永瀬拓矢九段「タコができるほど対局できて、幸せ」左手には努力の結晶の“対局タコ” 藤井聡太名人に挑戦、初のビッグタイトル獲得へ
2025年4月9日(水)11時50分 ABEMA TIMES

将棋の藤井聡太名人(竜王、王位、王座、棋王、王将、棋聖、21)に永瀬拓矢九段(32)が挑戦する第83期名人戦七番勝負が4月9日、東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で開幕した。棋界屈指の努力家として知られる永瀬九段だが、その左手にはその証が“対局タコ”として現れている。「タコができるほど対局できて、幸せ」と笑う挑戦者の手は、このシリーズでビッグタイトルをつかむことができるのか——。
将棋に向かうストイックな姿勢から、かつては“軍曹”の異名で呼ばれることもあった永瀬九段。研究に明け暮れることでも知られており、棋界屈指の努力家であることは誰もが認めるところだ。
今期の永瀬九段は順位戦A級をリーグ戦を6勝3敗で駆け抜け、名人3期の佐藤天彦九段とのプレーオフの末に念願の名人挑戦を決めた。挑戦権争いは、七冠保持者の藤井名人との王将戦七番勝負期間中。シリーズは1勝4敗で敗れたものの、「引き続き2日制の感覚を引き継ぐことができる。王将戦の結果は残念だが、また名人戦で対局できるのでそちらも集中したい」とコメントし、春の七番勝負を見据えていた。
全国各地で行われるタイトル戦の転戦に加えて、他棋戦の対局も多い永瀬九段。名人戦開幕局が約1カ月ぶりの対局になる藤井名人と比較しても、永瀬九段はその間に5局の重要対局をこなしている。『ハードスケジュールは強者の証』ともいわれる将棋界だが、その過酷さは想像をはるかに超えるものがあるだろう。
そんな永瀬九段にとって、忙しさのバロメーターになっているのが左手の付け根の縁部分にできる“タコ”だという。本来は、節のない柔らかくしなやかな永瀬九段の手。いわく「普段は駒とお箸より重いものは持ちませんからね(笑)」と冗談を飛ばしたが、タコは目視でも明らかに固く盛り上がっていることがわかる。

このタコの原因は、「正座で行う対局の際に前傾姿勢で膝の前に手を着き、全体重をかけるからできるのでは…?」となんともあいまい。永瀬九段にとっても無意識でできているといい、「畳が擦れてタコになるんでしょうね。首を痛めないように左手で支えているんだと思います。右手は駒を動かすからか、不思議とできないんです」と語り、固くなったタコをざらりと撫でた。
「タコができるほど対局できるということは幸せなことです。対局がなければ、1カ月くらいで消えているんです。コロナ禍で対局が減ったときは、ありませんでしたから。今は…そうですね、最大クラスかもしれないですね」
研さんの結晶ともいえる、左手に固く縁取られた“対局タコ”。若き絶対王者を前に、永瀬九段はどのような戦いぶりを見せるのか。初戴冠を目指すその一手一手から目が離せない。