卒業する指原莉乃 内田裕也とのデュエットでわかったすごい実力——近田春夫の考えるヒット

4月11日(木)19時30分 文春オンライン

『ジワるDAYS』(AKB48)/『きみと恋のままで終われない いつも夢のままじゃいられない』(倉木麻衣



 指原莉乃の参加も今度限りという、AKB48の新曲タイトルが『ジワるDAYS』とのことで、てっきり“意地悪の日々”、つまりなにか時事的問題等への秋元康的臨機応変(?)な言及/対応なのかと思いきや、蓋を開けてみればなんのこたぁない。“ジワっとくる”だったんですね。考え過ぎた。



指原莉乃 ©文藝春秋


 指原さんとは仕事で二度ばかりお手合わせ願ったことがある。今となっては何とも思い出深いのが、内田裕也の29年ぶりで最終作となったシングル盤の制作(2014年)だ。


 ある日突然、ユーヤさんがどうしても彼女とデュエットで曲を吹き込みたいといってきた。なんでも、TVの番組で一緒になった折、大変に好印象であったと。あの子は面白い。絶対行けるぞ近田! と、それこそ息を巻いて語るのである。今となればその慧眼やおそるべしであるが、とにかく、無理は百も承知で秋元康にプロデュースを頼んだところ、何と! 超多忙のなかを、ユーヤさんでしたらと、まさに“二つ返事”で仕事を引き受けてくれたのだ。それがユーヤさんも嬉しかったのだろう。生前、何度も経緯を聞かされたことを、ふと、思い出す。



絵=安斎肇


 舌を巻いたのは、その『シェキナベイベー』での指原莉乃のデュエット勘のよさ、そしてなんとも堂々としていたことで、50も歳の離れた、しかも気難しいところのないとはいえぬロックンローラーを相手に、一歩も引かぬどころか、途中に入る台詞では一切動じることなく「ねぇ、ユーヤ!」と呼び捨てにすると、あの内田裕也がまるで歳下のボーイフレンドよろしく可愛く反応をしてしまう始末だ。


 それより何より特筆したいのが、指原莉乃の歌唱の素晴らしさである。オールディーズ調ロック歌謡を、実に自然に、リズム感溢れるコケティッシュなアピールで、ビシっと決めてくれた。発声スタイルこそ違え、私は図らずもその“パンチのある”歌いっぷりに、若き日の弘田三枝子の姿を重ねてしまったぐらいだ。



ジワるDAYS/AKB48(キングレコード)同グループとして55枚目。AKB総選挙通算4回1位の指原莉乃のAKB卒業シングル。


 そんな訳で『シェキナベイベー』を聴き返す度に、この人はAKB48をやめたら是非とも本格的な“ビートシンガー”の道を歩んでくれないかなあ、なんてことを願ってしまうのだが、そういえばあの界隈でグループを抜けた子たちに、ソロ歌手として成功した話をまだ聞かない。


 そのような状況に鑑みても、中途半端に女優になったりはせずに、あえて「歌うたいの道を極めるべく第二の人生を歩みます」と宣言してくれたら、きっと“ビッグニュース”だし、大成功の暁には、シーンのトレンドを大きく変えてしまうことになるだろう。


 当然プロデューサーは本人よ。経験は積んできているうえ、彼女ならば協力したい人はワンサカいると思うからネ。


 キャッチコピーは、例えば「のりのりのりの」あるいは「りののりのり!」とか?



きみと恋のままで終われない いつも夢のままじゃいられない/倉木麻衣(ビーイング)デビュー20周年初シングル。京都3部作の3作目。


 倉木麻衣。


 なんといっても、語尾のビブラートが変でいいっすよ。




ちかたはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト〜世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。




(近田 春夫/週刊文春 2019年4月11日号)

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