キャサリン妃はなぜ、がん公表を余儀なくされたのか。ビデオメッセージ公開後、揶揄していた人からは謝罪、一方で世界中からはお見舞いの言葉が【2024年下半期ベスト】
2025年3月29日(土)12時30分 婦人公論.jp
妃は、自身で書いたメッセージを穏やかな口調で述べた。隣に座ると申し出たウィリアム皇太子には一人で大丈夫、と断ったという(写真提供:Kensington Palace/PA Images/アフロ)
2024年下半期(7月〜12月)に配信したものから、いま読み直したい「ベスト記事」をお届けします。(初公開日:2024年8月4日)
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2024年3月、英王室のキャサリン皇太子妃は、自身ががん患者であると発表した。それ以前にSNS上で臆測が広がっていたことを受け、一定の情報を明らかにして家族のプライバシーを守ろうとした妃には、同情と心配の声が寄せられている。チャールズ国王もがん闘病中であり、ヘンリー王子は王室を離脱……。国民から敬愛されたエリザベス女王が22年に死去して以降、王室は文字通り、人手不足に陥っている。このまま国民の王室離れは加速していくのだろうか
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腹部の手術を受けたとの発表から
英王室のキャサリン皇太子妃(42歳)はがんの治療中である。妃の元気な姿が最後に見られたのは、2023年12月のクリスマス礼拝の時だった。
ウィリアム皇太子(41歳)、ジョージ王子(10歳)、シャーロット王女(9歳)、ルイ王子(6歳)らと一緒に、穏やかな笑みを浮かべていた。
それが24年1月16日、王室は「キャサリン妃は腹部の手術を受けた。入院は2週間ほどで、その後は自宅療養する」と発表した。
突然のことに世界中に衝撃が走る。病名が明かされなかったので、腹部とは消化器系か婦人科系かと臆測が広がった。
一方、同じ時期に前立腺肥大症の治療を受けたチャールズ国王(75歳)は、その後の検査でがんが発見されたと公表した。英王室でシニアロイヤル(主要な王族)二人が立て続けに入院するのは異例の事態である。
キャサリン妃はスポーツウーマンだった。テニス、ホッケー、スキーと、できないものはない。
3人の子どもの出産に際しても、つわりがきつくて入院したことはあっても、お産自体は軽く、朝方に入院すると数時間後には出産。その日の夕方には赤ちゃんを抱いてカメラの前に立ったことさえあった。
このように妃が健康だったことから、発表された手術や長期療養の内容に国民は疑念を持つようになる。
退院時の妃は、病院の裏口からこっそり迎えの車に乗り、姿を見せることを避けた。「車いすに乗っていたから」「やつれたので、見られたくなかったのだ」とうわさが立ち始めた。
まもなくスペインのテレビ番組で、あるコメンテーターが「妃は人工的に昏睡状態に置かれている」と主張した。
英王室は反論したが、その後は「すでに亡くなった」「王室に殺された」「整形手術が失敗した」と根も葉もないうわさが噴出した。
母の日に公開した子どもとの写真に
3月10日は、イギリスの母の日だ。キャサリン妃は3人の子どもに囲まれた写真を公開した。妃は顔色もよく、子どもたちははじけるような笑顔だった。
穏やかに療養に努めているとアピールしたのだが、まもなく写真加工を指摘される。
最初はシャーロット王女の左袖口が一部欠けていることだったが、次から次へと不自然な箇所が挙げられた。イギリスの『デイリー・メール(オンライン)』は、写真に16ヵ所の赤い丸を付けて加工部分を強調し、ロイター通信など数社が配信を取り消した。
キャサリン妃は、正直が一番として「アマチュア写真家がすることを私もしました」と加工を認めて謝罪した。
しかしそれでも騒動は収まらない。写真では妃の薬指に結婚指輪がなかったことから、ウィリアム皇太子の不倫がささやかれ、相手とされる女性の名前と顔写真が出回り、夫妻の別居、離婚まで臆測が進んだ。
また妃が皇太子と買い物に行く写真が出ると、女性は妃の「そっくりさん」だと言われた。そっくりさんは複数いるが、最も似ているとされる女性がテレビに顔を見せて、その時間帯は「仕事をしていました」とアリバイを主張する事態にもなった。
3月22日午後6時、庭のベンチに座り、がんであると打ち明けるキャサリン妃のビデオメッセージが公開された。
妃は「腹部の手術後の検査でがんが認められ、現在は予防的化学療法を受けている。皆さんに会う日を楽しみにしているが、まずはがん治療に集中したい」と述べると、最後にがんと闘う患者に向けて「あなたは一人ではない」と呼びかけた。
これは、エリザベス女王が、新型コロナウイルスの蔓延により感染者が増加した20年にスピーチ内で用い、国民を鼓舞した言葉だった。
病名を明かす個人的な内容でも、皇太子妃という立場を忘れなかったのだ。メディアなどへの苦情はいっさい口にしなかった。
この後すぐにチャールズ国王が妃の勇気をたたえると、世界中からお見舞いの言葉が殺到。アメリカのバイデン大統領らから、励ましのメッセージが寄せられた。
同時に、これまで妃の長期不在を揶揄したアメリカのタレントなどから謝罪の言葉が聞かれた。アメリカの俳優、ブレイク・ライブリーは、写真加工をからかう自身の投稿を「恥じ入っている。ごめんなさい」と謝罪した。
アメリカのテレビ番組の司会者の中には、番組内でのあてこすりを謝った人もいた。
キャサリン妃の実家ミドルトン家は家族の仲の良さで知られているが、特に弟のジェームズさんがインスタグラムに投稿したお見舞い文には、姉を思う心情があふれていた。
「私たちは家族としていくつもの山を越えてきた。この山も共に乗り越えよう」との簡潔な文言だが、胸が熱くなったと打ち明ける人もいた。
<後編につづく>
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