80代で初めての手術を受けることに。不安はあったが心臓外科の医師のあまりに明るい口調と間の抜けた動作に思わず笑みがこぼれて…
2025年4月18日(金)12時0分 婦人公論.jp
あまりに明るい口調と間の抜けた動作に、私は思わず笑ってしまった…(写真:stock.adobe.com)
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パカン!
50代の時、夫とのイタリア旅行の最終日、ホテルのシャワー室で突然背中が痛くなった。筋でも違えたのかしらと思ったけれど、妙に息苦しい。運よくツアーのなかに看護師さんがいたので相談したところ、フロントから熱いタオルを届けてもらい、体を温めてくれて少し楽になった。
帰国してすぐに空港から救急車で大きな病院に搬送され、解離性大動脈瘤と判明した。「よくこの状態で13時間も飛行機に乗れましたね。奇跡的です。ゆっくりのんびり治しましょう」という優しい先生の言葉にひと安心。左肺全体に溜まっていた水は、1ヵ月間安静にすると見事に消えた。
それからは大きな病気もせず生きてきた。ところが先日、狭心症と心臓の僧帽弁の不具合が見つかり、手術をすることに。自覚症状はなかったが、精密検査で判明したのだ。
狭心症のほうはカテーテルでステントを入れてもらうと、無事に血管が太くなった。その後、僧帽弁の手術について心臓外科の先生と相談した。
「先生、体にメスを入れられるのは初めてなんですが、きっと痛いんでしょうね」「大丈夫、全身麻酔だから少しも痛くないですよ」。
先生はそれから、胸の前で合掌した手を広げ、「『パカン!』と開けて手術します」と言った。あまりに明るい口調と間の抜けた動作に、私は思わず笑ってしまった。それからは人に手術のことを話す時、その仕草をまねることで、明るい気持ちでいることができた。
手術の前日から翌日まで付き添ってくれたのは、息子の妻。無事に手術が済んだ後には10日間の入院中に必要なものを買ってきてくれ、面倒見のよさに感じ入ってしまう。
若い先生に支えられて、術後3日目からリハビリを開始。退院後も筋力をつけるため、自転車を1日10分間漕いでいる。胸をギプスで圧迫されているのはつらいけれど、「日にち薬、日にち薬」と自分に言い聞かせて。定期検査でも「パカン!」の先生は相変わらず明るく、深刻にならずに済む。いい先生に出会ったものだと感謝している。
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