ベイスターズ・柴田竜拓のプレーで思い出した「プロフェッショナルとは何か」

4月9日(火)11時0分 文春オンライン

 開幕して3カードを消化し、勝ち越し2つの5勝4敗。この時点での判断は時期尚早とはいえ、横浜ファンにとってはなかなかいいスタートを切ったと言えるでしょう。開幕カードを勝ち越し、ヤクルトとの3連戦を負け越して入ったホームでの巨人戦。初戦を落とした時、「ヤクルトに嫌な形で負け越して、初戦今永で負けて、今年もこのままズルズルいっちゃうのかなぁ」と、なんとなく嫌な感じを覚えたのは、僕だけじゃないはずです。2戦目も、初回に失点。例年のベイスターズなら、この失点が決定的となり、4月は調子の上がらないままなんとなく借金3つくらいで終えている、そんなシーズンになるところでした。


 そんな流れを変えたのは、柴田。神里のツーベースのあと、なんの迷いもなくセカンドゴロを打ちましたね。あの進塁打によって神里が三塁に進み、次のソトのサードゴロの間に同点。嫌な流れを一瞬にして断ち切りました。失点した後に、ヒットわずか1本で同点に追いつくような展開は、去年までにはあまり見なかった野球です。あのセカンドゴロは、もしかしたらシーズンの命運を分けるセカンドゴロになるかもしれません。それくらい、ああいう確実な一手を打てる選手は貴重です。


 打撃だけではなく、守備による貢献も実はかなりあります。的確なポジショニング、広い守備範囲、強い球際、正確な送球。「やられた!」と思った時に、なぜか柴田がそこにいる、という映像を、このわずか1週間の中でどれだけみたことでしょうか。どこをとっても、おそらく球界トップクラスの守備力。柴田の魅力は、数字に表れない貢献ができることにあります。



数字に表れない貢献が魅力の柴田竜拓


万永さんに教わった“プロフェショナルとは何か”


 あれは僕の、プロ2年目の話。ファーストにコンバートされ、初めて守備につく日のこと。確か山形の球場で、楽天戦だったと思います。野球をやってからプロ2年目のこの日まで、キャッチャーしかやったことがありませんでしたから、はじめての内野手にものすごく緊張していたことをよく覚えています。その日、現二軍監督で、当時二軍守備走塁コーチだった万永さんに言われた一言が、今でも僕の“プロフェショナルとは何か”という考えの礎になっています。


「プロ野球の世界で、守備につくということが、どういうことか、分かるか? お前の守備は、素人同然だから、エラーしてもベンチが責任を取る。気にしなくていいから思い切ってやれ。でも、これだけは覚えておいてくれ。お前のエラーでもし負けても、翌日の新聞に書かれるのは『誰が負け投手になったか』。プロの世界は、結果が全て。お前のエラーで負け投手になって、それがキッカケで調子を崩して、結果引退することになったとしよう。そう考えると、お前は、ピッチャーの人生、ピッチャーの家族の人生、その周りにいる大勢の人の人生を背負って、グラウンドに立つんだ。その覚悟がないなら、プロ野球の世界で守備につくことはできない。一旦あそこに立ったら、お前が素人かどうかは関係ない。それくらいの覚悟を持って、あそこに立つんだ」


 試合前の緊張感の中で、妙に冷静に話す万永さんの一言一言が、脳に直接入って来る気がしました。「だからこそ……」と言って話は続きます。



100点を取れるところで、絶対に100点を取るということ


「ピッチャーが“打ち取った”打球は、なんとしてもアウトにしてくれ。ファインプレーなんて、一切しなくていい。正面に飛んできたゴロを、どんな形でもいいから取って、アウトにしてくれ。それ以上のことは、やらなくていい」


 プロフェッショナルとは、100点を取れる場面で、100%の確率で100点を取ること。それが、99%になった時点で、プロではない。そう、教わりました。だからこそ、まだ内野手だった梶谷が、練習でランニングスローをしただけで激怒していました。


「そんなプレー、必要ない! 足で踏ん張って、正確に投げろ! それで、十分アウトになるだろ!」


 現役時代の万永さんは、守備固めでの出場が多い選手でした。引退する年、守備固めで出場した試合で、なんでもないゴロを一塁に悪送球。そこからなんと10点を取られてしまう。そのプレーで、引退を決意したそうです。絶対にアウトにできる打球を、絶対にアウトにする。100点を取れるところで、絶対に100点を取る。これは、万永さんの実体験から来ているんですね。


 野球というスポーツにおいて、もっとも華があるのは、三振とホームランでしょう。それが、最も勝敗に直結するプレーであると同時に、最も観客を魅了するプレーだからです。故に、たくさん三振を取れる選手、たくさんホームランを打てる選手にたくさんの報酬が支払われます。そのことは、紛れも無い事実。ただ、プロ野球は長いシーズンを戦った先に結果が出ます。その中では、当たり前のことを当たり前にできる選手、100点を取れる時に、100点を取れる選手が必ず必要になってきます。そして、2番という打順こそ、高い確率での仕事を要求される打順であるし、セカンドというポジションこそ、あらゆるプレーに絡むことのできる安定的な守備力を求められるポジションです。つまり、「2番セカンド柴田」こそ、ベイスターズにとって最も効果を発揮する布陣なのかもしれません。


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(高森 勇旗)

文春オンライン

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