“作品に罪はあるのか”論争に東映が示した映画メディアとしての答え 波紋はどう広がるか

3月21日(木)10時22分 オリコン

『麻雀放浪記2020』ノーカットでの劇場公開を発表した東映の代表取締役社長・多田憲之氏(左)、白石和彌監督 (C)ORICON NewS inc.

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 ピエール瀧容疑者の逮捕にまつわるドラマ出演シーンの差し替えや電気グルーヴのCD回収などが広がるなか、出演映画『麻雀放浪記2020』(東映)が、出演シーンのカットや差し替えなど一切なくノーカットのまま当初の予定通り4月5日に公開されることが決定した。“作品に罪はあるのか”論争に対して、映画というメディアにおけるひとつの答えを明示したカタチになる。

 これに対して異を唱える声はほとんどなく、概ね好意的に受け止められているように見える。しかし、一部映画ファンを除いて、モヤモヤしたものが残るのも実情だろう。同作のメガホンをとった白石和彌監督も、3月20日の午前中に行われた公開決定会見では「ベストの状態(ノーカット)で公開したかった」と語っていたが、同日夜のイベントに出席した際には「今でもこの決断が正しかったのかわからない」と複雑な心境を吐露していた。

 配給の東映の見解の通り、映画というクローズドの有料メディアにおいて、観客の判断にまかせるというのは正論だ。そもそも映画には、テレビなど公共メディアでは発信できないような制作者のメッセージを映像として伝えるメディアとしての使命がある。歴史を振り返れば、テレビでは伝えられないであろう映像表現で社会を動かした作品も多く生まれている。東映は、本作もそんなメディアで発信すべき作品のひとつと判断しているのだろう。

 そして、もちろん作品に罪はない。罪があるのはピエール瀧容疑者だけだ。しかし、とくに映画に明るいわけでもない、世の中の大多数の一般層にとっては、禁止薬物摂取という反社会行為を行っていた犯罪者が出演している作品というイメージがあるのも事実。作品にクレジットされることによるマイナスを懸念する出資企業が出るのは当然だろう。

 公開決定会見で東映の代表取締役社長・多田憲之氏は「製作委員会では議論が続いている」とし、ノーカット公開に関しては東映の判断で決定したことを強調していた。同社の紀伊宗之プロデューサーは、製作委員会の出資企業が今後、抜けることも想定し、その賠償請求についてピエール瀧サイドと交渉をはじめていることを明かした。多田社長は「東映の株価が多少下がることは覚悟している」と、映画会社としての矜持をつらぬくために腹をくくっていることを示していた。

 厳しい状況のなかで難しい決断を下した東映だが、事件発覚後の自粛一辺倒の流れに一石を投じたことは間違いない。これが今後、どのような波紋となってシーンに広がるか注目したい。

オリコン

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