サッカー日本代表監督「4年契約」長すぎる 1年ずつ3人の監督に任せるのはどうだろう

3月23日(土)17時0分 文春オンライン

 1月にアジアカップを終え、初代表組を加えた日本代表が再始動した。


 3月22日、コロンビア戦では初代表の鈴木武蔵をスタメン起用し、アグレッシブに戦ったが0−1で敗れ、厳しい再スタートになった。もう1試合、神戸でボリビア戦(26日)が行われる予定だ。この2試合を含め、2022年W杯カタール大会に向けてチーム作りは静かに進行しているが、監督の選考についてはカタール以降を見据えて今から考えておくべきではないだろうか。


 16日、FIFAの評議会が行われ、2022年W杯カタール大会から出場枠を48か国にすることが検討されたという。そうした改革の姿勢は、昨年W杯ロシア大会でもVARや警告ポイントの導入などで見て取れた。世界のサッカー界は、スピード感を持って新たな取り組みに挑戦し、進化している。


 世界だけではなく、アジアも猛烈なスピードで成長している。


 アジアカップではタイやベトナムの健闘が見られたが、10年前には圧倒的な差をつけていた東南アジアの国々が急激に力をつけてきている。もはや彼らは、ラクな“勝ち点3”ではなくなっている。



森保一監督 ©文藝春秋


「4年間」必要だった20年前


 では、日本は成長の速度を維持し、着実に強くなっているのだろうか。


 W杯ロシア大会で決勝トーナメントに進出し、大会3位になったベルギーを苦しめた。ベスト16で初めてゴール(2得点)を決めるなど少しずつだが進歩している。


 しかし、日本代表の強化のやり方自体は20年前とさほど変わらない。


 日本ではチーム作りにじっくりと取り組んでもらうために監督に「4年間」という時間を与えている。しかし、世界やアジアのサッカー界が猛烈なスピードで動いている中、日本は4年契約でのんびり構えていていいのだろうか。93年の「ドーハの悲劇」以降、日本代表監督のチーム作りとその完成度を見てきたが、少なくとも今の時代、4年間という長時間を与えるやり方はそぐわないのではないか。


 20年前は、4年間が必要だった。


 1998年W杯フランス大会に初出場を果たしたものの、日本は世界のサッカー界においては初心者マークのチームだった。カズ、名波浩中田英寿らがいたものの、まだ世界は日本人選手にとって遠い世界だった。そこで世界を知る外国人監督を招聘し、4年間で戦術を落とし込み、選手を育て、W杯で戦えるチームを作ってもらった。


 だが、今は状況が大きく変化している。



トルシエ以外、W杯で結果を出せていない現実


 多くの日本人選手が海外でプレーするようになり、本田圭佑香川真司、長友佑都らビッグクラブでプレーする選手も出た。チャンピオンズリーグなどに出場してプレーし、世界を肌で知るようになり、優秀な監督にも触れ、選手の意識が変わった。また、情報は身近になり、世界がものすごいスピードで動いているのを実感できるようになった。20年前と時代背景や状況がまったく異なっている今、監督だけがさしたるチェックポイントもなく、依然として4年間(ザッケローニは2年契約2年延長オプション)を任されているのだ。


 そもそも日本代表を4年間、任された監督はその時間を持て余し、トルシエ以外、W杯で結果を出すことができていない。


 加茂周は、94年10月のアジア大会で解任されたファルカン監督の後を引き継いだが、96年5月のメキシコ戦に3−2で勝った時がチームのピークだった。そこから下り坂に転じ、97年W杯最終予選のアウェイのカザフスタン戦でドローの後、解任された。



 ジーコは2004年の欧州遠征でイングランドと互角に戦ったのがひとつのピークだった。ザッケローニの時は13年7月のEAFF東アジアカップの前にベースが完成し、秋のオランダ、ベルギー戦でチームがほぼ完成した。ハリルホジッチ監督はピークが見えないまま、最終的にW杯ロシア大会本番前に解任された。



 どの監督もW杯本番のかなり前にチームが完成してしまい、新陳代謝ができずにマンネリと中だるみが生じ、組織力や競争力が低下していった。その結果、加茂とハリルホジッチは本大会にたどり着けず、ジーコとザッケローニはW杯で1勝もできず、グループリーグ敗退に終わっている。



W杯ベスト16に導いた監督は「短期間」


 過去ベスト16に進出したW杯はトルシエ以外、短期間で結果を出している。


 2010年W杯南アフリカ大会、岡田武史監督は2年半かけてチーム作りをしており、正確には短期間ではないが大会直前にW杯予選を勝ち抜いたシステムでは勝てないと判断。レギュラー選手を大幅に入れ替え、アンカーを入れた守備的システムに変更した。大会1か月前にまったく違うチームになったが、追い込まれた選手が腹を括って新システムをこなし、初戦のカメルーン戦に勝って勢いに乗った。




岡田氏、西野氏の結果を“たまたま”と言えるだろうか


 2018年W杯ロシア大会では、大会直前にハリルホジッチ監督が解任された。監督の恐怖政治から解放れたところで西野朗監督は選手の自主性を重んじて選手のやる気を促した。その結果、選手のモチベーションとパフォーマンスが飛躍的に上がった。わずか2か月の指揮でベスト16に進出し、ベルギーをあと一歩のところまで追いつめたのだ。



 これらの結果を“たまたま”と言えるだろうか。


 大会前1か月のチーム大手術は岡田監督にしかできないだろうし、西野監督もチームの問題点をいち早く見つけて改善し、結果を出した。もちろんそこに至るには前監督やそれまでの積み重ねがあるからだが、W杯で結果を出すことだけを考えれば同じ監督が4年間指揮する必要性は感じられない。もはや4年かけて1人の監督が選手に手取り足取り教える時代ではなく、極端な話、W杯だけは選手をよく知り、大胆な采配を振ることができる監督に任せてもいいぐらいだ。


1年ずつ3人の監督に任せるという改革案


 では、どうすべきか。


 1年ずつ3人の監督に任せるのはどうだろうか。


 選手だけではなく、監督も競わせ、結果を見て判断するのだ。


 そのメリットは大きい。


 選手は1年ごとに監督が変わるのでいろんな戦術を学べるし、代表入りのチャンスが増える。そうなればモチベーションが上がるだろうし、代表に選ばれて活躍する選手が増えれば全体の層も厚くなる。選手は常に緊張感にさらされるが、チーム内で競争していくことは、チームにとって絶対的に必要だ。監督もプレッシャーがかかるがいい緊張感の中で仕事ができるし、中だるみやマンネリはなくなる。


 デメリットとしてはコンビネーションや戦術が十分に浸透しないなどの問題が生じるかもしれない。1年間では短く、評価しにくいと思う人もいるだろう。


 だが、果たしてそうだろうか。



「監督を決める試合」をやってはどうだろう


 能力がある監督であれば、時間が少ない中でも自分のやり方を通して結果を出すだろうし、少なくともその方向性は見せてくれるだろう。実際、トルシエは世代別だがわずか2カ月の指導でチームを99年ナイジェリアワールドユース準優勝に導いた。自分のカラーを出せない監督、チームに何か変化を見せられない監督は、2年やってもきっと何も変わらない。そういう監督は選手にとっても物足りない。


 監督の最終決定は、対戦相手やメンバー編成やそのスタイルの好みに関係なく、年間勝率1位がW杯の指揮権を得る。ただ、3人の勝率が僅差、あるいは並ぶ可能性があるので、総仕上げとしてラストマッチを行い、その内容と結果で最終判断をする。


 その試合は非常に大きな注目を集めることになるだろう。



 W杯に出場する選手を決める試合ではなく、監督を決める試合は、日本サッカー史上初めてだろうし、世界にもない試みだ。監督には相当のプレッシャーがかかるだろうが、それを乗り越えた人こそW杯を指揮する監督に値する。


 突飛な案だと思うかもしれないが、このくらい思い切ってやってもいいのではないか。


マラソンの改革に学べ


 日本陸上界は、長距離(マラソン)の低迷を脱するためにMGCを実施することで今、大きな盛り上がりを見せている。実力的には世界にはまだ及ばないが選手の力とモチベーションを上げた。その結果、大迫傑らスター性を持った実力のある選手が出てきて、マラソンを含む長距離ランナーの底上げに成功しつつあり、さらに日本中にマラソンへの関心を深めた。これは日本独自の東京五輪に出場するマラソン選手の選考方法だが学ぶべきところは大きい。


 日本代表は、アジアカップでベースを作ったチームをさらに進化させるための第2ステージに入った。この先、森保一監督が日本代表をどのように成長させていくのかは分からないが、日本のサッカー界もMGCを監督選考試合に置き換えて考えるなど、監督の新たな選考方法などの準備はしておくべきだろう。先鋭的な案が上がっても前例がないとか、リスクが大きいという理由で日の目を見ないかもしれないが、一番最悪なのは何かが起こった時、“何もない”ということだ。



(佐藤 俊)

文春オンライン

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