森元首相の失言で有名になった「あまりにお年」の女性秘書には歴代総理も頭が上がらない

4月18日(日)10時5分 NEWSポストセブン

安倍前首相は総裁選出馬あいさつで中内氏を訪問(相澤氏提供)

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 3月26日に森喜朗元首相(83)が河村建夫元官房長官(78)の議員在職30年を祝うパーティーで放った、「河村さんの部屋に大変なおばちゃんがいる。女性というにはあまりにもお年だ」発言。またしても女性蔑視の失言に世間の目は冷ややかだったが、その「女性」は永田町では知る人ぞ知る大物だった。ジャーナリスト・相澤冬樹氏(大阪日日新聞記者)がレポートする。


 * * *
 森氏の発言を知って、すぐに誰のことを話していたのか分かりました。その女性は、中内節子氏(89)。自民党の河村建夫元官房長官の秘書です。中内氏は議員会館の河村事務所の一番奥の特等席にいつも陣取り、知り合いが姿を見せると気さくに声をかけてくれます。


「あら、あなた。お久しぶりじゃないの。元気にしてた? ちょっと寄っていきなさいよ。先生はいないけど」


 中内氏は政治の中枢、永田町で働くこと58年。あの中曽根康弘氏でも在職56年ですから、永田町歴では及びません。彼女は国会議員ではありませんが、「議員より偉い」とまで言われた大物秘書です。


 私が中内氏と知り合ったのは1990年のこと。当時はNHKの記者で、初任地の山口放送局にいました。河村氏は山口県萩市選出の県議会議員でしたが、この年の総選挙で引退した田中龍夫元文部大臣の後継者として立候補し初当選。当時、田中氏の秘書をしていたのが中内氏でした。私は先輩記者の紹介で河村氏を取材するようになり、東京の中内氏とも交流が始まりました。


 河村氏の議員会館の事務所は、田中氏が使っていた部屋をそのまま引き継ぎました。その流れで、中内氏もそのまま河村氏の秘書になったのです。河村氏はこう話していました。


「中内さんは田中先生が秘書を公募した時に応募してきたそうだ。それまでは化粧品会社の社長秘書をしていたようだけど、身内に政治家がいたので政治への志向があったんだろうな。1963年のことだよ。当時は森さん(森元首相)も国会議員の秘書をしていたから秘書仲間なんだ」


 1970年に始まった「角福戦争」と呼ばれる田中角栄元首相と福田赳夫元首相の熾烈な政治闘争で、中内氏は福田の側近だった田中氏とともに参戦。直前に国会議員になった森氏も福田陣営の一員でした。彼らはここでも同志だったのです。


 中内氏と大物政治家のエピソードは数多くあります。例えば安倍晋三前首相。2018年の自民党総裁選に出馬を決めた際、議員会館の自民党議員の事務所を個別に回りました。 通常は議員本人に挨拶しますが、河村氏の事務所を訪ねた際は、「中内さん」と声をかけて、部屋の奥にいる彼女と握手したのです。周囲の関係者は「なぜここだけ秘書に?」と不思議に思ったそうです。ちなみに安倍氏との関係について、中内氏はこう話していました。


「昔、お母さんの洋子さんが、小学生くらいだった晋三さんと信夫さん(岸信夫防衛大臣)の兄弟を連れて下関と東京を往復する夜行列車に乗っていたの。私もよくその列車を使ったから時々一緒になって、晋三さんが車内を走り回るから注意したことがあったわ」


 小泉純一郎元首相とも逸話があります。小泉氏が首相に就任し、河村氏が文部科学大臣として初入閣した2001年のこと。中内氏が河村氏らと赤坂のイタリアレストランを訪れると、偶然、小泉氏が秘書官たちと食事をしていた。すると中内氏はすたすたと小泉氏に近づきます。 気づいた小泉氏が立ち上がって「中内さん」と声をかけると、「あら純ちゃん、あなた偉くなったわねえ。うちの先生を大臣にしてくれてありがとね」と言ったそうです。小泉氏について中内氏は、「福田(赳夫)先生のところで下足番をしてたじゃない。あの頃、私よくお小遣いあげてたのよ」と話していました。


 一方、30年ほど前、初当選したばかりの河村氏にとって、中内氏は「頭の上がらない」存在だったことでしょう。「河村さんも早く中内さんから独り立ちしないとな」と皮肉交じりにからかう人もいました。会社でも組織でも、切れ者すぎる部下がいると上司はやりにくいもの。でも河村氏はずっと中内氏と離れなかった。公設秘書の定年は65歳ですが、定年後は私設秘書として雇い続けました。 河村氏の長男で秘書を務める河村建一氏(45)はこう語ります。


「中内さんは常々『田中龍夫の後継者を立派に育てなければいけない』と話していました。父にとってやりにくかった部分もあったと思いますが、それ以上に、存在そのものに元気をもらえる。事務所にいるだけで活気が出るんです」


 そんな建一氏自身も手厳しくやられるそうです。


「父が麻生内閣で官房長官になって、私が官房長官秘書になって、周囲は一目置いてくれるじゃないですか。でも中内さんの前でちょっとでも調子に乗ると、『何偉そうなこと言ってるのよ。私の膝の上でおしっこしたくせに』とくるんですよ」


 そんな中内氏ですが、最近事務所で姿を見かけません。河村氏に尋ねたところ、「大みそかに病気をしてな。体はもう元気なんだが、言葉がうまく出ないんで、そのリハビリの施設に行っているんだ」とのこと。


 また事務所に戻ってくるのかと聞くと、


「おう、そうよ。あの席はずっととってあるからな」


 永田町の一角、衆議院第二議員会館3階302号室。田中氏、河村氏と引き継がれたその部屋の一番奥、広い窓際の特等席に、中内氏はきっと戻ってくるはずです。そのときはぜひ聞いてみたい。


「森さんの発言、どう思いますか?」

NEWSポストセブン

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