劇場へGO「イリュージョニスト」(4月20日まで、梅田芸術劇場)
2025年4月10日(木)20時24分 スポーツニッポン
終わってからもしばらく「ん?これ、どこまでがホンマでどこからがイリュージョン?どこからだまされてるワケ?」と、クエスチョンマークが止まらない。それほど余韻の残るステージだった。
舞台は19世紀末のウィーン。イリュージョニスト(奇術師)として世界中を巡業するアイゼンハイム(海宝直人)はウィーンでの公演中、幼いころに恋心を寄せ合った公爵令嬢・ソフィ(愛希れいか)と再会する。身分の違いから大人たちに引き離されていた2人。ソフィは今や、オーストリア皇太子レオポルド(成河)の婚約者となっていた。
しかし、再会した2人の思いは止められない。疑念を抱く皇太子。背景には傾国の危機を救いたいといういら立ちもあり、腹心のウール警部(栗原英雄)に偵察までさせていた。皇太子の怒りが頂点に達した時、ある事件が起きるのだが…。
“ネタバレ”厳禁なので、ここまで書いててもどかしいのだが、ひとつ言えるのは「最後まで気を抜かないで」ということ。
海宝の天まで突き抜けるような美声、興行主ジーガ役・濱田めぐみの力強い歌などキャストの歌声に聞きほれ、愛希の凜(りん)とした美しさは説得力ありあり。成河の狂気に満ちた目も忘れられない。嫉妬から来る怒り、悲哀、父である皇帝の座を奪いたいという野心をのぞかせる表情と芝居巧者ぶりをいかんなく発揮していた。
複雑なフォーメーションで動くセットも“陰の功労者”と呼ぶにふさわしい。逆U字形にくりぬかれた重厚な壁が何枚も交錯する中、演者が行き来し、しかも装置移動はほとんどが“人動”。ダークな色使いと照明が栄華を極めたハプスブルグ家の斜陽と、これから起こることの不気味さを暗示しているようで、世界観を巧みに表現し客席を引き込んでいた。