抗がん剤の副作用で心肺停止寸前になった宮川花子。神妙な顔の医者が告げた、大助からのまさかの伝言は「オリックスが…」【2024年下半期ベスト】
2025年3月24日(月)12時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
2024年下半期(7月〜12月)に配信したものから、いま読み直したい「ベスト記事」をお届けします。(初公開日:2024年7月24日)
******
夫婦漫才コンビの宮川大助・花子さんは、2024年11月にコンビ結成から45年を迎えます。妻・花子さんは2019年、血液のがん「多発性骨髄腫」と診断され、現在も闘病中。夫・大助さんは、ご自身も腰の痛みを抱えながら、花子さんを懸命に支え続けています。そんな大助さんに対し、花子さんは「どれだけ深刻なときでも、あの人といると笑ってしまう」と語っていて——。今回は、お二人の闘病・介護の日々が綴られた著書『なにわ介護男子』から一部引用、再編集してお届けします。
* * * * * * *
心肺停止寸前。「花子、がんばれ!」
2022年10月29日のこと。
ベッドに横になっていると、ものすごく胸が苦しいんです。
大助くんに頼んで車椅子に乗せてもらいました。
不思議なことにストーブの前に座っていると、胸が少しスーッとして「あれ? 大丈夫かな」と。
理屈はわかりませんが、空気が温もってスチーム状になり、吸い込みやすくなるんでしょうか。
でも、またベッドに横になると苦しい。耐えられないくらい苦しい。
まったく息ができず、海の底で溺れ死にしそうな感じです。
私が呼吸困難に陥っている様子を見て、大助くんが「これは、あかん」と慌てて救急車を呼んでくれました。
深刻な状態
救急車に乗るなんて初めてのことです。
救急隊員の方々が家に来たところまではわかっていましたが、それからの記憶はまったくありません。
『なにわ介護男子』(著:宮川大助・花子/主婦の友社)
のちに聞いた話だと、一緒に乗り込んだ大助くんは、私の手をギューッと握り、「花子、がんばれ! 花子、がんばれ!」と大声で励まし続けていたそうです。
その声が救急車のスピーカーから外にガンガン響いていたというんですから、えらいことです。
折しも、統一地方選挙に向けた選挙活動の真っ最中。
私が立候補していると勘違いした人もいたんでしょう。
開票してみたら「宮川花子」に3票入っていたそうです(笑)。
<イラスト:すぎやまえみこ 『なにわ介護男子』より>
というのは、のちに作った漫才のネタですが、大助くんが叫んだのはほんまの話。
嫁が抗がん剤の副作用で肺に水がたまり、死にかけていたんですから、動転するのも無理はありません。
奈良県立医科大学附属病院に担ぎ込まれたときは、心肺停止寸前・意識不明という、これ以上ないほど深刻な状態でした。
毎日病院へ
目を覚ましたのは3日後。
気がつくと、集中治療室(ICU)のベッドの上でした。
当時は、コロナウイルス感染予防のために家族との面会は一切禁止です。
それがわかっているのに大助くんは毎日、病院にやってきては、居ても立ってもいられない様子でウロウロしていたそうなんです。
見かねた先生が「花子さんに伝言があれば伺いますよ」と声をかけてくださったみたい。
大助くん、うれしかったんでしょうね。
メッセージを預けて、ようやく安心して帰っていったそうです。
大助くんの伝言
その先生がICUに来て、「大助さんから、ご伝言を預かりました」と神妙な顔でおっしゃるから、何かあったのかとドキドキしながら「はい、お願いします」と言うと、「オリックスが優勝したよ」。
は?
確かに救急搬送されるまで二人で日本シリーズのヤクルト対オリックス戦を見てました。
見てましたけど、心肺停止の状態で救急搬送され、生きるか死ぬかをさまよって、ようやく意識が戻ったばかりの嫁にそんなこと言います?
それも毎日病院に通ってきて、なんとか会えないかとウロウロして。
後日、「なんであんなこと言ったん?」と聞いたら、まじめな顔で「気になっているやろうから、ちゃんと教えておいたほうがええと思って」ですって。
おかしいでしょう。
どれだけ深刻なときでも、あの人といると笑ってしまうんです。
※本稿は、『なにわ介護男子』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
関連記事(外部サイト)
- 闘病中の宮川花子が伝えたい<がんとつきあう難しさ>。「SNSで見かける投げやりな投稿。痛いほどわかるけど、私が今生きていられるのは…」
- 宮川花子 右足が動かなくなりほぼ寝たきりに。落ち込むなかで大助が渾身の下ネタを…「彼のおもしろいところに救われてきた」
- 宮川花子「介護施設に入る」と大助に伝えようとしたことに猛省。「こんなに尽くしてくれているのに、肝心の私が逃げてどうする」
- 宮川大助×宮川花子「多発性骨髄腫、余命1週間からの闘い。3年も頑張れたのが奇跡」「夫婦がこんだけ続いてるのも奇跡や」
- 宮川大助×宮川花子「余命1週間からの闘い。嫁はんが元気になったら、センターマイクに戻りたい」「慌てず焦らず〈お礼漫才〉に向け、今日を明日を頑張ります」