第2回:いま日本から最も近い“ハリー・ポッターに会える場所”メルボルン

2019年4月5日(金)14時0分 シネマカフェ

「プリンセス・シアター」外観

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映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1&PART2』から19年——。ハリーとその仲間たちがホグワーツ魔法魔術学校を去った後の世界を描いた最新作にして、舞台脚本の書籍化である「ハリー・ポッターと呪いの子」は、事実上のシリーズ最終巻とされている。

この春から、その舞台がオーストラリアのメルボルンで上演されている。アジア・パシフィックで唯一の上演都市となったこの街で、ハリー・ポッターの世界を探した。

舞台の上演都市として選ばれた理由
2月、オーストラリアのメルボルンで、シリーズ最新作にして完結編とされる舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」がプレミアを迎えた。ロンドン、ニューヨーク、そしてメルボルン。第3番目の都市に選ばれた理由はどこにあったのだろう。


もちろん、英語で制作された舞台ということで、英語圏であるということがひとつ。そして、アジア・パシフィック随一とも言われる豊かなシアター文化があったことも大きな理由のひとつだと制作陣は話している。ロンドンにはウエストエンド、ニューヨークにはブロードウェイという世界に名を轟かせる劇場街があるように、メルボルンにはイーストエンドがある。CBDと呼ばれる中心部の東側にあり、徒歩圏内に6つの伝統的な劇場が立ち並ぶ。

2月は、ハリウッドの大女優エレン・バースティン出演の作品や、人気映画の舞台版「スクール・オブ・ロック」なども上演されていて、昼間から大いににぎわっていた。


周辺の路地には地元住民が好む人気のレストランやカフェ、スイーツショップが潜んでいる。秘密のお店を教えてくれ、各店で試食試飲ができるヒドゥン・シークレット・ツアーズも開催されている、観光客にも人気の地域だ。

このエリアでもひときわ華やかな歴史を持つ劇場が、「ハリー・ポッターと呪いの子」を上演しているプリンセス・シアター。“プリニー”の愛称でよばれる、ビクトリア州遺産に指定の建造物だ。1886年のオープン以来、ストレート・プレイ、オペラ、ミュージカル、そして映画など数々の名作が上映され、ローレンス・オリヴィエやヴィヴィアン・リーの出演、エリザベス女王の臨席を賜ったこともある由緒ある劇場なのだ。


そんなシアターが、ハリー・ポッターらを迎えるために2年前から動き出した。昨年は、6か月かけてインテリアの改装を行い、コロニアル・イエローの壁、そしてカーペットまでもがホグワーツ&ハリー・ポッターをモチーフにしたものに姿を変えたのだ。劇場が持つ雰囲気はとても大事だと制作者のひとりは語る。プリンセス・シアターの存在が、メルボルンが第3の都市になった大きな理由のひとつでもあるというわけだ。


物語の世界にリンクする街の雰囲気
そしてやはり、この劇場を抱くメルボルンが持つムードというのも、決め手となった大きな理由なのだろう。先住民族アボリジニの文化と、1835年から始まった入植者たちの文化によって形づくられたメルボルン。特に、19世紀に起こったゴールドラッシュで急激に栄え、その頃に建てられたビクトリア朝時代の建築物が街の中心部や郊外にも残り、近代的な街並みと美しく融合している。街を歩いていると、ヨーロッパにいるのかと錯覚してしまう。そんな雰囲気にはハリー・ポッターの世界と通じるものがある。

ユネスコ世界遺産に登録されている王立博覧会ビル(ロイヤル・エキシビションビルディング)は1880年にメルボルンで開催された万国博覧会のために建てられた。ビザンチン様式、ロマネスク様式、ルネッサンス様式の建築様式を複合しているのもユニークだが、驚くべきはいまも現役で稼働していて、イベントがあれば入館可能だ。


遺産指定されている街のアイコン、フリンダースストリート駅は『魔女の宅配便』にもヒントを与えたとされていてジブリファンには有名だが、エドワード朝の建物だ。同じく遺産指定されている聖パトリック大聖堂はオーストラリア最大のゴシック建築。中に入ると、まるでホグワーツの世界に迷い込んだようだ。


中でもおすすめは、“一度は行きたい”と称されているビクトリア州立図書館。1854年に設立されたオーストラリア最古にして、世界最初の無料ライブラリーだ。市民にとって知の泉のような場所だが、稀覯本、歴史的な文書など貴重なコレクションでも知られ、ギャラリーでは常時アートも展示されている。


地元住民でなくても館内を見学できるのが嬉しい。見どころはラトローブ閲覧室。天井が高く、広々とした様子で、ここなら勉強がはかどりそうだ。壁の本棚にびっしりと書籍が収納されている様子も壮観なのだが、最上階のあるスペースだけ本棚が空になっている。実はここだけ、何度本を並べても、翌日には全ての本が下に落ちてしまっているのだという。そのため図書館側は、本を並べるのをやめてしまったといういわくつきの本棚なのだ。


実は、「ハリー・ポッターと呪いの子」上演劇場であるプリンセス・シアターにも、こんな話が。1888年3月3日、オペラ「ファウスト」の主演だったフレデリック・ベイカーがクライマックスで奈落に消えた際、心臓発作を起こして帰らぬ人となる悲劇が起きた。にもかかわらず、それを知らずにいた共演者や観客たちは彼が終演後に舞台に現れ、お辞儀をしたと言い張ったという。その後、数年に渡り劇場は、舞台が初日を迎えるときは3列目の特等席を空席にし、彼に敬意を表した。現在も、フレデリックの目撃談は絶えない。いまは、嘆きのマートルと意気投合していることだろう。

歴史とストーリーのある建造物と、ホージア・レーンなど有名なグラフィティ・アートの(『アメリ』など、映画にまつわるモチーフも多数)ある現代を象徴する裏道が隣接しているメルボルン。カンタス航空が成田からメルボルンまで毎日直行便を運航しているので、観劇のためはもちろん、ほかの都市への拠点としてもスムーズに移動できる。個性的な企画展にも定評のあるナショナル・ギャラリー・オブ・ビクトリアほか、世界有数のアート&カルチャーが体験できるこの街で、ハリー・ポッターの世界を探してみてはいかがだろう。

協力:オーストラリア政府観光局/ビクトリア州政府観光局

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