北尾吉孝氏 フジHD敵対なら「徹底勝負」20年前の“ホワイトナイト”が一変 新取締役候補“すごんだ”
2025年4月18日(金)4時10分 スポーツニッポン
金融大手SBIホールディングス代表取締役会長兼社長の北尾吉孝氏が17日、都内で会見を行った。フジ・メディア・ホールディングス(HD)の株主である米投資ファンドのダルトン・インベストメンツが社外取締役への起用を求めている12人のうちの1人。フジHDに対し「敵対するなら徹底的に勝負する」とすごんで見せた。
2005年に旧ライブドアとフジテレビがニッポン放送の経営権を巡り対立した際、フジを救ったホワイトナイト(友好的投資家)だった北尾氏。この日は、厳しい言葉でフジHD側に経営改革を迫った。3月末に公開された第三者委員会の調査報告書を読んで「これではフジがガタガタになる」と考えたと説明。一方、20年前に敵対した堀江貴文氏に対しては「つくづく悪いことをした。20年前の(自分の)判断が珍しく外れていた」と柔和な表情を浮かべた。
改革案の柱は意識、人事・組織、ビジネスモデルの3点。北尾氏は「手荒なことはしたくない」としながらも「反省もなく、まともな良識に対抗するなら、いつでも受けて立つ。(株を)5%くらい買うのはわけない」と威圧した。フジHDが発表済みの経営陣の選任案も「不十分」と批判。同社が「物言う株主」であるダルトンと協議して人選を再考すべきだと主張した。ただ、アニメを担当してきた清水賢治専務(次期フジHD社長)については、業績などを踏まえ「残しておいていいんじゃないか」。地方局の強みを生かした事業案を述べる時にも「連中のコンテンツ」と“上から目線”で語った。
同じく社外取締役候補として出席したNEXYZ.Groupの近藤太香巳社長から「総理大臣になってほしい」と評された北尾氏。約1時間半の会見では、ダルトン側とのずれも見られた。取締役候補について「全員入れる必要はない」とし、日枝久氏が牛耳った体制の「残滓(ざんし)」とダルトンが呼んだ清水氏を「信念や哲学をお持ちの人」と持ち上げた。
フジHD株を巡っては、SBIHD傘下の資産運用会社レオス・キャピタルワークスも5%超を保有する。今回の問題では旧村上ファンドを率いた村上世彰氏の長女・野村絢氏ら、約20年前の騒動の中心にいた人物の名前が次々と再登場している。ただ「外圧」側の足並みも完全にはそろっていない。6月の株主総会を見据えた「第2幕」が始まりつつある。
≪フジHD金光社長「我々の考え方をまとめていく」≫
フジHDの金光修社長は17日、北尾氏が示した経営改革の提案について「敵対する立場ではなく、検討し、我々の考え方をまとめていきたい」と述べ、北尾氏側と協議する意向を明らかにした。北尾氏が「不十分」と指摘するフジHDの経営陣の選任案について、金光氏は「最終ではない。さらに改定していく」とした。6月に予定されている株主総会に向け「速やかに決めて発表したい」と話した。
また、ダルトンによる社外取締役の提案候補の中には、問題の発端となった中居正広氏が所属していた旧ジャニーズ事務所の業務を引き継いだ「STARTO ENTERTAINMENT」の福田淳社長の名前も。金光氏は「個別の感想を言うつもりはない」と前置きしながら「我々の業界に近い人だなとは思ってます」と複雑な表情を浮かべた。
≪株価乱高下≫17日の東京株式市場でフジHDの株価が乱高下した。午前中は急上昇したが、前日比184円(約6%)安の3031円で取引を終えた。最近の上昇基調の反動で利益を確定する売り注文に押された。SBI側がフジHDの経営を巡り記者会見を開くと伝わると、経営の立て直しによる業績改善期待から買われて一時は約7%高となった。午後は記者会見の内容に目新しさがないとの見方から値を下げた。
≪千葉県提供の番組当面休止≫千葉県の熊谷俊人知事は17日の記者会見で、県がスポンサーとなっているフジテレビの5分間番組「千葉の贈り物〜まごころ配達人〜」の放送が当面休止になると明らかにした。「再発防止策の実効性や実施状況を確認する必要があると判断した」としている。熊谷氏は第三者委員会の調査報告書の内容に関し「想像以上のもの」と述べた。県は一連の問題を踏まえ1月26日放送分から県提供のクレジットを外し、4月13日まで放送。放送継続に抗議の声が寄せられるなどしていた。