窃盗捜査の元エースが味付け 刑事ドラマの「プロの仕事」

4月14日(金)16時0分 NEWSポストセブン

志保澤利一郎氏が語る、プロならではの心得

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 最近の刑事ドラマは現職の警察官が観ても「よくできている」と感じるという。それもそのはず、制作の裏側では豊富な知識を持ったプロたちが「警察監修」として携わっているのだ。


 警視庁時代、窃盗捜査を専門とする「捜査三課」のエースだった志保澤利一郎氏。退職後、捜査三課を舞台にしたドラマ『確証』(2013年、TBS系)をはじめ、数々の作品で警察監修を担当してきた。殺人事件を扱う捜査一課とはひと味違う、プロならではの心得を聞いた。


 * * *

 ほとんどの人が色々な部署に行くなか、私は自身の全階級で捜査三課に在籍しました。昇任すると一旦は外に出ますが、また戻る。三課が相手にするのは常習者、窃盗のプロですから、警察も“その道のプロ”を作らなければいけないという意識があったのだと思います。


 コロシを扱う捜査一課はすべての事件を組織捜査で進めますが、三課は1人の刑事がホシを追い詰めていく。いわばプロ対プロ、職人対職人の対決で、こうした捜査と取り調べを両方極めるのは三課の刑事だけです。


 コロシと窃盗が同時に起きた犯罪については、コロシは一課、窃盗は三課で分担します。ただ、コロシのホシは重罪犯なので、犯人の身柄が一課から動くことはありません。その時は三課から応援に行って一緒に仕事をすることもある。


 逆に三課の方がネタを取った場合には三課の事件を優先し、その間に一課が内々に裏付け捜査をして、程良い時期を見計らって引き渡すこともある。『確証』の劇中で、三課の刑事役だった高橋克実さんが一課のチームに加わったシーンは実際にあることです。


 私が警察監修で一番注意しているのは、適正に逮捕されているかどうか。台本に「手錠をかけた」とだけ書かれていても、それでは済まない。逮捕には「現行犯逮捕」「通常逮捕」「緊急逮捕」があります。台本を読んでそこが曖昧だったら、意見を提案することもありますね。


 三課ならではの話としては、たとえば盗難車が集まる解体屋に捜索に入るシーンがありました。台本では強行突入するような形でしたが、実際は逮捕現場以外では令状がないと踏み込めません。なので、台本に「令状は取ってあるよ」というセリフを付け加えました。


 また、一言で警察といっても地域やそれぞれの署によって“文化”が異なる。警視庁では「主任」でも、他県では「ハンチョウ」「係長」と呼ぶなど、言葉の違いもありますし、鑑識さんが着ている服が県によって色が違っていたりする。そういうところもチェックしています。


 最近は『PとJK』という、警察官と女子高生の恋愛映画で、「16歳の女子高生が23歳の警察官と結婚できますか?」というところから相談に乗りました。法律上は親が同意すれば大丈夫ですが、警察としては「高校を出るまでは、という指導が入るでしょう」とお話ししました。


 でも、プロデューサーに「それでも結婚するといったら?」と聞かれたので、「それは仕方ないですね」と。漫画原作の恋愛ドラマですから、いつもよりかなり甘めの監修でした(笑い)。


 警察監修も聞き込みと一緒で十人十色。私も作品に“自分の色”を出していきたいですね。


●しおざわ・りいちろう/1973年、警視庁入庁。1985年に捜査第三課に異動後、以降警部まで全階級で同課に在籍。初代刑事部技能伝承官として刑事養成講習の講師を務めるなど後継者育成に貢献。2011年3月退職後、警察監修の道に。


撮影■山崎力夫


※週刊ポスト2017年4月21日号

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