“女だから”にあがいた柴門ふみ、還暦過ぎたら自由に生きる

3月25日(日)7時0分 NEWSポストセブン

還暦過ぎたら「自由に」と語る柴門ふみさん

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 かつての女性像は「大学卒業したら地元に戻って当たり前、結婚したら寿退社、子育てに専念し家族を支える」——こんな“女だから”といった風潮があったが、還暦を過ぎたら自由に生きたいと語るのは漫画家の柴門ふみさんだ。柴門さんが考える還暦後の人生とは——。



 還暦を迎えたのは2017年の1月です。『東京ラブストーリー〜After 25 years〜』(1988年から連載された『東京ラブストーリー』の25年後を描いた作品、小学館)の単行本化を進めていて、とても慌ただしく、還暦だと意識することもなく過ぎていってしまいました。


 むしろ、その前の数年間のほうが「あぁ、もうすぐ60才か…」と思っていましたね。大台というのは、40のときも50のときも、迎えるまでは抵抗するのですが、いざなってしまうとなんでもないんです(笑い)。


“解放された、自由になった”といいう気持ちは、還暦以前、子育てが一区切りしたときに強く感じました。下の子が大学に進学して、就職した数年前、「肩の荷が下りたな」と。同世代の友人の話を聞くと、還暦=定年ということで、社会からリタイアを宣告されているようだと言う人は多いですね。いずれにしても、“責任を果たすべきものがなくなる”ということなんだと思います。子供も独立、ダンナも定年でもう仕事に行く前の朝食作りや身支度なんか気にすることがないんですから。


 女性にとって体がラクになる節目でもあると思います。閉経して、更年期も過ぎて、体の悩みからも解放される。私自身、ホットフラッシュなど、いわゆる更年期障害が重かったので、それがなくなったことはものすごい開放感でした。ただ、視力は落ちるし、体力や集中力も衰えるなど新たな悩みは尽きませんから、下り坂で落ち着くという感じですが(笑い)。


『女性セブン』で『恋する母たち』の連載を始めたのは、ちょうど還暦を迎えた昨年1月なんです。それまで男性誌でばかり連載してきたので、女性週刊誌は初体験だったのですが、すごくおもしろい。


「妻の不倫」とか「ママ友」とか男性誌では絶対にウケないと遠慮していたテーマが描けることはとても楽しいです。還暦で生まれ変わったというか、漫画家としてリスタートを切ったような気持ちです。


『恋母』には、バリキャリママ、セレブ専業妻、シングルマザー、と多様な40代女性が登場しますが、私が大学を卒業する頃は正社員として就職できる女性はほとんど皆無で、就職したとしても結婚して寿退社が当然の感覚でした。


 男女共同参画社会なんて言葉もなく、「女なんだから」という決め台詞が飛び交っていた時代。「女なんだから早く結婚を」「妻なんだから夫を支えて当たり前」「母なんだから子育てに専念」というのがすり込まれてきた。


◆あぁ私はなんて駄目な母親なんだろう、と常に思っていた


 今でこそ、結婚しない、子供を持たないなどライフスタイルの多様化は当たり前ですが、そうではない時代に女として自分の在り方に悩み、苦しんだことも多い世代だと思います。



 多くの友人たちは、結婚し専業主婦になり子育てに追われ、舅・姑の面倒を見ています。社会に出たいという思いを強く持ちながら家庭に入った人も多く、いろいろな葛藤や苦労があったんでしょう、今になって「私は人生やり直せるなら結婚は絶対にしない」って言う人もいますよ。


 四国の田舎出身の私も、専業主婦の母に育てられ、大学こそ東京に出ましたが、卒業したら地元でお見合い、という人生になんの疑いもなかった。巡り合わせで漫画家になり、漫画家の妻になり、2人の子供を産みましたが、その子育て中も、「あぁ私はなんて駄目な母親なんだろう」と常に思っていたんです。


 私の思う母親像は、子供が帰ってきたら家にいて、15時のおやつを出して…という感じでしたから。なんとか“自分もちゃんとやっているんだ”と言い訳できるように、朝食と夕食は一緒に食べる、お弁当は作る、というルールを決めていて、それだけはやり通した。漫画も子供が生まれて、10時から17時で描くと決めたんです。それでも、“漫画描いてて悪いなぁ”って思っていました。


 でも、今はまったく思ってません(笑い)。子供が独立したら、“呪縛”からスッキリ解き放たれた感じ。今じゃもう、“やるだけのことはやった、あれ以上はやれなかった”って思ってます。


 だから子育てに後悔はない。あるとしたら語学を身につけさせなかったこと。孫には絶対させます(笑い)。


 60年生きていると、「え〜っ!?」と思うようなことを何度か経験します。家族や友人との間でもそうですし、東日本大震災などの災害や、地下鉄サリン事件のようなことも。人生100年時代と言ったって、年をとれば、お別れしなければいけない知人も多くなってくる。そうすると、人生何が起こるか——病気やけがをするかもしれない、健康でいても事故に遭うかもしれない——わからない、そう思える免疫がついてきた。年を重ねていちばんよかったのはそのことかもしれません。


 今はこれまで描きたかったテーマで漫画を描き、4年前に飼い始めた愛犬と仲よく過ごす日々。夫とはもう人生のパートナーという関係ですし、妻でも母でもなく、自由に、のびのびと生きていこうと思います。


※女性セブン2018年3月29日・4月5日号

NEWSポストセブン

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