「野球は確率のスポーツ」 公立の明石商が兵庫で“敵なし”になった理詰めの戦略とは

3月23日(土)6時0分 文春オンライン

 3月23日、第91回選抜高校野球大会が幕を開ける。出場32校中、注目すべき存在の1つが明石商業だ。


 公立校(明石市立)でありながら県大会4季連続優勝中と、強豪私学が揃う兵庫県で敵なしの強さを誇る。昨秋の近畿大会準決勝では、智辯和歌山に12対0で圧勝。2度目の選抜出場を確実にした。



18年夏は延長の末初戦敗退 ©共同通信社


 同校の特質がはっきり表れたのが、初めて甲子園の土を踏んだ16年春の1回戦・日南学園戦だ。同点の9回裏、フォースプレイが成立する一死満塁の場面であるにもかかわらず、スクイズを仕掛けた。かつて高知・明徳義塾中で全国制覇し、07年から明石商を率いる狭間善徳監督は言う。


「野球は確率のスポーツ。すべての状況を見てベストな選択をした結果がたまたまスクイズだった、というだけです」


 奇策に見えても狭間にとっては常に最善策。その采配の根拠となるのは映像研究だ。


「日南学園は左腕投手でした。スクイズがあり得る場面では投手が足を上げる間に捕手が三塁走者の動きを見るのがセオリー。でも映像では、捕手は投手しか見ていなかった。だから走者には早めにスタートを切らせることができた」



「東大を出ても、知識を使えんかったらただのアホ」


 本塁は間一髪でセーフ。執念の分析が生んだ「一歩」が勝敗を分けた。


「無くて七癖あるものやから」と、狭間は不敵な笑みを浮かべる。配球の傾向、投手がサインにうなずく回数やボールをグローブに入れる時のしぐさまで、徹底的に洗い出す。


 理論とともに明石商野球の両輪をなすのが実践力だ。狭間は、関西人らしい言い回しでこんな喩えを出す。


「東大を出ても、知識を使えんかったらただのアホ」


 作戦の成功率を高めるための練習もまた理詰めである。


「たとえば150キロの速球は0.43秒で本塁に到達する。ボールが手を離れてからバントの構えをしても、外角低めに来たら絶対に間に合わない。生徒たちには、『リリースの瞬間に集中しろ。そうすれば0.43秒という間を感じられる』と教えています」


 1月末の段階ですでに、ほとんどの出場校の映像は入手済み。初戦の相手・国士舘の分析にも抜かりはないだろう。素材の集まる私学に反骨心を燃やす狭間がつくりあげた「勝ちやすいチーム」は、この春、全国制覇を虎視眈々と狙う。



(日比野 恭三/週刊文春 2019年3月28日号)

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