AAA・與真司郎 カミングアウト後には一部ファンから心無い声が…それでも「後悔はない」と言い切れる理由
2025年4月9日(水)6時0分 女性自身
「『自分はゲイだ』と公表したあと『アーティスト活動を再開する』と言ったとき、ファンのみなさんが喜んでくれて……。あれほど幸せな涙を心の底から流したのはなかなか経験できないものだったと思います。皆さんに色々考えさせてしまったこともあるだろうけれど、受け止めて理解してくれようとしたことは、もう本当に感謝しかないですね」
こう語ったのは、 AAAのメンバーでソロアーティストとしても活躍する與真司郎(36)だ。
男女混合パフォーマンスグループ・AAAのメンバーとして’05年にデビューし、’21年末のグループ活動休止後はソロのアーティストとしても活動を休止。’23年7月に、ファン2000人を前に自身が同性愛者であることをカミングアウトし、ソロアーティストとしての活動再開を報告した。その公表は大きな拍手をもって迎えられ、様々なメディアでも取り上げられた。
16歳で芸能界デビューを果たした與にとって、自身のセクシュアリティを隠すことは“当たり前のこと”だった。
「やっぱり、メディアの影響って大きいと思うんですよ。当時のテレビはゲイのことを『男同士で気持ち悪い』という扱いでしたから。僕が小さいときはLGBTQ+という言葉もなくて、SNSはもちろんなかった。ゲイが主人公の映画も少なくて、自分で勉強する機会もなく、『自分は病気なんだな』って思っていました。
そういう状況だったのでデビューしてからも、自分がゲイだって誰かに打ち明けることは難しく、『ゲイであることは駄目なことなんだな』って刷り込まれてしまっていたといいますか…だから、隠すしかなかったんです」
さらに、インタビューなどを受ける機会の多い“芸能人”ならではの経験もあった。
「『好きな女性のタイプは?』って何気ない質問ですが、ゲイでないことが前提とされていますよね。そういう時、恋愛対象でない女性でも可愛いなと思う人はたくさんいるので、『こういうタイプが好きです』と答える。でもそれって、確かに“好きな女性のタイプ”だから嘘じゃないんですよね。
ただ『理想のデートは?』と聞かれたときは、ゲイでない男性なら女性とのデートを思い描いて話せますが、僕の場合は答えるときにまず男の人とのデートを想像して、それから女性とのデートに変換して話していました。そのことでストレスが溜まるようなことは一度もないんですけど、ただちょっと面倒くさい(笑)。それに、そういった細かい嘘が重なることで、ファンのかたにも申し訳ないなっていう気持ちもありました」
■カミングアウトで得た自信「蜷川実花さんに久しぶりに会った時も『與くん、めっちゃイキイキしているね』」と
カミングアウトをする前は「ゲイであることがバレたら、日本の芸能界には一生いられなくなるだろう」と恐れがあったという與。ファンもいなくなってしまう……。そんな不安から、9年かけてアメリカで生きていく基盤を作った。
「もちろん、受け止めてもらえたら嬉しいけど、そんなに人生甘くないよなって。でも、自分の母国の人たちや日本という国に嫌われるのは本当に寂しいことだなとは思っていましたね」
だからこそ、カミングアウトの後に会場で拍手が起こり、多くのファンに受け止めてもらえた時には、感激で涙が溢れた。しかし、カミングアウトをした後も苦労は絶えなかった。
「『カミングアウトしたら、幸せになれるだろうな』と漠然と思っていたら、そんなこと全然なくて。意外とカミングアウトした後のほうが精神的にやられてしまって。『やらなければよかったんじゃないか』『ファンのかたを傷つけてしまったんじゃないか』と自問自答するようになったんですね。
ネットの意見は好意的なものが多かったのですが、なかには『なんでカミングアウトする必要があるんだ』という言葉もあって。それに、もともとファンだった方からの『シンちゃんゲイなの?気持ち悪い』という言葉は結構刺さりましたね……。たとえそれが量として少ない声だったとしても、やっぱりこういう人がいるんだなって。申し訳ない気持ちもあるし、でもしょうがない気持ちもあるし。どうしようもないんですよね。
自分の人生を楽しみたいし、本当の自分をわかってくれる人とこれから歩んでいきたいっていう気持ちもあるし。結局、乗り越えるまでに1年くらいはかかりました」
葛藤や不安に苛まれた時期を経た今、與は「カミングアウトに後悔はない」と言い切る。
「自分に正直になれたことで、自分を愛することができて、自信を持つこともできたんです。愛してくれるファンのかたや、理解してくれるスタッフさん、家族や友達も周りにいる。だからもう怖くない。自分らしく生きることの大切さって、本当に強いなと思ってて。
もちろんいろんな人がいるので、必ずしもカミングアウトが正しいとは言い切れないのですが、1人でもいいから本当の自分を愛してくれたり理解してくれたりする人が周りにいたら人生が変わるって、声を大にして僕は言えます。
人生に自信を持つことができたので、鏡を見ても『顔つき変わったな』って。この前、写真家の蜷川実花さんに久しぶりに会った時も『與くん、めっちゃイキイキしているね』と言われましたよ」
■「いい人がいれば、結婚をしたい」その想いはストレートの人たちと変わらない
ゲイにはまだまだロールモデルが少なく、自身の将来に不安を抱える当事者も多い。與は、ライフプランをどのように考えているのだろうか?
「将来、もしいい人がいれば結婚したい。子供もお互いが欲しいと思ったら、子育てもしてみたい。この感覚はストレートの人たちと変わりません。でも、今の日本ではストレートの夫婦のように結婚することはできない。だから、もしかしたら海外で結婚するかもしれないし、移住も視野に入れるかもしれません。
自分はまだ英語が話せるからいいけれど、そうでない人は日本にいっぱいいます。だから、その人たちに同性婚の権利は絶対にあげないと。なぜ何も悪いことをしていないのに、しかもセクシュアリティを自分で決めて生まれたわけじゃないのに、これだけ同性愛者とそうでない人たちとの間に“できることの差”があるのかなって思います」
自分のセクシュアリティに葛藤したり、自分の人生を諦めてしまう人をこれ以上見たくない。そう語る與は、カミングアウトやセクシュアリティをめぐる人生経験を一冊にまとめたフォトエッセイ『人生そんなもん』(講談社)を発表する。
「自分の足跡をたどった本になったと思います。これ以上隠すことはないんじゃないかなっていうくらい、語っています。これを読んで一人でも多くの人が『こういう人生もあるんだ』と思ってくれると嬉しいです。
本を作るにあたって過去の自分と向き合うなかで心が苦しくなることもありましたが、『昔の葛藤があったから今の自分があるんだ』と思うようになりましたし、良い機会になったと思います。
LGBTQ+の人はもちろんですが、いろんな悩みを抱えている人に読んでもらえたら。僕も何回も失敗していますけど、頑張ってどうにか這い上がって今、明るい人生を送れているんで。読んでくれた人に『自分だけじゃないんだ、一人じゃないんだ』って思ってもらう、前に進むきっかけになれば良いなと思います」
カミングアウトによって、新たな強さを手に入れた與。これから、より多くの人を魅了していくことだろう。
ジャケット¥61600/meagratia
スタイリスト/SUGI (FINEST) ヘアメイク/佐藤真希