中庭が親子をつなぐ1.5世帯住宅 同居の距離感に配慮も『渡辺篤史の建もの探訪』
2025年4月18日(金)11時45分 オリコン
1階 LDK=-東京都世田谷区・石川邸-(C)テレビ朝日
この家は、商業地域にも近い住宅地に位置しながら、外からの視線を遮るほとんど窓のない外観が印象的。2つの箱が組み合わさったような形状で、外壁には樹脂繊維混入セメント板を使用。時間の経過とともに味わいが増すデザインとなっている。
玄関を入ると、約10畳の中庭テラスが目に飛び込む。住宅密集地にありながら採光と通風、そして開放感を両立。各居室をこの中庭に面して配置することで、家族が物理的には分かれていても互いの存在を自然に感じ取れるよう工夫されている。
1階のメインLDKは16畳。南向きの大窓と吹き抜けの天井に設けられた天窓から光が降り注ぐ。アンティーク加工されたフローリングや、変形天板の特注ダイニングテーブルも見どころだ。父親の個室も1階にあり、こちらも中庭に面した明るい空間となっている。
2階には“第2リビング”やシャワー室を備え、親子世帯が互いに気を使わず過ごせるような距離感を実現。6畳の書斎は集中しやすい設計で、壁窓と天窓のみながらも、3ヶ所の出入口で動線に柔軟性を持たせている。
子世帯の寝室からはブリッジで屋上テラスへと続き、そこでは周囲の建物がほとんど視界に入らない開放的な空間が広がる。まるで“自分たちだけの空”があるかのような、非日常を感じられる造りとなっている。
中庭を介して家族が自然とつながりながら、それぞれの時間も大切にできる。そんな現代の“距離感”に寄り添った住まいに、渡辺がどんな表情を見せるのか注目だ。
竣工:2022年8月
敷地面積:142.6平方メートル(43.1坪)
建築面積:87.0平方メートル(26.3坪)
延床面積:150.6平方メートル(45.5坪)
構造:木造在来工法
設計:千倉徳誠/YUTOROSU architects