バイプレイヤーの泉 第153回 毎日テレビを振り返ればそこに安田顕がいる

2025年4月5日(土)7時0分 マイナビニュース


コラムニストの小林久乃が、ドラマや映画などで活躍する俳優たちについて考えていく、連載企画『バイプレイヤーの泉』。
第153回はタレントの安田顕さんについて。彼について肩書きを"タレント"と称してしまうのはやや気が引けてしまうが、それほど安田さんは多くの顔を持っている。ここではテレビドラマに出演している彼の姿にフォーカスを当てるが、他にはバラエティー番組への出演、番組ナレーション、声優など、"俳優"という括りだけには収まることないアクティブな活躍ぶりだ。個人的にはサンリオキャラクター・シナモンとのクッキング番組には舌を巻いた。51歳のおじさんと、人気キャラの共演が面白いという新境地を見せてもらった。
彼の大奮闘ぶりをここらで振り返って、思い切りうらやましがりたいと思う。
○約20年、途切れることない連続ドラマへの出演
ここ数年、本当に安田さんの姿を見かける。まさに「振り返れば安田がいる状態」だ。インターネットで調べてみると、2007年以降、ほぼ毎年連続ドラへ出演していることが分かる。
例えば2007年『ハケンの品格』(日本テレビ系)の派遣会社の社員・一ツ木慎也役。派遣社員とクライアントの間を常に行き来している、腰の低いアラサーだった。先日、たまたまTVerで本作を見返すタイミングがあり、彼の姿を見かけた。けして主要キャストではないけれど、私みたいなドラマオタクに「ああ、あの人」と思い起こさせる存在感があった。最も当時、彼は北海道出身の人気グループ「TEAM NACS」のメンバーだったし、タレント性は確かなものがあったのだと推測。
以降もバイプレイヤーとして作品出演を継続している。この連載を書くときにいつも「バイプレイヤーたちはいつも主役をどういう視点で見つめているのだろう」と気になるけれど、安田さんの途切れない活動ぶりを俯瞰で見ていると、腐らないことが大事だのだろうと自戒させられる。
少し時は流れて、2019年『俺の話は長い』(日本テレビ系)の秋葉光司役は本当によく似合っていた。気の弱い、優しい、妻の綾子(小池栄子)に頭が上がらず、娘にはめっぽう弱いアラフォーおじさんはご本人のパブリックイメージに近かったのか。そしてご本人の線の細さと、はっきりとした顔立ちだけど時折見せる自信のなさそうな表情。これぞ、俳優・安田顕カラーであると、私は確信した。
○弱さと厳しさと優しさと
『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系・2022年)の医師役・植野元で重鎮さを月9で見せつけられた。よく似合っていた秋葉光司役をはじめとするこれまでの気弱そうな役に、厳しさと優しさが着実に加わっている。気の強い役柄は導入として強いけれど、逆の弱そうな役柄を表現するのは独特の繊細が必要だ。
演じ続ける傍らでは、舞台もバラエティー番組も切らさない。シリアスとコメディの操縦ぶりも絶好調。その勇姿(?)を見ていると、選択肢の多さを武器にした人だと改めて感じる。最近の若手の悩みに「選択肢が多すぎる」があると聞く。就職も結婚も恋愛も何もかも自由になりつつある昨今、誰も「右に倣え」の指示を出すことはなくなり、個の選択を求められる率が高くなった。その最中で自分の肩書きを明示するのは、難しいだろう。
でもそんな時は安田顕というタレントを思い出してほしい。サンリオキャラクターとあの吉沢亮を相手に仕事をして成立しているのだ。肩書きなんていくつも持っていてもいいのだ。ちなみに若手だけではなく、私たち、おばさんたちも同じこと。無理をしてひとつの生き方にこだわらなくてもいい。こんなことを文章から伝えたかった。
そんな安田さんを見てエネルギー補給をしたいのなら、春ドラマ『ダメマネ!—ダメなタレント、マネジメントします—』(日本テレビ系)をぜひ。
小林久乃 こばやしひさの エッセイ、コラム、企画、編集、ライター、プロモーション業など。出版社勤務後に独立、現在は数多くのインターネットサイトや男性誌などでコラム連載しながら、単行本、書籍を数多く制作。自他ともに認める鋭く、常に斜め30度から見つめる観察力で、狙った獲物は逃がさず仕事につなげてきた。30代の怒涛の婚活模様を綴った「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」(KKベストセラーズ)を上梓後、「45センチの距離感」(WAVE出版)など著作増量中。静岡県浜松市出身。Twitter:@hisano_k この著者の記事一覧はこちら

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