中学校長が「2人産め」発言 問題の根は深い

3月20日(日)16時0分 NEWSポストセブン

先生が問題だ

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 大阪市立茨田北中学の校長の全校集会での発言が波紋を呼んでいる。フリーライター・神田憲行氏が考える。


 * * *

 発言したのは寺井寿男校長。寺井校長は「発言の一部を切り取られて誤解を招いている」として、発言要旨を一時、同中学のHPにアップしていた。現在は削除されているその文章を読むと、たしかに後半部分には首肯できるところもある(引用は「産経ニュース」より)。たとえば、


《次に男子の人も特によく聴いてください。子育ては、必ず夫婦で助け合いながらするものです。女性だけの仕事ではありません。》


 はその通りだと思うし、


《人として育ててもらった以上、何らかの形で子育てをすることが、親に対する恩返しです。》


 というのもわかる。私は子どもがいないが、他人の子どもでも「国の宝」だと思っているので、いま話題の保育所問題には関心がある。


 だがそれでもなおやはり、冒頭の発言は問題だと考える。


《今から日本の将来にとって、とても大事な話をします。特に女子の人は、まず顔を上げてよく聴いてください。女性にとって最も大切なことは、子供を2人以上産むことです。これは仕事でキャリアを積むこと以上に価値があります。》


《「女性が子供を2人以上産み、育て上げると、無料で国立大学の望む学部に能力に応じて入学し、卒業できる権利を与えたらよい」と言った人がいますが、私も賛成です。子育てのあと大学で学び、医師や弁護士、学校の先生、看護師などの専門職に就けばよいのです。子育ては、それほど価値のあることなのです。》


 相手は中学生の女の子だ。将来は歌手とかモデルになりたいとか、フワフワした夢持ってる子もいるだろう。中学にに上がってやっと勉強が好きになった子もいるだろう。子供の6人に1人が貧困の時代である。早く家計支えたい子も、逆に早く家を出たい子もいるだろう。


 それらを全部なぎ払って、学校でいちばん偉い先生から「子供を2人産みなさい」と言われたときの衝撃度を想像してほしい。「先生が思ってるのとは違う生き方したいのです」という勇気もない子どものために、代わりに言ってやるのが大人の責任ではないか。


 発言は大阪市議会でも問題視されているが、恐らく寺井校長はまだ自分が批判されている理由がよくわかっていないだろう。その顔が想像できる。


 私もいろんな学校の先生を取材してきたが、他の取材では出くわさないような顔を見るときがある。彼らが自分の教育論や指導論を語っているときに、「いやでも先生、それは……」と質問を挟むと、ポカンとするのだ。きょとんとするときもある。それで取材が止まる。


 自分の質問の仕方やタイミングが悪いのかと思っていたが、ある先生が「僕の考えはこうです!」と質問を打ち切られたので、了解した。彼ら先生が「語り」を入れているとき、聞いているのはだいたい生徒か保護者だ。いつも「ハイハイ」と聞いているばかりの人を相手に喋っているので、「異論」を差し込まれると驚くのではないか。「先生はいつも正しい」という前提を疑われることを想像もしていないのではないか。


 逆の例証がある。私はかつて有名進学校の教師たちを集中的に取材した経験があるが、一度もポカンときょとんもなかった。あそこは口ばっかり達者な面倒臭いガキ……いや、大変活発で利発な生徒が多いので、先生の話に反論もする。そうやって先生も生徒から鍛えられているのだろう。


 学校の先生が自らの無謬性を信じ込んでいるケースが熊本県でもあった。LINEによるいじめで自殺した高1女性の遺族が調査を申し立てた。学校内で調査委員会が立ち上がり、「いじめが自殺に直接的な影響を与えたとは認めがたい」という報告書をまとめた。


 その調査委員会のなかにその高校の校長が入っていたのだ。遺族は当然、「公平中立な調査が行われたと捉えることはできない」と、外部の人間による第三者委員会の再調査を申し立てている(3月11日朝日新聞)。調査対象の学校のトップが入っていたらその報告書の中立性が疑われるのは当然のことで、この校長が「無私な自分が完全中立な判断をすると他人は信じてくれている」と、どうしてそこまで思い込めるのか不思議でならない。


 また愛媛県では全県立高校で、生徒が校外の政治活動に参加する生徒に、学校への事前の届け出を義務化することがわかった(3月16日朝日新聞)。選挙権を持った18歳が、自分の政治的見聞を広げるために政治集会に参加するのはごく普通の市民的自由だ。参加して「良い」と思うこともあるだろうし、「ダメだこれは」と帰ることもあるだろう。


 その市民的自由の行使を事前に「届け出」させるおかしさを、愛媛の先生たちはなにも疑問に思わないのだろうか。そんなに学校の先生と違う意見を生徒が身体の中に取りこむことを恐れているのだろうか。


 あれだけ危険性を指摘されているのに、まだ高層の組み体操をやり続ける小学校の先生たちも同様だ。外部からの異論がなかなか受け入れられない。


 ただの「校長のうっかり」発言では無く、問題の根は深い。

NEWSポストセブン

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