「なつぞら」草刈正雄の深イイ演技で再注目 NHK朝ドラ歴代“名脇役おじさん”11選

4月17日(水)6時0分 文春オンライン

 4月1日からスタートした広瀬すず(20)主演のNHK連続テレビ小説「なつぞら」。通算100作品目となる今作は、ヒロイン役である広瀬の本格登場前から平均視聴率23.1%(4月10日)と好発進中。その原動力となっているのが、“頑固おやじ”柴田泰樹役を演じる草刈正雄(66)だ。独特の名演技と名セリフは朝からお茶の間の涙腺を崩壊させている。



広瀬すず ©文藝春秋


 このドラマはヒロインのなつが北海道・十勝を舞台にアニメーターを志す物語だ。


まさにハイジとおんじの関係性


「オープニングがすべてアニメーションというのは朝ドラ初の挑戦で、本編でも『アルプスの少女ハイジ』や『風立ちぬ』など様々な名作アニメがオマージュされています。主人公なつの幼少時代を演じる子役(粟野咲莉)と厳しくも愛情を持って接する草刈さんの姿は、まさにハイジとおんじの関係性ですね」



 そう解説するのは40年にわたり朝ドラを見続けてきたライターの田幸和歌子氏。今作の草刈のように、物語に深みを持たせるベテラン俳優の演じる“名脇役おじさん”は歴代人気朝ドラでも欠かせない見所のひとつ。朝ドラ通の4氏に“推しおじさん”を聞いた。


「朝ドラにおいて『頑固おやじ』は大きなうねりを作る存在で、ヒロインが大人になるための壁となる役割を担うことが多い。また、頑固だったり融通が利かなかったり、怒鳴りつけたりする人物はヒロインの成長にとって欠かせない。そして、朝ドラ出演後に知名度が上がり大俳優となるケースもあります」(同前)


不器用だけどコワモテでかわいい



 そんな田幸氏が選んだのは、「てっぱん」で養父役を演じた遠藤憲一(57)。


「短気ですぐに怒る。そしてすぐ泣く。泥臭くて暑苦しくて、不器用だけどコワモテでかわいい。今、ドラマに引っ張りだこになっている路線をお茶の間に浸透させたのがこのお父さん像です」(同前)


 現在、情報番組「直撃LIVE グッディ!」(フジテレビ系)でMCを務める高橋克実(58)も思い出深い“おじさん”の一人だという。


「『梅ちゃん先生』では、患者には笑顔でやさしいが、家族の前ではいつもしかめっ面の厳格な父を演じていました。当時すでにバラエティでも活躍していて、面白いキャラクターが認知されてから昔ながらの頑固なハゲオヤジを演じたのは斬新でした」



当時コメディアンだった伊東四朗は……



 テレビ鑑定家の宝泉薫氏が選ぶ名脇役おじさんは、歴代最高視聴率62.9%を記録した「おしん」に出演した伊東四朗(81)。父親役を演じた。


「当時コメディアンだった伊東が急に寡黙でぶっきらぼうで娘のことを売り飛ばすような酷い父親として登場した。語り草になっている、おしんを見送るシーンは、別撮り(おしんとは別々の撮影)を巧みに編集していました。でも伊東は根が芸人なので後日、あれは別撮りだったと明かしてしまう。しかし、結果的に芸の幅が広がりましたよね」(宝泉氏)


 宝泉氏が日本朝ドラ史に刻みたいと脱帽するのが「べっぴんさん」で靴職人役を演じた市村正親(70)だった。


「市村はヒロインに服を作るきっかけを与える役なんですけど、そのストーリーとは別にクリスマスのシーンがあったんです。聖夜に雪が降ってきたときに、市村が『ホワイト・クリスマス』を歌い出すんですよ。ミュージカルスターだから上手いんですけど、歌い上げたあとに、市村が照れくさそうに笑う。彼をキャスティングしていたことによって、こんな仕掛けが可能だったんだなと思いました。フィクションとノンフィクションが融合したような場面でした」(同前)


『朝ドラ100作 ファン感謝祭』名場面で1位に選ばれた


 渡瀬恒彦(74)は演技力を含めた圧倒的な存在感が凄かった、と絶賛する。



「『ちりとてちん』で落語家の師匠役を演じた。落語を止めていたけど、いろいろな人に気持ちを動かされて3年ぶりに高座に上がるシーンはNHKの『朝ドラ100作 ファン感謝祭』名場面で1位に選ばれていましたね。『わろてんか』など芸事の話は数年に1度あるんですが、役者さんが芸人をやるときにあまりにも下手だと成立しない。役と芸が渡瀬恒彦に入っていたということですよね。努力というよりはセンスです」(同前)


 上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は、あまりの反響から急きょ新たなシーンが台本に書き込まれるほどの人気だった「花子とアン」の吉田鋼太郎(60)を強く推す。


「吉田さんが演じた嘉納伝助の妻は若い男と駆け落ちするんです。妻を寝取られた男として恥をかかされますが、それに耐えながら男の美学として妻を許し手放す。吉田さん人気が上がって、ドラマ全体にすごく貢献した。昨年の『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)にまで繋がった吉田人気を確立した役です」



“女の人がほっとかない”役といえば?



 次に碓井氏が選んだのは「半分、青い。」で祖父役を演じた中村雅俊(68)。


「紆余曲折の人生を歩んでいくヒロインを、ずっと見守っていたのが祖父役の中村雅俊さんでした。劇中では五平餅作りの名人でしたが、時折ギターを弾き、フォークソングを歌ったりする姿は中村さん本人と重なりました」


 コラムニストの今井舞氏は異色の3人を挙げた。


「『あまちゃん』のピエール瀧(52)がよかったと思います。寿司店を切り盛りする大将役なんですけど、黙々と寿司を握りしゃべらない。時々、少しニヤッとしたりすることで笑いが起こるみたいな感じで、ピエール瀧が映ると、“待ってました!”と声が掛かるような役どころになっているのがよかったですね」


“女の人がほっとかない”役をやらせたら、やっぱり上手いのが火野正平(69)。


「『芋たこなんきん』の火野正平は、ヒロインの旦那の兄役で、寅さんのようにフラッと予告なしに現れて、酒を届けてくれたりする。キザでかっこいいんだけど、女性問題を起こしてしまう。飄々として捉えどころがなく、ヒモっぽい火野正平がとても懐かしいですね」


ひと味違った人が新風を吹き込む



 最後に挙げたのが、京本政樹(60)。


「朝ドラって、旦那とか弟とかおじさん役にわりと風来坊的な人が据えられることが多くて、『ちりとてちん』の京本政樹はまさにそんな感じでした。いつもド派手なアロハシャツにサングラスで、どんな仕事をしているかわからない。でも、実は誰よりもいろいろなことを見抜いている役柄。ヒロインのいいところには彼だけが気づいていたりして、役者が演じ甲斐あるキャラクターに仕上がっていました。


 どの朝ドラでも、物語が転がるときのきっかけは、こんな人たちが担っていることが多いですよね。どっしりとした役柄ではなく、ひと味違った人が新風を吹き込むことで物語が動いていくんだと思います」


 波瀾万丈のヒロインをひきたてるのは、浮き世離れした魅力に富む“名脇役おじさん”なのである。



(「週刊文春」編集部/週刊文春)

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