テレ東ドラマのネット好感度が高い理由 制作部CPが解説

3月30日(土)16時0分 NEWSポストセブン

 漫画原作のドラマ化というと、ネットでの反応は否定一色になりがち。ところが4月にスタートする『きのう何食べた?』(原作・よしながふみ)については、SNSで「早く観たい」「神キャスティング」など好意的なコメントが多く見られる。今回に限らず、テレビ東京のドラマに対するネット好感度は高い。なぜ“テレ東のドラマ”は好感度が高いのか? テレビ東京ドラマ制作部チーフプロデューサー・阿部真士氏に話を聞いた。


 * * *


◆違うことをしていくしか


——テレビ東京のドラマに対して好意的な意見が多いが、どう受け止めているのか?


阿部:実際はもっと、批判があってもいいと思うんですよね。あまり好意的すぎるのも、ちょっと気持ち悪いじゃないですか。でも批判的なコメントはもちろんゼロではないので、それを見るとものすごい傷つくんですけど(笑)。ただ、それよりも多くの人たちが好意的な声を寄せてくださる。


 なぜそうなのかはわかりませんが、企画としては全プロデューサーが「他局ではできないことをやろう」っていうのはかなり前、「ドラマ24」枠(※2005年から続く毎週金曜深夜の連続ドラマ)が立ち上げられた時から言っているので、それはずーっと根強くあると思います。プラス企画自体を“置きに行かない”というか、無難な形に置きに行っちゃうと埋もれてしまう…そうなると「うちでやる意味って、なくない?」って。


 そもそも予算も少ないし、人手も少ない中、他局と同じようなことをすると、結果、クオリティは見栄えも含めて劣ってしまうので、だったらやっぱり「違うことをしていくしか、僕らの生きる道はない」という意識はすごいあるんですよね。


——視聴者の反響も好意的だが、人気俳優や監督が深夜枠にもかかわらず参加することも目立つ。


阿部:「おもしろいことをやらせてくれるから」じゃないですかね。もちろんテレビメディアで、マスに向けてやっているから、完全に手放しで好きにやっていいってわけにはいかないですが。例えば、『みんな!エスパーだよ!』(2013年4〜7月)でも園(子温)監督に「ここまではOKですけど、ここからは難しいです」って戦い(笑)もありましたけど、そこはみんな大人なんで話せばわかってくれて…。


 ある種プロデューサーと監督、主演だったり出演者だったりが共犯関係になって、誰も観たことのないものを「やっちゃおうぜ!」っていう、そこの“おもしろがり方”が原点になっているような気がしていますね。「テレ東だからさ、頭おかしいこと一緒にやろうよ!」って言ってくださる作り手の方がたくさんいて、そこを毎クール形にすることで、視聴者の方にも楽しんでいただけていると思います。


◆周りが見えなくなる


——原作の選び方や表現など、よく「テレ東は攻めてる」と言われるが、叱られることもあるのでは?


阿部:担当した作品の中では、いろんなところにお詫びに行ったり怒られたりしたのは『エスパー』(『みんな!エスパーだよ!』)が一番で…。「そもそもなんで『TENGA』とか出してるんだ!」ってすごい怒られて、内心「今!?」って(笑)。いろいろあって部分的には一生懸命消す、編集し直す…とかありましたねぇ。


 会議なんかで「あれは大人のオモチャだろ!」って言われて、「あれは福祉用品です」ってひたすら言い張るっていう。福祉用品としての描写は一個もないですけどね、言い張りました(笑)。


——最近も『さすらい温泉 遠藤憲一』(2019年1月〜、水曜深夜放送)で駅などに掲示する交通広告の審査に落ちて、作り直したという話が…。


阿部:そもそもメインビジュアルとして考えて、エンケン(遠藤憲一)さんも温泉の話だから「裸の人に囲まれてたい」といったアイデアもあって、入浴姿の女性たちがたくさんいるビジュアルが出発点だったんです。いずれにせよ深夜なので、中吊り広告とかそういうのは予算的にも「どうせできないだろうし」って、制約が必要になる部分は全く考えてなくて。


 その後、「交通広告できそうです」って言われた時に、そういう前提だったことを忘れてそのまま「じゃあ、よろしくお願いします」と。あまりよく考えずに「テレビ東京だから、レギュレーションほかよりちょっとユルいのかなあ」とか、思っていました。普通に考えたらそんなことあるわけないのに(笑)。


 基本、うちの人たちは僕を含めて、作品のことだけ考えると周りが見えなくなるんで。「え? 審査通らなかったのか」「あれ? ダメだったのか…」って、普通にみんな落ち込みました。そういうところが、みなさんに愛していただけるんですかねぇ(笑)。


◆共感がなきゃダメ


——先ほど話題に出た『みんな!エスパーだよ!』は超能力、2019年1月クールの『フルーツ宅配便』はデリヘルの話など設定はエッジの利いたものだが、登場人物の心情は立場の違う人間が観ても「共感できる」「わかりやすい」ものが多い。


阿部:テレビなので驚かせないといけない。驚いて初めて感動が出てくるというか、驚きが感動に繋がってると思っているので、そこはみんな、そういう意識でやってるんじゃないかと思いますね。


「共感される」という点は監督の作家性が出ている部分だと思うんですが、やっぱり伝わらないといけない——でも、共感ってすごく作るのが難しい。その言葉自体を嫌う社会の風潮みたいなものが、今はあります。でも作り手としてマスに向けて発信している以上、テレビっていうのは「共感がなきゃダメだな」って僕自身は思っていますね。


——原作再現度の高いキャスティングが大きな話題になっている『きのう何食べた?』は男性カップルの話だが、いわゆるBL(ボーイズラブ)ではなくグルメドラマの側面や “相手を思いやって暮らす”という「日常」を描いている印象。


阿部:連載当初から「美味しそうに、ごはんを作るな」って思って見ていました。うちの母親とかも読んでいて、よしなが先生の絵のタッチもすごくきれいなので、とても読みやすい作品です。


 現場の熱量は、すごいですよ。もちろん大変さはありますけど、みんなすごく一生懸命「この作品を成功させよう」としている。やっぱり、よしなが先生の原作がすごくしっかりしているので、「それを損なうような作りをしてはダメだ」っていう意識はありますし、だからこそのキャスティング。現場全体から「クオリティ高いものをみんなで作ろうぜ」っていうのを強く感じますね。


◆「主人公はごはん」と言う松重豊


——テレビ東京でグルメドラマというと、『孤独のグルメ』シリーズ(2012年〜)を思い浮かべる人も多い。


阿部:『孤独』のチームがすごい優秀だと思うのは、ごはんの撮り方がすごく上手くて——完全にドラマのスタッフが作っていたら、あの作品はできなかったと思うんですよ。元々は情報バラエティの溝口(憲司)監督だからこそ、たっぷり、きれいに見せる——そこが主人公なんだって撮り方。


 これは主演の松重豊さんも言っていたことですが、「このドラマの主人公は、ごはんだから。俺はそれを引き立てるために“どう美味しそうに食べるのか?”っていうことでしかないから」って、その割り切りがあったから『孤独』は成功したんだと思います。


 実は『深夜食堂』(TBS系、Netflix)と『孤独』以外、大当たりしたグルメドラマってそうないので、どれだけ難しいか…ってこと。『きのう何食べた?』も、大きな可能性があると思ってるんですけど、観ていただかないと育たないので、本当に一人でも多くの人に観てもらいたいですね。

NEWSポストセブン

「ドラマ」をもっと詳しく

「ドラマ」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ