『べらぼう』市兵衛vs与八の壮絶ダンスバトルに視聴者最注目 第12話画面注視データを分析

2025年3月30日(日)6時0分 マイナビニュース


●滑稽なシーンに高い注目
テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、23日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(総合 毎週日曜20:00〜ほか)の第12話「俄なる『明月余情』」の視聴分析をまとめた。
○「おめえら、俺のあとだろうが!」「あとから出ただろうが!」
最も注目されたのは20時31分で、注目度75.5%。大文字屋市兵衛(伊藤淳史)と若木屋与八(本宮泰風)が、壮絶なダンスバトルを繰り広げるシーンだ。
吉原あげての俄祭りがいよいよ始まった。客の入りは上々だ。仲ノ町通りでは趣向をこらした出し物が次々と披露され、いよいよ市兵衛の出番となった。太鼓が鳴り三味線の音が響くと、白に雀が描かれた奴装束と黄色い笠を持った市兵衛の一団がかけ声を上げながら踊りだした。その中には次郎兵衛(中村蒼)の姿もある。
市兵衛たちの踊りで観客も次第に盛り上がってきたところで、次郎兵衛が何か異変を感じ取った。なんと、後ろに控えているはずの与八率いる一団が前方に現れたのだ。こちらは青い奴装束に白い扇子を手にしている。与八の一団は踊りながら市兵衛たちに向かってきた。このまま互いが進めば、両者はぶつかってしまうだろう。
「おめえら、俺のあとだろうが!」「あとから出ただろうが!」市兵衛のあとに後ろから与八が出てくる取り決めであったが、与八ははじめから守るつもりなどなかったようだ。取り決めを反故にされ怒り心頭の市兵衛をよそに、観客は思わぬ展開にさらなる盛り上がりを見せる。「もうやだ…」争いの苦手な次郎兵衛が、踊りをやめて退散すると、市兵衛と与八以外の踊り手たちもみな、次郎兵衛に続きその場を離れた。市兵衛と与八は、取り残されたことに気づきもせず、いつまでも張り合っている。観客の笑い声に包まれる仲ノ町通りだったが、この2人は明日以降も同じようにやり合うつもりなのだろうか。
○「殴り合いそうな雰囲気だったのに」
注目された理由は、どこか滑稽な市兵衛と与八のダンスバトルに、視聴者の視線が「くぎづけ」になったと考えられる。
俄祭りのアイデアを与八に奪われ怒り心頭の市兵衛と、常日頃から吉原の運営を駿河屋一派に牛耳られ面白くない与八。両者は藤間流、西川流にそれぞれ振付を依頼し、雀踊りで対決することになる。2人の互いへのライバル心は、平沢常富(尾美としのり)の思惑通りいい方向に作用して祭りを大いに活気づけた。
SNSでは、「大文字屋さんと若木屋さんのバチバチがどんどんエスカレートしていくのが面白かった!」「殴り合いそうな雰囲気だったのに、正々堂々と踊り比べするのがいいね」「先頭のボス同士だけ踊りがズレてるの笑える」「吉原を2つに割った大喧嘩の舞台が祭りってのが粋だな」と、本人たちはガチなのにどこか滑稽な本シーンに高い注目が集まった。
今回披露された雀踊りは、編み笠をかぶり、雀の模様の着物を着て、奴(やっこ)の姿で雀の動作をまねて踊る民俗舞踊の一つ。のちに歌舞伎にも取り入れられた。
大文字屋市兵衛は伊勢の出身で、1750(寛延3)年に河岸店で女郎屋を開店する。当初は世話になった親分にちなんで「村田屋」という店だった。経費を節約するため、女郎たちの食事に大量のかぼちゃを買い与えたことから、「加保茶(かぼちゃ)市兵衛」と呼ばれる。そんな経営努力のかいもあってか、2年後の1752(宝暦2)年には京町一丁目に店を移すことができた。しかし、親分ともめたことで暖簾を没収されてしまい、「大文字屋」と屋号を改める。背が低く、頭が大きかったこととあだ名から、「ここに京町大文字屋のかぼちゃとて。その名は市兵衛と申します。せいが低くて、ほんに猿まなこ。かわいいな、かわいいな」と蔑まれるが、これを逆手にとってあえて自ら進んで歌い踊り、店の宣伝に利用したことで歌は吉原だけでなく江戸中で流行し、多大な宣伝効果を得ることができた。
また、園芸好きでもあり、マツバランに斑を入れる工夫をほどこして、「文楼斑(ぶんろうはん)」と名付けた。かぼちゃで身を起した市兵衛だが、なんと戒名は「釈仏妙加保信士(しゃくぶつみょうかぼしんじ)」。とてもインパクトのある戒名だ。
●蔦重&朋誠堂喜三二のゴールデンコンビ誕生
2番目に注目されたのは20時33分で、注目度74.0%。蔦重(横浜流星)と朋誠堂喜三二のゴールデンコンビ誕生に、視聴者の注目が集まったと考えられる。
俄祭りの熱狂をそのまま絵本にするという蔦重の斬新なアイデアは、人気作家・朋誠堂喜三二こと平沢常富の序文を得ることで、完成度と話題性をさらに高めた。常富は青本を出すのはうちだけにしてほしいと鱗形屋から頼まれていたが、絵本の序文ならその義理にも反しない。蔦重の提案の妙と人の口説き方が光る場面でもあった。
SNSでは、「喜三二さんの遊び心のあるキャラ、いいなあ。蔦重はほんとに人たらしだね」「喜三二さんが序文を読み上げる場面、めっちゃ心にしみた」「平沢様、義理堅いいい人だよな。だからこそ吉原でも慕われるんだろうけど」と、常富の人柄を称賛するコメントが多くアップされている。
また、朋誠堂喜三二の正体が明かされたことで、これまでSNSを騒がせた「オーミーを探せ」の答え合わせも行われた。一瞬だけ映ったシーンも多く、かなりの高難易度の回もあった。常富が松葉屋で平賀源内にお礼をしたのが1773(安永2)年なので、蔦重は常富とかれこれ4年前からニアミスを繰り返していたことになる。
『明月余情』は、吉原の「俄祭り」を題材に、踊る芸人の姿や芝居に熱狂する人々の様子が全3編に渡っていきいきと描かれている。墨摺りだったので低価格で、庶民も気軽に購入ができた。『青楼美人合姿鏡』の反省が生かされている。
平沢常富は、出羽・久保田藩(現在の秋田県)の定府藩士で江戸留守居役を務めていた。定府とは、参勤交代を行わずに江戸に定住する者のこと。ちなみに久保田藩は藩主も定府だった。江戸留守居役は、現在でいう外交官のような役割。江戸の屋敷の管理や、幕府の情報収集、他の藩の江戸留守居役と情報交換などを行う重要な役割を担っていた。常富は情報収集の一環で若いころから吉原に通い、やがて「宝暦の色男」と呼ばれるようになる。
平沢常富・朋誠堂喜三二を演じる尾美としのりは、ホリプロ・ブッキング・エージェンシーに所属する東京都出身の59歳。幼少のころから子役としてTVドラマや映画に出演してきた。大河ドラマは1979年『草燃える』、01年『北条時宗』、12年『平清盛』、17年『おんな城主直虎』、20年『麒麟がくる』に続いて6度目の出演となる。蔦重にとって最高の協力者といわれる常富の今後の活躍に目が離せない。
○「二大悪所」で育った2人が強いシンパシー
このシーンは、富本節の直伝で『雛形若菜初模様』のリベンジを果たそうとする蔦重が、再度、孫兵衛に巻き返しを図られるのではないかとヒヤヒヤした視聴者の関心が集まったと考えられる。
孫兵衛は富本節の三味線方・名見崎徳治(中野英樹)に探りを入れ、午之助の二代目・富本豊前太夫襲名と同時に富本節の直伝本を出版しようと画策していた。ことは順調に進んでいたが、午之助の信頼をあっという間に得た蔦重にすべてを持っていかれた。
SNSでは、「プライドと銭勘定の本屋の親父たちと比べて太夫の男気が際立つね。見ていて気持ちいい」「馬面太夫の頼もしき男らしさに惚れそうです!」と、利害を超えた蔦重と午之助の関係に喝采が送られている。江戸時代には吉原と芝居町は「二大悪所」と呼ばれていた。そんな「二大悪所」で育った2人は互いに強いシンパシーを感じたのかもしれない。
午之助は11歳で父を亡くしたが、史実では父の弟子である初代富本斎宮太夫(とみもといつきだゆう)の後見のもと修を業重ね、1766(明和3)年にわずか13歳のときに中村座で『文月笹一夜・下の巻』で初舞台を迎えた。富本節は午之助の父・初代富本豊前太夫が1748(寛延元)年に、常磐津節(ときわずぶし)から分かれて興した流派。常磐津節は歌舞伎舞踊の伴奏音楽として発展し、時代物に長け、硬派で正統派の性格が色濃く、リズムやテンポに極端な変化を加えないのが特徴だ。
一方、富本節は常磐津節に比べて、優雅かつ派手で拍子が明確だった。劇場に向いており、品格があったため大名や富豪に好まれた。二代目富本豊前太夫の人気と活躍で、全盛期を迎えるがその後、富本節から清元節が分派され、人気を奪われるかたちで衰退していった。1983年に十一代目富本豊前太夫が亡くなり、以降その名跡も途絶えている。
●うつせみと小田新之助、けん騒に紛れて…
3番目に注目されたシーンは20時39分で、注目度73.5%。うつせみ(小野花梨)と小田新之助(井之脇海)が、けん騒に紛れて2人で消えていくシーンだ。
もはや名物となりつつある市兵衛と与八の雀踊り。最終日の今日、宿敵であるはずの2人がとった思いがけない行動に、集まった見物客は沸き立っていた。そんな様子をうつせみは松の井(久保田紗友)とともに駿河屋の2階から見ていたが、祭り好きの豪商(林家三平)に、うつせみと松の井は外へと連れ出された。
表へ出て、仲ノ町通りにあふれる熱気を肌に感じるうつせみ。そのうつせみの眼前には他でもない新之助がいた。新之助はまっすぐにうつせみを見つめている。とまどううつせみの背を誰かが強く押した。松の井だった。「祭りに神隠しは付き物でござんす。お幸せに」松の井は優しくそう言って、うつせみに顔を隠すための笠を手渡す。松の井の言葉にはっとしたうつせみは、新之助のもとへ走り出した。そのまま2人は連れ添って、大門の外へと消えていってしまった。
○『土スタ』での「期待して」の答えが明らかに
ここは、うつせみと新之助の再会に視聴者の関心が集まったと考えられる。
足抜けが失敗し疎遠となっていた2人だが、お互いの相手への想いは色あせることはなかったようだ。うつせみは自由になった日に備えて蔦重から借りた本で勉強を重ね、新之助は少しずつだがお金を貯めていた。そんな2人を後押ししたのは松葉屋の筆頭花魁・松の井だった。普段はツンとしている松の井だが、うつせみを送り出した際に垣間見せた優しい表情が非常に印象的だった。しかし、再び足抜けを図るとは想定外だった。
SNSでは、「うつせみちゃんと新之助くん、ここまで我慢したんだから幸せになってもいいよね」「新之助とうつせみが人ごみに消える姿がジーンときた」と、2人を見守る声が集まっている。3月8日に放送された『土スタ』での、井之脇海と小野花梨の「期待して」というコメントの答えが明らかになった。しかし、「このドラマが鎌倉殿だったら、次回の冒頭は2人の死体が川に捨てられているシーンになりそう」「ふたりには幸せになってほしいけど、うまくいかないとふたりで…ということもあり得るのか」と、2人の行く末を案じるコメントもある。このようなバッドエンドにならないように願うばかりだ。
そして、今回のMVPである松の井にも多くの投稿が寄せられている。「松の井花魁、べらぼうに粋でした」「それまで笑っていたのに、最後の松の井姐さんに泣かされてしまった」「松の井花魁がカッコよすぎてほれた」と、松の井の粋な言動に称賛が集まった。
また、2人が足抜けできるほどのけん騒を生み出した市兵衛と与八だが、この最終日にはなんと、お互いの健闘をたたえ笠と扇子を交換し、一緒に踊り出すというトンデモ展開に。「殴り合った後の夕日の河原かな?」「ユニフォーム交換みたいにさわやかに笠と扇子を交換したのは笑った」「お互いに認め合って一緒に踊るのは、まさに粋だねえ」と、2人のスポーツマンシップも称賛されており、何かと話題の尽きない俄祭りとなった。
●定信が青本に夢中、源内はエレキテルを熱く宣伝
第12話「俄なる『明月余情』」では1777(安永6)年の様子が描かれた。
俄祭りというアイデアを若木屋与八に横取りされた大文字屋市兵衛は、敵がい心をあらわにし、若木屋陣営に対抗するため「宝暦の色男」の異名を持つ平沢常富をブレーンに迎え祭りの主導権を取り返そうと画策する。そして蔦重は、平賀源内(安田顕)から平沢常富こそが戯作者・朋誠堂喜三二と知らされると常富に青本の執筆を依頼するが、鱗形屋との板挟みにあった常富に蔦重は距離を置かれてしまう。30日間におよぶ俄祭りを舞台に、さまざまな人物の思惑が交差し、そしてそれぞれのドラマが生まれた。
注目度トップ3以外の見どころとしては、前回のラストでは部下を怒鳴り散らしていた松平定信(寺田心)が、こともあろうに青本に夢中になっているシーンが挙げられる。家臣に本の内容を解説されている定信はこれまでに見たことのない笑顔を見せていた。
SNSでは、「遊郭言葉も勉学と思って夢中になる松平定信って、ほんとに勤勉なんだな」「前回は貶してた青本にのめり込んでる松平定信が思ったよりチョロかわいい」と、定信のまさかの手のひら返しにコメントが集まった。
そして、エレキテルを熱く宣伝する平賀源内のシーンも印象に残った。前回ではプロトタイプを披露していたが、すでに量産化にこぎつけ販売のフェイズに入っていた。さすがのスピード感である。エレキテルは静電気を発生させる摩擦起電器のことで、電気応用治療器や見世物として使われていた。史実では、源内は1770(明和7)年に破損したエレキテルを古道具屋もしくはオランダ通詞の西善三郎から入手したと伝わっている。
また、なりふり構わず平沢常富に蔦重に協力しないように一家総出で懇願する鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)の姿も印象に残った。少しふざけているようにも見えたが、結果オーライと言ったところだろうか。
俄祭りの開催に人一倍気合いが入っていた次郎兵衛にも注目が集まっている。ウキウキで大荷物を抱え、演目の開会を宣言したり、市兵衛率いる雀踊りに参加したりと八面六臂の大活躍だった。SNSでは、「今日も次郎兵衛義兄さんがかわいかった!」「芸能大好きな次郎兵衛義兄さん、イキイキしていたな」と、次郎兵衛兄さんの人気は週ごとに高まりつつあるようだ。
きょう30日に放送される第13話「お江戸揺るがす座頭金」では、鱗形屋が再び偽板の罪で捕らえられる。また、江戸城では座頭金の実態の調査を田沼意次(渡辺謙)が長谷川平蔵(中村隼人)に命じる。
REVISIO 独自開発した人体認識センサー搭載の調査機器を一般家庭のテレビに設置し、「テレビの前にいる人は誰で、その人が画面をきちんと見ているか」がわかる視聴データを取得。広告主・広告会社・放送局など国内累計200社以上のクライアントに視聴分析サービスを提供している。本記事で使用した指標「注目度」は、テレビの前にいる人のうち、画面に視線を向けていた人の割合を表したもので、シーンにくぎづけになっている度合いを示す。 この著者の記事一覧はこちら

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