【インタビュー】『ソローキンの見た桜』阿部純子「人と人とが別れるときの痛みや感情の流れは、今の私たちにも共通すると思います」

3月20日(水)12時0分 エンタメOVO

ゆいと桜子の二役を演じた阿部純子

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 日露戦争下、松山に実在したロシア兵の捕虜収容所を舞台に、日本人看護師の武田ゆいと、ロシアの将校ソローキンの許されない愛の行方を、現代のテレビディレクターの高宮桜子が探る。日露合作の『ソローキンの見た桜』(3月22日公開)で、ゆいと桜子の二役を演じた阿部純子に話を聞いた。



−まず、この映画に出演することになった経緯を教えてください。

 お声掛けをいただいて、それから脚本を読ませていただきました。読めば読むほど脚本にほれ込んでしまって、ぜひこの役をやりたいと思いました。役に決まったときはとてもうれしかったです。

−ゆいは英語が堪能な役でしたが、ご自身もニューヨーク大に留学しているので、言葉の面では苦労はあまりなかったですか。

 英語はまだまだ勉強したいと思っているので、英語のせりふは、脚本を読みながら、声に出してたくさん練習をしました。

−二役の演じ分けは大変でしたか。

 ゆいと桜子という2人は違うタイプの女性なので、演じ分けが難しいところもありました。ただ、現代の桜子の方は、私にも近い感じがしましたし、昔のことは全く知らないという設定だったので、観客にとっても近い存在なのではないかと思いました。

−この映画は、史実とフィクションを融合していますが、史実については、事前に調べたりはしましたか。

 はい。原作はもちろん、ロシア人捕虜の日記を読んだり、いろいろな資料を集めたりしながら、自分にできることをやってみました。それで、当時の人たちが、いかにロシア人の捕虜を大切にしていたのかを知って感銘を受けました。日露戦争中に、当時の人たちがどんなふうに生きていたのかは想像するしかなかったのですが、資料を読んだり、実際に松山にお墓参りに行って、今でもきれいに掃除されているのを見ると、当時の人々の思いがちゃんと現代に伝わっていることを実感しました。

−では、想像するしかなかったという、明治時代の女性を演じた感想は?

 私自身の感覚としては、お見合いの相手がいるから好きな人とは結婚できないとか、戦争で弟を亡くしたのに、その痛みに耐えながら敵国であるロシア兵の世話をすることについての、ゆいの複雑な気持ちを考えると、とても重いな、という印象を受けました。ただ、それは気分が沈み込むような重さではなくて、彼女の強さをしっかりと受け止めなければ、という意味でした。そうした気持ちを大切にしながら演じようと思いました。

−この映画には「日露戦争時代のロミオとジュリエット」というキャッチコピーも付いていますが、ゆいとソローキンの関係をどう思いましたか。

 2人の間に戦争という背景があったので、悲劇のストーリーになってしまいましたが、もし戦争がなかったら、人と人とが出会って恋に落ちるという、とてもシンプルでロマンチックな話だと思いました。その背景の重みを感じるほど、ピュアな関係だと思いました。

−共演したロシア人俳優の印象は?

 ソローキン役のロデオン・ガリュチェンコさんは、もちろん俳優さんとして素晴らしく、共演してとても勉強になることが多かったのですが、普段はとてもチャーミングな面白い方でした。コメディーもされているので、たくさん笑わせてくれました。ロシアの俳優さんは劇団に所属されている方が多いので、演技の基本的なことは舞台で勉強しながら身に付けていくようです。ですから、発声やお芝居に柔軟性があり、演技に説得力があると思いました。

−井上雅貴監督はロシアで映画製作を学んだ人ですが、日本の監督との違いはありましたか。

 監督が先頭に立って現場を引っ張っていく、という監督もいらっしゃるかと思うのですが、井上監督の現場では、演者もスタッフも含めてみんなが流動的に動いていて、全員で映画を作っていくという雰囲気でした。また、この映画の舞台になったのが日本とロシアだったので、過去にいろいろなことがあった国同士が、こうして一つの作品を作るということはとてもすてきなことだと思いましたし、それを成り立たせることができたのは井上監督だったからだと感じています。

−捕虜収容所所長役のイッセー尾形さんも、ロシア映画『太陽』(05)で昭和天皇役を演じていますが、印象はいかがでしたか。

 尾形さんは、一緒に演じさせていただく中で、本当に勉強になることばかりでした。常に資料を持ち歩いては読まれていましたし、お話させていただいたときも、演じ方のアドバイスを頂きました。尾形さんとボイスマン役のアレクサンドル・ドモガロフさんが並んでいると、独特の雰囲気が漂っていました。お2人を見ていると、「きっといい映画になる。私もしっかりと付いていこう」と思いましたし、この人たちが支えてくださるのだから、私は自分にできることをすればいいんだと思えました。

−では、今後演じてみたい役は?

 とにかく笑うことが好きなので、見た人が前向きになれるような、笑顔が増えるような作品に出たいと思っています。なぜか陰がある役が多いので、明るい役もやりたいです(笑)。

−最後に、この映画の見どころと観客へのメッセージをお願いします。

 見どころは、私たちがロシア兵と一緒にコサックダンスを踊るシーンです。撮影現場でも、日本語と英語とロシア語が飛び交っていましたが、このシーンは、言語の壁や、戦争という背景を越えて、楽しい時間を共有するシーンだったので、とても印象に残っていますし、私にとってもお気に入りのシーンになりました。
 この映画は、確かに時代物であり、背景には戦争が描かれていますが、そうしたことに捉われず、恋愛映画の一つとして見ていただければと思います。この映画が描いた、人と人とが出会って、やがて別れるときの痛みや感情の流れは、今の私たちにも共通すると思います。そこに注目していただきたいです。いろいろな形の愛があるということが、皆さんにも届けばいいなと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

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