来年恩赦の可能性も… 収監中の死刑囚の心理に与える影響は

3月24日(土)7時0分 NEWSポストセブン

「恩赦検討」が報じられた(毎日新聞2017年8月13日付)

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「恩赦」は、恩赦法で大赦、特赦、減刑、刑の執行免除、復権の5つが規定されている。国家的慶事などの際には、政令で恩赦の対象となる刑の種類などの要件を定め、実施される。2019年5月に控える新天皇即位と改元にあたって、戦後13回目となる恩赦が行われる可能性がある。だとすれば「恩赦」の存在は、収監中の死刑囚の心理にどのような“揺らぎ”を与えているのか。(文中一部敬称略)


 現在、確定死刑囚の数は122人となっている。ノンフィクション作家の斎藤充功氏は、2007年に確定死刑囚となった小田島鐵男との面会を繰り返した。


 小田島は59歳だった2002年、共犯者と千葉県松戸市のマブチモーター社長宅に宅配業者を装って侵入し、社長の妻と娘を殺害。現金約250万円と貴金属を奪い、逃走の際には社長宅に放火した。


 小田島は16歳で少年院を出院して以来、マブチモーター社長宅殺人放火事件を起こすまで計8度も日本各地の刑務所に入所と出所を繰り返していた。


 死刑が確定した後、斎藤氏のもとに届く手紙には時折、小田島の懺悔が綴られていた。


〈人の命を奪った者に、償いはありません。(中略)私が呼吸し、食べ、眠る──生き続けていること自体が、被害者に対する冒涜のような気がします〉


 そんな小田島に、斎藤氏は一度だけ「恩赦」の話題を振ったことがある。すると、「俺のように死刑を確定させて執行を待つ身には、恩赦なんて考えられません」と語ったという。


 その小田島は昨年初めに食道がんに冒されていることが発覚し、同年9月に74歳で獄中死した。


「『治療に金をかける必要なんてないんです』と語り、痛み止めの薬だけで耐えていました。苦痛に耐えることが被害者遺族に対する贖罪だったのでしょう。最期は枯れ木のようにやせ細っていました」(斎藤氏)


 一言に“死刑を免れる恩赦”と言っても、受け止める関係者の胸中は単純ではないのだ。


 昨年10月、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』が重犯罪者の息子のインタビューを放送し、話題となった。その事件とは、2002年に発覚した北九州市連続監禁殺人事件だ。内縁関係にあった松永太死刑囚と緒方純子受刑者が、マンションの一室で7人を殺害。同番組チーフプロデューサーの張江泰之氏は、両親の「恩赦」の可能性について息子に尋ねた際のことをこう証言する。


「しばらく間を置き『ごめん、その答えには答えたくない』と言われてしまいました。おそらく、恩赦でどんなことが起きるのかを考えること自体が怖いんだと思います」


◆筧千佐子被告の考え


 恩赦についての考えも関係者が置かれた立場によって変わる。


 今も無実を訴えて再審請求を続けているある死刑囚に、関係者が恩赦を求める意志がないかを聞いたところ、こんな答え方だったという。


「俺は無実なので、恩赦を考えるはずがない。だいたい、死刑囚が恩赦になるなんてないだろう。もうちょっとすれば今年の秋にも無実が証明されるはずだ……」


 恩赦の審議対象となるのは刑が確定している受刑者だけであり、死刑判決を受けて控訴・上告中の場合は対象外とされる。斎藤氏は言う。


「昭和天皇の容態が急変した際には、拘置所や刑務所で恩赦にまつわる噂が広まり、下級審で死刑判決を受けながらも裁判を続けていた被告4人が恩赦に期待して、控訴、上告を取り下げて死刑を確定させたことがあった。しかし、4人とも対象にはならず、刑は執行されました」


 昨年11月に京都地裁で死刑判決が下されたのが、近畿3府県において夫や内縁男性ら4人に青酸化合物を飲ませて殺人と強盗殺人未遂の罪に問われている筧千佐子被告だ。即日控訴した彼女を取材するノンフィクションライターの小野一光氏は、3月上旬に京都拘置所で面会した際、彼女に恩赦を求める可能性について質問した。


「恩赦は知ってるけど、私にあるとは思っていない」と前置きした上で、筧被告はこう続けたという。


「もし信頼する弁護士がいて、恩赦の可能性があるというのなら、考える。親にもらった命やから。ただ……軽い罪をやった人に恩赦があるのは分かるけど、私みたいに人を殺めてたら、恩赦はないでしょう」


 多くの人の運命を左右する“平成最後の日”は、1年後に迫っている。


◆文/斎藤充功(ノンフィクション作家)と本誌取材班


●さいとう・みちのり/1941年東京都出身。近現代史や凶悪事件を中心に取材、執筆活動を続ける。『3650 死刑囚小田島鐵男“モンスター”と呼ばれた殺人者との10年間』(ミリオン出版)など著書多数。新著に『恩赦と死刑囚』(洋泉社新書y)がある。


※週刊ポスト2018年3月23・30日号

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