芦屋小雁さん告別式 93歳大村崑が弔辞「何で先に逝くんだよ」「番頭はんと丁稚どん」などで共演
3月28日に老衰のため、91歳で亡くなった喜劇俳優の芦屋小雁(あしや・こがん、本名西部秀郎=にしべ・ひでお)さんの告別式が5日、京都市内で営まれた。弔辞はテレビ草創期の喜劇「番頭はんと丁稚どん」で、兄で俳優の芦屋雁之助さん(2004年死去)と共演した大村崑(93)が務めた。
「小雁ちゃん、崑ちゃんですよ」。そう亡骸へ語り掛けるようにして始まった弔辞では、会場近くの鴨川河川敷で咲き誇った桜を取り上げた。
「あんたの好きな桜が一杯咲いてて、この花道をあっちへ逝くという。きょうは小雁ちゃんの花道ですね」
そして1959年放送開始の時代劇コメディ「頓馬天狗」を回想した。生放送のCM「姓はオロナイン、名は軟膏」で人気を博すと、サインを求めるちびっ子ファンに追い回されるようになったという。
仕立てた舞台用の洋服がサイン用マジックで汚されても構わないように「小雁ちゃんと相談して“これから黒い服を着とこか。マジックを塗られてもいいように”と。お互いに黒い服を着て楽屋へ出入りした。その黒い服を着てきょう、あんたのお別れに来るなんて、思ってもなかったよ。オレは93だよ。何で小雁ちゃんが先に逝くんだよ」と声を詰まらせながら続けた。
大村によれば「名前に“ちゃん”がつく喜劇役者は2人しかいなかった」という。すなわち「テレビに出て有名になってレベルが上がってきた。2人で力を合わせて子どもたちに愛してもらえるように頑張ってきたから」との自負を語った。
小雁さんは「番頭はんと丁稚どん」などを随所にアドリブを入れて演じたという。それに脚本家の花登筐が「“台本通りにやれ”と。紙に書いて貼ったものを、小雁ちゃんが破って捨てる。神様みたいに偉い花登筐の書いたものを捨てるなんて小雁ちゃんにしかできない」
喪主で妻の寛子さんは怖がりだった小雁さんのために、読経も線香もなしの宗教色のない告別式にしたという。そして27年前、小雁さんが買ってくれた夜桜の模様の着物姿で臨んだ。当時「桜の季節にしか着られない」と愚痴をこぼしたそうだがこの日、「桜の季節にまさか逝くとは。本日京都は満開。今日着るしかないと思った」。会場からの出棺は、舞台を下がる際と同様の拍手、そして「日本一」の掛け声で送られた。