安室奈美恵と浜崎あゆみ〜アロム奈美江『永遠ていう安室奈美恵なんて知らなかったよね。』第5回

3月21日(水)11時38分 耳マン

安室奈美恵に命を捧げる女装ライター・アロム奈美江が、引退する安室ちゃんへの愛をつづっていく新連載!


私、お浜さんも大好きよ!

安室ちゃんが引退を公式ホームページで発表してから、しばらくSNSで散見されたのは、「安室ちゃんよりもっと引退すべき人がいるじゃないか!」「安室ちゃんじゃなくて、あの人が辞めるのが妥当!」といった声だった。

ええ、その”あの人”というのは、浜崎あゆみさんのこと。

ゲイの友人たちの間では、「お浜さん」と呼ばれ親しまれている彼女も、今年でデビュー20周年! 安室ちゃんが産休に入った年にデビューし、あっという間に大ブレイク。CDトータルセールス5,000万枚突破という記録を打ち立てた、日本を代表する歌姫よ。

近年ではライブツアーに注力していて、4月からは20周年記念のアリーナツアーを予定するなど、活発なアーティスト活動をみせている。なのに……最近のお浜さんといえば、激太りだの、顔が昔と違うだの、たまに歌番組出演しても声が全然出てないだの、話題になるのは意地悪目線でのゴシップネタばかり……。まあ、私自身もそれをおもしろがっている底意地悪いオカマのひとりなんですけど(笑)。

でも、勘違いはしないで! 私、お浜さんも大好きよ! そして、同じく意地悪目線で見つつも追わずにはいられない、お浜さんを偏愛するゲイファンが多いのも事実。

同じエイベックス所属で、同じ世代に隆盛を極めた歌姫のふたりだから、どうしても比較されがちなのは仕方ないとは思うけど、ふたりが表現してきたものは全然違っているように私は感じている。

お浜さんは、デビュー時から自分で作詞を手がけているだけあって、常に己の抱える苦悩や葛藤、時にはその先にある愛情や希望を歌ってきた人。金髪、盛り髪、ネイル、ヒョウ柄などのファッションが、コギャルブームと相まって「コギャル(ギャル男も含む)の教祖」的存在に。そしてお浜さんの歌の世界観も、見た目派手なコギャルたちの憤りにも似た孤独感や虚無感にバッチリはまっていったのよ。

「いつも強い子だねって言われ続けてた」と歌っていたお浜さんも、大人になるにつれ、フェミニズムも感じさせるような社会派なメッセージ性のある歌詞も書くようになっていくけど、やはりそこには己が体験した痛みが根底にあり、だからこそ同じ痛みを持つ女子とゲイから共感を呼ぶ。

ライブもご本人が「SHOWをやりたい」と言うだけあり、衣装や演出がど派手で凝っていて、めまぐるしくドラマティックな展開がステージ上でくり広げられていくのが特徴。これもまたゲイ心を掴む理由のひとつね。

プライベートも結婚・離婚があったり、難聴を抱えていたり、セレブな生活をSNSでうかがわせてみたり、うっかり発言でTwitterアカウントが一時停止になったり、とにかく話題にこと欠かない! その様は、もはやマドンナのような海外アーティストの風格。

ふたりは「似て非なるもの」

一方、安室ちゃんは、時々熱愛スキャンダルはあるものの、個人のSNSも持たず、頑なに自分とその周囲のプライベートを見せようとしてこなかった。だから、生活感のないミステリアスな存在で、ライブでは生身の安室ちゃんを観ることができるけど、ずーっと遠くにいて決して手の届くことのない人……という感じ。それが安室ちゃんのスター性でもあるのかも。

ライブに関して、歌って踊るというシンプルな構成を望んでいるのも、お浜さんと対象的よね。

歌でも、セルフプロデュースするようになってからは、たくましくて凛とした女性像を歌うことが増えたのが印象的。シングル曲『Put 'Em Up』では、「これってあたしへの挑戦よね!? 受けて立とうじゃない この際ケリをつけるわ」と浮気する男に啖呵を切り、アルバム『PLAY』収録の『HELLO』では、「勘違いしていたの今の今まで いつでも合わせていなきゃ 愛されないって」と恋愛至上主義を卒業し、逆に男を翻弄してみせた。

でも、この女性像って安室ちゃん自身のことじゃないのよ。

セルフプロデュース期以降の作品をまとめたベストアルバム『BEST FICTION』がリリースされる際に、安室ちゃんが雑誌のインタビューで答えていたのは、「作品中で歌っている女性像はすべてフィクションだった」ということだった。等身大のリアルな安室ちゃんは、上記のような恋愛や他人に振り回されないストロングガールとはかけ離れているけど、そんな女性になりたい!という憧憬の念で各楽曲を歌っているということだったの。

まあ、噂された歴代彼氏をよくよく振り返ってみると、安室ちゃんって男を見る目があるほうではないのは納得できる(笑)。

そのインタビューを読んだとき、私ったら、ずっと手の届かないスターだと思っていた安室ちゃんが急に身近な存在に感じたのよね。安室ちゃんのメンタル、私と同じじゃん!って。カッコいい女性歌手や女優に憧れつつも、現実は恋愛にうつつを抜かしたり、彼氏の浮気や失恋にクヨクヨしたりしてるもん、私やそのほかのゲイや女装友達もね。

長くなっちゃったけど、そういうわけでお浜さんと安室ちゃんは「似て非なるもの」ということ。彼女らの音楽も活動も、はたまた生きかたもすべて味わいが違うの!

だから、「あゆのほうこそ引退すればいいのに」なんて言われる筋合いなし! そんなのお浜さんにとってはとばっちりでしかないわ!

安室ちゃんの引退後の先行きも気になるけど、お浜さんも今年40歳になろうとしていて、これからどんなババア歌手(好きです♪)になっていくのかも楽しみだわ!

新宿2丁目で開催されている『浜崎あゆみナイト』も熱狂的ゲイ&女性ファンで大盛況! 先輩ドラァグクイーンのエスムラルダさんもお浜さんに扮していました。(扮しきれてない)

【著者紹介】

アロム奈美江●ゲイをテーマにした電子書籍ライター、ゲイ雑誌『Badi』編集者を経て、2009年にドラァグクイーンデビュー。プライベートでは、30歳から女性ホルモン投与を始め、ゲイからトランスジェンダーの領域へ転向。現在は、流しの女装パフォーマー、ホステス、MC、イベントオーガナイザーとして節操なく小銭を稼いでいる。

[アロム奈美江]

耳マン

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