講談師・神田松之丞 35歳にしては老成した人生観の背景

4月16日(火)11時0分 NEWSポストセブン

講談師の神田松之丞

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 講談の枠を大きく超えて活躍し、講談界に新風を巻き起こしてきた神田松之丞が来年2月、真打に昇進することが落語芸術協会の理事会で決定した。


 二ツ目でありながら独演会では完売が相次ぎ「今、もっともチケットが取れない講談師」「講談界の風雲児」が枕詞となっている松之丞。所属する落語芸術協会では、7人抜き昇進の落語家・春風亭昇太以来の28年ぶりとなる9人抜きの抜擢昇進、日本講談協会では18年ぶりの男性講談師の真打誕生となる。


「ありがたいことです。芸は未熟ですけれども、現在の自分は二ツ目の寸法には合っていないとは感じていました。ようやく認めてもらい、頑張るぞという気持ちを新たにしました」


 来年2月から新宿末廣亭中席夜の部を皮切りに、都内の寄席、演芸場で40日以上の真打披露興行が行なわれる。それに加えて、以前から披露興行をやりたいと公言してきたのが歌舞伎座だ。古典芸能のシンボルである歌舞伎座に、講談師が登場した例はまだない。


「講談と歌舞伎は歴史的に関係が深く、歌舞伎役者だった師匠・神田松鯉(しょうり)への恩返しにもなりますし、講談界にとっても大きな花火になると思います」


 もうひとつの関心事は名跡の襲名だ。


「名前については、師匠からの連絡待ちですが、継ぐなら『幻の大名跡』でありたいと思っています。芸の内容はともかく、講談界のスポークスマンとしてこれだけ頑張った奴はいないという自負はありますし」


 だが、青天井を思わせる今の人気については意外なことに「人気は水物、一時のもの」と冷静に答える。


「人気についてはもう冷め冷めですね。人気があるからといって芸が上達することはないですし。コツコツとネタを覚え、ちゃんとネタ下ろしをしているかどうか。それだけが講談師としての自分に対するぶれない評価基準です」


 メディア出演などで稽古の時間が取れないことがストレスであり、新しいネタを覚えることが喜びだという。


「良いことのあとには悪いことがあり、悪いことのあとに良いことがある。そして最後にはみんな死ぬ(笑い)。今の人気もそのうちにぶり返しがきますよ」


 35歳にしては老成したこの人生観には小学生のときの父親の他界が少なからず影響している。


「昨日まで明るく笑っていた小学生が急に『死』というものを考えさせられ、有無を言わさず大人にさせられる。そりゃ冷めちゃいますよ。でも、この経験がなければ絶対に芸人になっていなかったし、この経験が熟成して芸人としての陰影を育んだのだと思います」


 そして最後にひと言こう語った。


「自分は本当に講談しか興味がない男なんです」


 令和2年2月、真打昇進で神田松之丞は新たな物語を読み上げる。


●かんだ・まつのじょう/1983年生まれ、東京都出身。本名古舘克彦。高校時代に三遊亭圓生で落語に興味を持ち、大学時代に立川談志に衝撃を受ける。その後、講談と出合い大学卒業後の2007年、三代目神田松鯉に入門。2012年に二ツ目昇進、2020年2月に真打昇進(予定)。日本講談協会、落語芸術協会所属。著書に『神田松之丞 講談入門』(河出書房新社)など。4月からは初の冠番組『松之丞カレンの反省だ!!』(テレビ朝日)が放送開始。


■取材・文/鈴木洋史、撮影/小倉雄一郎


※週刊ポスト2019年4月26日号

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