指原莉乃 AKB卒業を前にバラドルとして「完全体」に進化

3月24日(日)16時0分 NEWSポストセブン

 AKBグループ総選挙で3連覇を含む計4回の1位を獲得した指原莉乃が、4月28日の横浜スタジアム卒業コンサートをもってグループから卒業をする。これまで同グループの人気者たちが卒業するときには、その後の転身について話題になることが多かったが、指原の場合は少し様子が違う。「このまま活躍が続くのだろう」という安心感を視聴者が共有しているような雰囲気がある。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、『指原莉乃&ブラマヨの恋するサイテー男総選挙』(AbemaTV)で指原が見せる、テレビタレントとしての完全体ぶりについて考えた。


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 今年4月、指原莉乃がHKT48を卒業する。過去、AKBグループから多くの有名メンバーが巣立っていった。その度に「卒業後の動向」が注目されたが、指原の場合はそういったことが一切なく……。今後もバラエティの世界で活躍していくことに間違いない。


 グループでの活動中に芸能界で自分のポジションを確保し、卒業を迎える。誰しもが望む理想の卒業を叶えたのは、歴代で指原のみ。言わずもがな、持ち前のトーク力ありきの結果である。


 AKB48のその他大勢からバラエティ担当へ、ひな壇で結果を残し、今ではMCに成り上がり。数多くの番組を取り仕切る指原。一応アイドルなので、優良な内容のバラエティを担当している。その中で唯一の例外がある。


 それが現在、AbemaTVで配信中の『指原莉乃&ブラマヨの恋するサイテー男総選挙』。タイトルそのままにサイテーな内容をお届けしている。


 この番組で注視されるのが無名タレント、サイテー男の面々。ホスト、YouTuber、芸人、俳優と職種は異なるが皆一様に腰の軽い“悪い男”達。そんなサイテー男の恋愛事情、テクニックを聞き出すといった内容。番組の公式説明欄には、女性が“悪い男”に引っ掛からないために観る「恋の参考書」とも記載される。


 有名タレントと無名タレントが共演する番組は、司会席とひな壇の区分が明確であることが多い。対して『サイテー男総選挙』のポジショニングは異質だ。指原、ブラマヨもサイテー男と共に車座になる。目線の高さを合わせ、出演者全員が向かい合うことにより、誰しもが自由闊達に発言できる空気感を演出している。その効果もあってか、繰り返される男女関係の猥談は毎度フィーバー。明け透けになったゆえ、とてつもないゲスさが漏れてくる。


 AbemaTVが配信する番組のコンプライアンスは地上波の民放と比べて明らかに低い。その中でも特に『恋するサイテー男総選挙』の下ネタ濃度は高い。清純な人が観れば、ショックで閉口するレベル。下世話な僕ですら「これ笑えるのか?」と疑いたくなる描写が多々見受けられた。サイテー男はファンキーでユニークな面々。しかし、どこかにちょっとした怖さがある。


 そんな荒れたバラエティ番組という名の戦場に唯一いる女性が指原。常時、上下左右から飛んでくる下ネタを調理していく。


 ブラマヨを含めて『恋するサイテー男総選挙』に出演する12名の男性陣は皆ボンクラで。理性を持つのは指原のみといった構図。毎度「浮気の定義とは?」といった男女関係に沿ったトークが展開されるなか、指原は「〇〇さんはいかがですか?」と丁寧に話を振っていく。


 先ほど記述した番組説明では「恋の参考書」と書いた。確かに、初期はサイテー男の回答を反面教師とし、学んでいく側面が強かったと思う。しかし、回を重ねていくうちに番組の様相が変化していく。いつの間にか番組がホストクラブみたいになっていた。サイテー男が指原に対して白旗を上げ始めたのだ。過去、多くの女性を泣かせてきたサイテーな面々も指原姫の前では道化になる。誰しもが自分のコメントに対する、姫の反応に一喜一憂。サイテー男の人間性も徐々に漏れ始めてきた。


 長く売れ続けるタレントに決まったキャラクターはいらない。ただシンプルに“面白い人”と捉えられるのが良い。 今でこそサイテー男ですら手なずける指原も、当初は"ヘタレキャラ"として世の中に現れた。「恋愛したことはないです! 男の人が怖くて特にイケメンが苦手です!」と男性不信を猛烈アピールし、恋愛禁止条例を地でいくキャラでファンを増やした。


 ところが2012年、スキャンダルによって嘘がバレる。だが、しぶとい指原はそれに乗じて“ぶっちゃけキャラ”に転向。「アイドルなのに……」を前口上にバラエティの世界を席巻した。


 そして、今となっては特定のキャラがないタレントに進化。コメントが上手な“面白い人”として世間に認知されている。


 指原はキャラクターで番組に出演してきたなかで、未来を見据えてテクニックを獲得してきたのだろう。バラエティ界において、理想の進化を遂げた人と云える。


 触れ方を間違えば火傷をする危うい番組『恋するサイテー男総選挙』。際立つテクニックが指原を守る。「芸は身を助ける」、絶妙なバランス感覚で立ち回った末にサイテー男すら魅了した。


 まず、逃げ方がうまい。女性が声を発して読むことがはばかられるテーマの場合、そんな時は「ちょっと読めない字が並んでますけど……」と音読を避ける。夜の情事に関して意見を言う際も「私は」という主語は使用せず「女の人は」といった総論で語る。


 距離を詰めてくるサイテー男に関しても上手に逃げる。「指原さんもそうですよね!」と相手が近づこうものなら「違います!」と手を左右に振りつつ言葉をシャットダウン。場合によっては伏し目がちにし、ワザと間を空けることも。自らが発言する時は言葉を吟味する。ただし、間を作らないために必ず「うーん」と声を出しつつ、目を上に向ける。


 指原は相槌とまばたきの数が異常に多い。身振り手振りも派手だ。発言するサイテー男からすれば、自らの意見が響いているように映る(これは短時間でファンを満足させる握手会で得たテクニックだと思う)。視聴者はゲスな会話にも真摯に取り組む姿に好感を抱く。


『恋するサイテー男総選挙』の指原を観て、その手腕に脱帽しっぱなし。逐一面白く、ソツもスキもない。“ヘタレキャラ”が第1形態だとすれば、 “ぶっちゃけキャラ”は第2形態。今の指原は“面白い人”で完全体へと仕上がっている。『ドラゴンボール』のセルがごとく。


 心技体、バラドルの全てを兼ね備えた完全体・指原莉乃。その春は今後も長いこと続くに違いない。


●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週1度開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。テレビっ子として育ち、ネットテレビっ子に成長した。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)

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