【インタビュー】神谷浩史、「一生懸命に生きる姿」で魅せる愛おしい役作り

4月6日(木)16時11分 シネマカフェ

神谷浩史/『夜は短し歩けよ乙女』インタビュー

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テレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で“こじらせ男子”を好演し、世の女性をムズキュン旋風に巻き込んだ俳優・星野源。彼が、また一風変わった“こじらせ男子”——後輩である“黒髪の乙女”に思いを寄せるも、外堀を埋めるばかりで一向に進展させられない冴えない大学生の“先輩”——を演じ、新たに世の乙女たちをムズキュンさせること必至のファンタジック青春恋愛映画『夜は短し歩けよ乙女』。

本作の主人公“先輩”の数少ない友人である“学園祭事務局長”を演じたのは、唯一無二の声色が放つ存在感と高い演技力、そして作品やファンへの真摯な佇まいが人気を博し、昨今の声優人気の中でも一線を画する声優・神谷浩史

「僕が演じた“学園祭事務局長”は、原作を読んだ段階では、そこまでキャラが立ってるように思わなかったんです」「だって変なキャラクターがいっぱいいるから。天狗だと名乗る人まで出てきて、それがうそか本当かも分からない…そういう世界観の中で、“先輩”のいち友人であり事務局長というポジションにいるからには、非常に常識的な人なんだろうな、という印象だったんです」——しかし、実際に神谷さんがスクリーンに投影したのは見事なまでに個性的で、魅力的で、とても愛おしい人物だった。神谷さんは如何にしてキャラクターを作り上げたのか?


原作・森見登美彦×監督・湯浅政明、ほかアニメ「四畳半神話大系」のクリエイター陣再集結で贈る本作。登場人物たちは“先輩”を筆頭に誰も彼も個性的! 中でも“学園祭事務局長”は、映像化にあたり原作の“こじらせ”エッセンスを一際膨らませて描かれる。

小説の中では「美形で女装癖があり、幾多の男性を無謀な恋路へと翻弄してきた」と謳われてはいるものの、その描写は書かれていない。しかし、本劇中ではその才能を遺憾なく発揮し、女装をして歌い踊る場面が登場。神谷さんが自身の声帯から、キュートで可憐でキラキラオーラ全開の女子ボイスを発し、『ラ・ラ・ランド』もかくやというミュージカルシーンを演じる。

もはや当初のイメージからはだいぶ離れ、なんともドラマティックなキャラクターに仕上がっている。そこに至るには様々な要素が肉付けされていった役作りの過程があったようだ。

「まず、ファーストシーンの演出(ダメ出し)として『優雅で余裕があって落ち着きがある人』と言われたんです。ところが、物語が進んで“事務局長”という立場で学園祭を運営するにあたっては、非常に冷静にいろんなことを分析する一面が見えてくる。“先輩”に『学園祭を手伝え』と語りかけるシーンでは、冷血とまでいかないですけど…先輩の気持ちさえも利用して『この学園祭というものを正しく運営してこう』とするんです」。

さらに物語が進み、思い通りに学園祭が運営できないことへの悔しさを露わにするシーンでは「『悔しがっている自分』っていうものを表現してほしいと言われました。いま起こっている問題について『一体コレはどういうことだろう?』と独りごちるところも、割りと『ドラマチックにやってください』と。ナルシストな部分が出てくるんですよね」。

「彼は、自分の見た目が優れていて、人を率いる役割に秀でていることを自覚している。その上で、求められた“事務局長”というポジションを演じているんだと思う」「だから、周りから見た“人気者の学園祭事務局長”を構成する要素には、実はいろいろな表情があって、それらを見せるためには、僕も多様な表現をする必要があった、というわけです」。


くるくると移ろう万華鏡のような彼を演じるうえで意識していたこと…それは「魅力的な世界を構成する上で、“学園祭事務局長”が魅力的なパーツとしてこの作品の中で正しく機能するためにはどうしたらいいんだろう、っていうのは凄く考えてました」「ただ、木村絵理子音響監督の指示がすごく的確だし、自分が迷ってたことに対して明確な答えが返ってきた。湯浅監督の意図をちゃんと正しく伝えてくれる人がいたので、僕はそれを信じて演じることができました」。

そんな収録を「凄く楽しかった」と飾らない言葉でふり返る。「いろいろな表情を見せられたと思う。優雅なところもクールなところも、ちゃんとしている部分も、女装して歌いながら自分の気持ちを吐露してみたり…。ただカッコイイ&可愛いだけじゃなくて、ちゃんと一生懸命に生きる姿を表現してもキャラクターは魅力的に映るんだ、ということを今回証明してもらえた気がして、『一生懸命やってよかったな』って思いました」。



こうして生まれた“学園祭事務局長”は、自身のキャラクターだけでなく、物語そのものにもドラマティックな新展開を巻き起こす。原作ファンは驚きを持って見るかと思うが…そんなことは意にも介さず、オモチロイことに邁進する“黒髪の乙女”と、彼女の気を引こうとナカメ(なるべく彼女の目に留まる)作戦を実行する“先輩”は、四季折々の京都の街を舞台に突き進んでいく。

「“先輩”はバカみたいだけれど、とても一途に生きている人で…酷い奴だな、とは思いますけど(笑)。『優先すべきは友情よりも黒髪の乙女である』っていうことを平気で言いますから(笑)。でもそれでこそ人間だと僕は思うし、それを言っても魅力的にみえる。それに、“黒髪の乙女”の『オモチロイこと』というのも凄くあざといじゃないですか? でも全然嫌な感じに見えない。それは、2人とも一生懸命に生きてるから、だと思うんです。この作品に登場するキャラクターたち全員に言えることなんですけど、どんなに小さいことでも、大きいことでも、自分の目的に凄く前向きに生きてると感じたんですよね」。



「今回は“先輩”と“黒髪の乙女”の2人を中心に物語が描かれてますけど、ほかの人物にスポットをあてても、もしかしたら作品って成立するんじゃないかな? って思えるくらい魅力的」と全登場人物のことを愛でる神谷さんに、そんな中でもお気入りのキャラクターは? と尋ねた。すると、作中で錦鯉センターを営むスケベ親父・東堂さんの名前を挙げ「だって、ダメなおじさんじゃないですか」と笑顔で理由を話してくれた。

「竜巻が起きて自分の鯉が飛んでいなくなってしまうのは可哀想だけど…それ以外で彼が嘆いていることって『大概、自分のせいなんじゃねーの?』って思うことが多い気がするんです。でも、自分に不都合なことを何かのせいや他人のせいにして、それでも一生懸命生きていく部分って、共感できるじゃないですか。人間って、大なり小なりそういうところがあるし、僕もある。でもそれを真正面切って、堂々と生きてるところを見ると、たくましいし、人間くさくて良いなって思います」。

「あと山路和弘さんがこういうダメなおじさんを演じるの、僕、凄い好きなんですよね。普段はものすごいダンディーな方で、格好良い役を演じているときが山路さんの真骨頂だと思うんですけど。たまに、こういうダメ親父みたいな役を演じられるところを見ると、『本当にお芝居が上手で、役者として凄い尊敬できる方だな』と思えるんです。ダメなおじさんでも、格好良く見える!」。そう羨望の眼差しで語った。

静かな神谷さんの話しぶりから熱くほとばしっていたのは、本作の世界を、そして登場人物たちをとても愛しているという気持ちだ。「映画は好きに楽しんでもらえれば良いと思うんですけど、“先輩”と“黒髪の乙女”が最終的に落ち着くところに対して、観てる人たちが『あ〜良かったね!』って前向きな気持ちを感じてくれたら、凄く嬉しいなって思ってます」。ぜひ貴女も「本作を観よう!」という目的に前向きに突き進んでほしい。夜は短し“劇場に”歩けよ乙女!

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