

というのも、ギャルこそ私の憧れだったから。『おむすび』は、平成時代の30年を描いていますが、それはまさに、平成元年生まれの私が駆け抜けてきた時代でもあります。1990年代後半のギャル文化全盛期、私は長崎の片田舎で、ギャルファッションの聖地、「SHIBUYA109」へ行くことを夢見る小学生でした。

当時はインターネットも今ほど普及しておらず、主な情報源は雑誌。知れば知るほど興味を掻き立てられるのに、残念なことに田舎ではギャルを見ることができなかったんです。かえって憧れが猛烈に膨らんで、私の中でギャルはスターになりました。

そして、時代は流れて令和の今、朝ドラではギャルの見た目だけでなく、彼女たちの考え方にもスポットライトが当たっています。それはたとえば、「すごくポジティブ」「他人の目を気にせず、自分の《好き》を全力で貫く」「今を思いっきり楽しむ」……、あらら、これって私じゃん。(笑)

『おむすび』では、阪神・淡路大震災が物語の重要な要素として描かれ、東日本大震災についての描写もあります。多くの方がつらい思いをされ、思い出したくない方もいらっしゃるなかで、どう伝えればいいのか。悩みはつきませんが、私はギャルパワーをポジティブに生かすことができたらと思って演じてきました。

「ギャルってなーんにも考えてなさそう」と言う方もいますが、それは違う。たとえば、ギャルは何かにつけて「ウケる」と口にしますよね。すごく幸せなときはもちろん、どん底でお先真っ暗というときも「マジでウケるんだけど」と言う。

最悪な状況を前に、つらい、どうしようと沈み込んでしまいそうな自分、それをちょっと引いて見て「ウケ」に変える。それがギャルなんです。そして、「マジウケる」と口にして自分の背中を押し、なんとかなるよ、と前に進もうとする。これぞギャルのポジティブパワーです。

『おむすび』はこれからまだまだ波瀾含みの展開が続きますが、最後まで《伝説のギャル》を見守っていただけたらうれしいです。

15歳、3年の約束でひとり上京して


実を言うと、私、ギャルになりたくてこの世界に入ったようなものなんです。オーディションに合格したことをきっかけに、単身上京したのは15歳のとき。

親には猛反対されましたが、幼い頃から「やると決めたら絶対にやる」子どもだったので、親が折れるまで押し切りました。ホント、ひどい娘(笑)。今、11歳の息子を持つ母親として振り返ると、「いやー、よく送り出してくれたなあ」と、親には感謝しかありません。

当時、役者になりたいという気持ちは全然なく、なってみたかったのはギャル。芸能界に入る=東京に住む=SHIBUYA109に行ける=ギャルになれる、みたいな発想。しかも、所属事務所の場所が当時は渋谷! よし! と、めっちゃ短絡的な発想で。

上京すると、高校に通いながら演技のレッスンが始まりました。あれっ? 渋谷に行きたかっただけなのに、なぜか、めちゃくちゃレッスンやらされてるんですけど——。

それでも、先生と即興で芝居をしたり、自分たちでストーリーを作ったりしていて時折褒められると、うれしくて。親とは「高校3年間で結果が出せなかったら長崎に戻る」と約束をしていたこともあり、なんとしてでも結果を残さなければ、と必死でがんばった。そんななかで、私は次第に演じること自体にのめりこんでいきました。

役者というのはすごく面白い職業だと思うんですよ。お医者さんにも、アイスクリーム屋さんにもなれちゃう。さまざまな役柄のそれぞれの人生を生きるなかで、いろいろな人と出会うこともできる。

ただ役者は楽しいけれど、若い頃は常に「俳優・仲里依紗」のイメージを求められることが、つらくもありました。役柄から離れたら素の自分でいたい、ファッションや言葉や行動で自分の「好き」をアピールしたい。

けれど私にはそれを周囲に伝え納得させる力がなかったので、取材やインタビューを受けるときは、外見や発言、受け答えもすべて演じていました。

この「自分」が出せないもどかしさを、かなり長い間抱えていたように思います。それが変わってきたのは、SNSの時代になったことが大きいです。同時に私も皆さんの声をちゃんと聞けるようになった。

それまで私の耳に入ってくるのは、限られた大人の声だけであることは感じていました。15歳から芸能界にいる私のために、良かれと思っての助言だとわかっていたから、私はそれが唯一の正解だと思い、従うことを選んでいたのです。

でも、正解はただ一つじゃないし、別に正解ばかりを求める必要もない。SNS上にはいろんな声があふれていて、私のことを面白がってくれる人もいれば、眉をひそめる人もいます。自分の「好き」を発信すれば、良きにつけ悪しきにつけ直接反応が届く。それはとっても自由で、時代が自分に寄り添ってくれた気がしてうれしかったんです。

<後編につづく>

婦人公論.jp

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