12人出産した与謝野晶子が伝える、子どもの人格を豊かに発展させる方法「教育を学校と家庭だけに限定して考えるのはまちがっている」

2024年4月18日(木)12時30分 婦人公論.jp


与謝野さん「どんなによい家庭であっても子どもにとっては単調に思える」(写真提供:Photo AC)

今年1月からNHKで放送中の大河ドラマ『光る君へ』。主人公は平安時代のベストセラー『源氏物語』を書いた紫式部。そんな彼女と同じように、近代の女流歌人として活躍し、『源氏物語』の翻訳を3度試みた与謝野晶子。今回は与謝野晶子が書いた評論集の中から、選りすぐりの言葉や詩を紹介します。与謝野さんいわく、「どんなによい家庭であっても子どもにとっては単調に思える」そうで——。

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思春期は無理に押さえつけない


男の子も女の子も、中等教育を受けるようになれば、もうすでに一人前になりつつあります。

どんなによい家庭であっても、赤ん坊のころから慣れている環境ですから、子どもにとっては単調に思えるでしょう。

その反対に、家庭以外で見聞することは、ことごとく新発見の刺激と驚きをもたらすものです。

自分の家の手の込んだ料理よりも、よその家や宿泊施設の粗食のほうを珍しがったりもします。

父母きょうだいの話よりも、友人の意見のほうが新鮮味や魅力に富むものです。

巣立とうとする鳥を、無理に押さえつけてはなりません。

一生の力


教育を、学校と家庭だけに限定して考えるのもまちがっています。

教科書以外の本から、また家庭以外の友人から多くのことを教えられる、ということを十分に心得ていなければなりません。

よい友人をもつことによって得られるよい影響は、一生の力になります。

異性との交際も、ものごとのわかった父母は、目立たぬように警戒しつつ許容するのがいいでしょう。

「子女の家庭的保護」(『横濱貿易新報』一九二三年四月二三日)

新しい世界に向かっていきなさい


いとしき、いとしき我子等よ、
世に生れしは禍(わざはひ)か、
誰か之を「否(いな)」と云はん。

されど、また君達は知れかし、
之がために、我等——親も、子も——
一切の因襲を超えて、
自由と愛に生き得ることを、
みづからの力に由りて、
新らしき世界を始め得ることを。


いとしき、いとしき我子等よ(写真提供:Photo AC)

*「我子等よ」(『晶子詩篇全集』より)

「いとしい、いとしい、わが子たちよ、/この世に生まれたのは禍だったのでしょうか/「違う」と誰が言えるでしょう。/けれども、あなたたちに知ってほしい/だからこそ、私たち——親も、子も——/すべての古い不合理なしきたりを越えて、/自由と愛に生きられることを、/自分たちの力によって、/新しい世界を始められることを。」

人格を尊重し自由に活動させる


人格を豊かに発展させるには、その活動を自由に、また多様にしなければなりません。

活動範囲や活動の種類を制限しておきながら、個人の人格の完成を求めるのは無理なことです。

活動したいという本能は、赤ちゃんのときから現れます。口で吸い、手でつかみ、足をバタバタさせます。

こうした筋肉の活動から精神の活動にいたるまで、その種類はさまざまです。

赤ちゃんはこんなふうに体を動かすことで、自分の能力を試しているのです。

もし、赤ちゃんの手足を縛って、活動を制限したらどんなに大きな苦痛を与えることになるでしょう。

その不自然さを理解する人たちが、なぜ思春期以降の少女たちの活動を制限する不合理について理解しないのでしょうか。

男女の性別によって、素質の優劣があると考えるのは偏見です。すべての少年少女に等しい教育の機会を与えたいと思います。

「女子の活動する領域」(『女人創造』より)

※本稿は、『与謝野晶子 愛と理性の言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

婦人公論.jp

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