地方が掲げる"聖地巡礼"のリアルがわかる? 「OTAKU EXPO」国内編

4月14日(火)2時0分 おたぽる

「輪廻のラグランジェ鴨川推進委員会」ブース。

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 3月28日、29日に開催された「コミケットスペシャル6」の目玉の一つだったのが、国内・海外のオタクイベントが一堂に会した世界初のイベント展示会「OTAKU EXPO」だ。ここでは各種のイベント主催者によるブースのほか、日本各地のマンガ・アニメを用いた地域振興を行う団体も結集。世界のマンガ・アニメに関するイベントの現在を見ることができる場となっていた。この記事では、その賑わいを紹介しよう。

 今回は国内のブース編。

 最初に見つけたのは、「輪廻のラグランジェ鴨川推進委員会」。テレビアニメ『輪廻のラグランジェ』で地域振興を図った鴨川は、アニメ"聖地巡礼"の例としてNHKの番組『クローズアップ現代』でも取り上げられた。その際に「あざとい」などさまざまな批判を浴び、(主にネット上では)"聖地巡礼の失敗事例"、すなわち"オワコン"の代表格のごとく記されることが多い。しかし、取材に答えてくれた委員会の岡野大和氏は「NHKの取り上げ方について色々と思うところもありますが、"あざとい"とされたことで、逆に実際に鴨川を訪れてくれた作品のファンとの結束力が高まりました」と話す。

「昨年も佐藤竜雄監督ら、制作陣だけが出演するトークライブを行いましたが、百数十人が集まりました。イベントだけでなく、普段もファンと監督がTwitterを通して交流していたり......。鴨川の特徴は、作品とファンの距離の近さだと思っています」(前出・岡野氏)

 すでに続編はないことを委員会が明言している『輪廻のラグランジェ』。それでも、委員会や制作陣は、版権許諾など、地元やファンの要望に協力的だという。

「2032年にタイムカプセルを掘り起こすイベントがあるのが良い"足かせ"です。『輪廻のラグランジェ』はあんな無茶な終わり方をしたので、かえってイベントをやりやすいですね。市民の誰もが知っている作品ですから、これからも地域に作品を溶け込ませていきたいと思っています」(前出・岡野氏)

 岡山県玉野市からは、いしいひさいち作品を通じて、町おこしを行う「もんげー岡山! ののちゃんの街!たまの市」が出展。いしいファンには垂涎のグッズ・四コマつきカレンダーを配布する大盤振る舞い。話を聞かせてくれた玉野市観光協会の坂井心氏にまず伺ったのは、「玉野市でも"もんげー"という方言は使わないのでは?」ということ。最近『妖怪ウォッチ』の影響で岡山県までもが県のPRに「もんげー」という言葉を使っているものの、岡山県人の多くは普段の生活で「もんげー」と言わないと、疑問の声が上がっているのだ。それに対して坂井氏は「いや、県が"もんげー"を使っているので......」と返答。そんな岡山県では、昨年に東京都内に県のアンテナショップを開店。

 ぜひ、そこでもいしいひさいちグッズが買えるとよいのだが、「いしい先生の要望で、地元で売ってほしいということになっているんです」(坂井氏)という。いしいひさいちといえば、絶対に顔出しをしないマンガ家としても知られた人物。作品を通じて、次第に玉野市の認知度は高まっている(数年前まで地元紙の『山陽新聞』のシェアが多く、『ののちゃん』が掲載されている『朝日新聞』の購読者が少なかったため、認知度がイマイチだった)が、マンガ家の稼動などが見込めない分、ほかの地域以上に工夫が必要なようだ。玉野市は、いしいひさいち以外にも少女マンガ界の大御所・一条ゆかりの出身地としても知られているため、これからに期待したい。

 埼玉県栗橋からやってきた「栗橋かんばん娘」のブースでは、なぜか「かんばん娘」ではなく「艦娘」のコスでチラシを配布する女性が。その理由を聞くと「好きだからです!」と即答、お祭り気分を振りまいていた。

 神奈川県川崎市からは、観光協会と同人誌印刷会社とサッカーチームという異色のコラボ「川崎市観光協会&ねこのしっぽ&フロンターレ」が出展。このごちゃまぜ感、販売するほうも参加者以上に楽しんでいたようであった。

 はたまた、新幹線開通で注目を集める金沢市からやってきた「石川県非公認キャラクター・たまひめちゃん」も、初日には「別のイベントに行っているので、今日はたまひめちゃん(註:着ぐるみ)は来ないんです」と圧倒的な残念感! 大事なイベントなのに初日には来られない......この団体の人々は、コミケットスペシャルのユルさをわかっていると思った瞬間であった。その分、翌日に駆けつけてくれた、たまひめちゃんは妙な人気を博していた。観光ブームに沸く金沢市ゆえに、これから注目したい新ヒロインだ!

 奈良ものがたり観光実行委員会では、ご当地で行う各種のイベントをPR。奈良県は、昨年「奈良アニメディア祭」の開催が告知され、注目を集めた。その後イベントの名称は"メ"がひとつ増えて、「奈良アニメメディア祭」に変更されたわけだが、聞いてみると「(学研パブリッシングの)『アニメディア』編集部に問い合わせたら、やはり変更してほしいと。変更後は気持ち良く協力してくれました」(実行委員会代表の古田明宏氏)。この団体、『オレん家の風呂事情』のコラボイベントを奈良健康ランドとコラボして開催したり、妙な実行力の高さゆえに注目度大である。

 このほかにも、今年夏には小諸高原美術館『あの夏で待ってる2015展』を開催予定の「小諸市なつまちおもてなしプロジェクト」、岩手県ゆかりのマンガ家による作品をサイトで公開している岩手県の「いわてまんがプロジェクト」(しりあがり寿氏の作品でPRという、絶妙なセレクトが気になる)など、数多のブースが盛況だった。

 果たして、これからいくつの地域が"オワコン"にならず、マンガ・アニメをきっかけとした地域の魅力を発信していくことができるのか、気になるところだ。
(取材・文/コミケットSP取材班)

おたぽる

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