【週末映画コラム】ユニークなアクション映画を2本 暗殺者と静かな村人という二重生活を送る男『プロフェッショナル』/アクションサスペンスなのに主人公が“へたれ”『アマチュア』

2025年4月11日(金)7時0分 エンタメOVO

(C)FEGLOBAL LLC ALL RIGHTS RESERVED

『プロフェッショナル』(4月11日公開)



 1974年の北アイルランド。長年、殺し屋として暗躍してきたフィンバー・マーフィー(リーアム・ニーソン)は引退を決め、海辺の町グレン・コルム・キルで正体を隠しながら静かに暮らしていた。

 だが、首都ベルファストで爆破テロ事件を起こしたアイルランド共和軍(IRA)の過激派グループが町に逃げ込んでくる。彼らの一人が地元の少女を虐待していると知ったフィンバーは少女を助けるために男に制裁を下し、テロリストたちと対立することになる。

 後戻りできない状況に追い込まれたフィンバーはテロリストたちを完全制圧するべく、命懸けの戦いに身を投じていく。

 1970年代の北アイルランド紛争を背景に、リーアム・ニーソン演じる伝説の殺し屋が爆弾テロリストと対決する姿を描いたハードボイルドアクション。共演はケリー・コンドン、ジャック・グリーソン、キアラン・ハインズほか。

 監督は長くクリント・イーストウッドの映画を製作し、『人生の特等席』(12)で監督デビューを果たしたロバート・ロレンツ。ニーソンとは『マークスマン』(21)でもコンビを組んでいる。

 主人公のフィンバーは、暗殺者と静かな村人という二重生活を送っているという設定。これまで「96時間」シリーズなどのアクション映画でニーソンが演じてきた人物とは明らかにタッチが違うところが、この映画の見どころの一つだ。

 またアイルランドの広大な風景とアウトローの存在、銃を置くことのできない男の物語という点で、アイルランドが舞台なのにどこか西部劇のにおいがする。実際、脚本は西部劇を意識して書かれたというし、ロレンツ監督もニーソンもそこが気に入ったと述べている。加えて、敵役がコンドン演じるIRAの女性闘士というのも新鮮だ。

 そんなこの映画の原題は「聖人と罪人の土地」。主人公が悪事をしながらも善をなすという設定や、劇中にドストエフスキーの『罪と罰』が象徴的に出てきたりもする。こうした矛盾や相反する要素が混在しているところがこの映画の魅力でもある。

※ロバート・ロレンツ監督インタビューもインタビューコーナーで掲載中



『アマチュア』(4月11日公開)



 内気な性格で愛妻家のチャーリー・ヘラー(ラミ・マレック)は、CIA本部でサイバー捜査官として働くデスクワーカー。最愛の妻サラ(レイチェル・ブロズナハン)と共に平穏な日々を過ごしていたが、無差別テロ事件で妻を失ったことから、テロリストへの復讐(ふくしゅう)を決意する。

 チャーリーは、CIAの上層部に直訴して特殊任務の訓練を受けるが、銃すら扱えず、教官のヘンダーソン(ローレンス・フィッシュバーン)から、適性がないと見放されてしまう。組織の協力も得られない中、チャーリーは独自の方法でテロリストたちを追い詰めていくが、事件の裏には驚くべき陰謀が隠されていた。

 『ボヘミアン・ラプソディ』(18)でフレディ・マーキュリーを演じてアカデミー賞の主演男優賞を受賞したラミ・マレックが主演と製作を兼任したアクションサスペンス。原作はスパイ小説を多く手がけるロバート・リテル。監督はジェームズ・ホーズ。

 主人公のチャーリーは、殺しや特殊任務に関しては“アマチュア”=つまり素人だが、CIA最高のIQを持つ超頭脳派というところがこの映画のポイント。

 かつてロバート・レッドフォード主演の『コンドル』(75)やハリソン・フォード主演の「ジャック・ライアン」シリーズなど、武闘派ではないCIA分析官を主人公にした映画はあったが、どちらもそれほど弱そうには見えなかった。その点、この映画でラミックが演じたチャーリーは情けないほど弱いのだが、アクションサスペンスなのに主人公が“へたれ”というギャップが逆に新鮮に見えて面白かった。

また、チャーリーを鍛えるメンター(指導者)でありながら、後に彼の始末を命じられるCIA教官のヘンダーソンのキャラクターも同様。つまりこの映画は、二重構造や意外性、そしてギャップの面白さで見せる映画なのだ。

(田中雄二)

エンタメOVO

「映画」をもっと詳しく

「映画」のニュース

「映画」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ