“悪人”誹謗中傷も…フジアナウンス室部長、中居氏被害女性に一貫して寄り添う 第三者委「大きな精神的負担」を指摘

2025年4月1日(火)6時13分 マイナビニュース


●病院に駆けつけ「少し休もう、ずっと待っている」
フジテレビの一連の報道を受けて設置された第三者委員会。3月31日に公表された調査報告書では、週刊文春の「中居正広 X子さんの訴えを握り潰した『フジの3悪人』」という記事で名指しされたアナウンス室部長(=報告書上はF氏)が、中居氏による性暴力被害を受けた女性アナウンサーに対して、一貫して寄り添った行動をとっていた実態が明らかになった。
○有休を使い切っても無収入にならない措置を支援
F氏は今回の事案発生後、初期段階で女性アナから事案の内容を聞き、退職に至るまで連絡窓口となり、その対応を行っていた。
F氏は、上司のアナウンス室長であるE氏とともに、女性アナの心身の状況から自死の危険性を感じながら対応。女性アナが入院した際に駆けつけたF氏は「少し休もう、仕事を休むことを全く迷惑だと思う必要はないので、ずっと待っている」と声をかけたという。
そんな中、女性アナとの連絡窓口が女性管理職であるF氏に一本化されることに。報告書では「性暴力を受け、自死の危険性があるなど入院に至る重篤な心身状況にある女性A(女性アナ)への対応が、被害者に対するメンタルケアの専門家ではないF氏に任されたことで、F氏には大きな精神的負担が生じた」と指摘する。
○自宅療養中の扱いを「勤務上テレワーク対応」に
復帰を希望する女性アナに対し、一貫して職場に戻る場所(番組)があることを伝え続けていたF氏。また、退院の延期で収入への不安を聞き、人事局長に相談して、退院後も満額の給与が支給されるように自宅療養中の扱いを「勤務上テレワーク対応」とする措置をとった。
F氏はチャットで、女性アナに「人事と話をし、有休を使い切った後でも、無収入にならないやり方で進められる」旨を伝えたが、女性アナは仕事をしていないにもかかわらずテレワーク扱いとされ、全額給与が支払われることに違和感を持ったという。
ちなみに人事局長はF氏に対し、仮に女性アナが中居氏と裁判することになっても、フジテレビとしては女性アナの意思を尊重する旨を述べ、F氏はその発言に救われたという。
女性アナは、医師チームや女性支援団体と具体的な退院時期や仕事復帰時期について意見交換しているとF氏に伝えた。この報告を受けた編成局長から「どういった支援団体とつながっているか知りたい」と直接の面会を求められたが、F氏は、支援団体への相談を制限する意図があるように女性アナに受け取られる可能性があり、また制限すべきでないと考えていたため、編成局長に「医療上必要な場合のみにしか入院患者に面会できない」旨を返答した。
●降板伝達時の涙…自身のメンタルも追い詰められる
復帰のめどが立たない中、23年10月の番組改編で、フジでは女性の出演番組について、一旦レギュラーを交代(降板)する方針を決めた。だがF氏は、すべての番組からの降板は復帰意欲を低下させるおそれがあるとして、ある番組のレギュラーを「戻る場所(番組)」として残すことになった。
番組改編発表後に初めて知って女性アナがショックを受けないように、F氏は事前にオンライン会議や電話で説明したが、女性アナは「私からすべてを奪うのか」などと激しく泣いて強く訴えることに。
F氏は、女性アナの復帰意欲の強さとそれが奪われることによる心情を思い、番組降板の話をするのは「非常につらかった」旨を調査に述べている。また、電話口で泣く女性アナの様子は「慟哭」するようなものだったといい、病状が悪化してしまうのではないかと心底心配であり、F氏自身のメンタル(ヘルス)もギリギリまで追い詰められていたという。
○課せられた役割は一管理職の職責を超えるもの
このやり取りについて、報告書では「心理支援の専門家ではない管理職が、PTSDを発症した部下とのコミュニケーションをひとりで担うことは困難であり、F氏の精神的負担は大きかった」と指摘。特に、番組降板の話は、アナウンサーとして業務復帰に向けて心の支えとしてきた大切なものが奪われたと感じる話であり、F氏自身も「アナウンサーとして心情を理解できるだけに、つらい思いをした」旨を述べている。
その上、産業医らのサポートがあったとはいえ、降板の話を複数回伝える役割をほぼ一人で担うことになったが、F氏に対する会社としてのサポートは乏しかったといい、「F氏に課せられた役割は一管理職の職責を超えるものであり、この点でもフジテレビの対応は不適切であった」と断じた。
●社内から「週刊誌報道の内容に納得がいかない」声が多数
ほかにも、23年10月下旬に、女性アナが入院中にベッドに横たわる自撮り写真と当時の心情を自身のInstagramにアップした際、会社側が様々な反応による病状への悪影響を懸念し、F氏から対外発信を控えるよう伝えることになった。そこでF氏は電話で、Instagramの発信の意図や思いを聞いた上で、業務復帰に向けて、病状の発信によるマイナスイメージの定着が心配である旨を伝えると、女性アナは泣いて、「私から社会とのつながりを奪うのか」などと訴えたという。
これを受け、F氏が主治医に別の医師を介して相談したところ、対外発信が病状に悪影響を与える可能性は低く、むしろプラス面があることが確認されたことから、対外発信を制限しないこととした。
女性アナと共演歴のある弁護士が中居氏の代理人になったことを事後に聞いて「私と守るものが違う」とショックを受けたというF氏。こうして様々な形で寄り添い続けたF氏に対し、女性アナからは退職にあたって感謝のメールが送付されている。また今回の調査の社員アンケートでは、F氏についての週刊誌報道の内容に「誤りである」「納得がいかない」という声が多数寄せられた。
報告書では「F氏や産業医らは、港社長らから意見を求められたこともなく、むしろフジテレビとしての全体的な方針も知らされないままに、最も困難な性暴力被害者の女性のケアの部分だけを丸投げされている。特にF氏は、自分とのやり取りの後、女性アナが自死してしまうかもしれないという、具体的な恐怖を抱きながらやり取りを担当していたものであり、F氏の心身への負担は計り知れない。専門性を持たないF氏に“女性である”という理由だけで、このような過重な負担を負わせたことは、フジテレビによるF氏の安全かつ健康な労働環境という人権の侵害と評価される可能性もある」と厳しく指摘している。
○清水社長、名誉回復へ「できるものがあれば」
この内容を受け、フジテレビの清水賢治社長(フジ・メディア・ホールディングス次期社長)は「女性の気持ちが一番分かっていて窓口となっていたFさんにも、会社の姿勢が非常に負担をかけてしまったこと、結果誹謗中傷にもあっていることについて、非常に申し訳ないことをしたと思っています」と謝罪。
「今回の報告書を読んで、ホッとしたところは実はFさんに対してこのように認定していただいたというところで、良かったと思います」という清水社長。週刊誌報道に基づいたSNS等での誹謗中傷の続出も、「本人にはかなり精神的な負担となっています」と明かす。F氏については、一部で出社停止しているとの報道もあるが、番組出演を控えているものの、管理職としての職務は通常通り行っているという。
今後の彼女の名誉回復について質問すると、「Fさんの意向次第ではありますが、できるものがあれば考えていきたいと思っています」と前向き。現状は「F氏」と伏せられている名前を公表することについては、「第三者委員会が匿名を使って報告している以上、私たちがそれを飛び越えて匿名を変えるということはありません」と回答した。
マイナビニュースの取材によると、同局ではコンプライアンス推進室のX(Twitter)公式アカウントを2月4日に開設。これは、SNS上においてアナウンサーなどに誹謗中傷コメントが投稿・拡散されている状況を受け、SNSのプラットフォーム事業者に通報することを目的としている。

マイナビニュース

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