【週末映画コラム】人気シリーズの最終章『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』/実際の元収監者たちが演劇メンバーを演じる『シンシン SING SING』

2025年4月18日(金)8時0分 エンタメOVO

(C)2025 Universal Pictures

『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』(4月11日公開)



 ブリジット(レニー・ゼルウィガー)は、4年前に最愛の夫マーク(コリン・ファース)を亡くし、深い悲しみを抱えながらシングルマザーとして2人の子どもを育てていた。自らの欲を捨てて全力で子育てに専念してきたブリジットは、親友たちや元恋人のダニエル(ヒュー・グラント)に支えられ、テレビ局の仕事に復帰することになる。

 そんなある日、ブリジットは公園で出会った29歳のロクスター(レオ・ウッドール)とアプリでつながり、距離を縮めていく。

 その一方、息子のビリーが通う小学校の厳しい理科教師ミスター・ウォーラカー(キウェテル・イジョフォー)が実は優しい男であることを知り、気になる存在になる。子育てや仕事に追われながらも奮闘するブリジットだったが…。

 大ヒット作「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズの9年ぶりの続編となる第4作で最終章。監督はマイケル・モリス。

 シリーズ初作の『ブリジット・ジョーンズの日記』(01)では32歳で独身だったブリジット。その後、恋や仕事に悩み、理想のパートナーを求め続けてきた彼女が、この映画では50代のシングルマザーへと変化した。

 リアルタイムでシリーズを見続けてきたファン(特に女性)にとっては、少なからず自分と重なるところもあり感慨深いものがあるだろう。不器用な等身大のヒロインであるブリジット=ゼルウィガーのシリーズを通しての変化は、ある意味、社会や時代、働く女性の価値観の変化を象徴するからだ。

 また、恋に悩む女性から、人生の苦難を経験した大人の女性へと成長した彼女の姿は、単なるコメディーヒロインの域を超えて物語に深み与えている。加えて、今回は彼女と一緒に年を取ってきた周囲の人たちの温かさが心に染みる。

 若い男性といい仲になるなど、多少出来過ぎの部分もあるが、もとよりこのシリーズは女性たちにとっては一種の夢物語的な側面もあるので、これはこれでいいのだろう。改めてブリジットは一世一代の当たり役だったと思わせるゼルウィガーの好演も相まって、笑いあり涙ありの、最終章にふさわしい映画になっている。



『シンシン SING SING』(4月11日公開)



 無実の罪でシンシン刑務所に収監されたディヴァインG(コールマン・ドミンゴ)は、刑務所内更生プログラムの一環である「舞台演劇」のグループに所属し、収監者仲間たちと日々演劇に取り組むことで気を紛らわせていた。

 そんなある日、刑務所内で一番の悪人として恐れられている通称ディヴァイン・アイことクラレンス・マクリン(本人)が演劇グループに参加することになる。そして演劇グループは、次の公演に向けた新たな演目の準備に取り掛かるが…。

 米ニューヨークで最も厳重なセキュリティーが施されたシンシン刑務所で行われている収監者更生プログラムの舞台演劇を題材に、無実の罪で収監された男と収監者たちとの友情を実話を基に映画化。

 主人公のディヴァインGを演じたドミンゴは、第97回アカデミーで『ラスティン ワシントンの「あの日」を作った男』(23)に続いて2度目の主演男優賞ノミネートを果たした。

 そのほかのキャストは、シンシン刑務所の元収監者で、舞台演劇プログラムの卒業生および関係者である俳優たちが多数参加している。監督は『ザ・ボーダーライン 合衆国国境警備隊』(16)などのグレッグ・クウェダー。

 実際の元収監者たちが演劇メンバーを演じていることもあり、全体としてはドキュメンタリー的な要素が強く、彼らが劇中劇を作っていくところには演劇的な魅力を感じる。

 また、体制による抑圧、自由への渇望、あるいは多彩な演者一人一人の個性が際立つという点では、精神病院を舞台にした『カッコーの巣の上で』(75)を思い出すところがあった。あの映画ももともとは舞台劇だったから、この2作がつながると感じたのが全くの当て推量というわけでもあるまい。

 そんなこの映画テーマの一つは再生だが、メンバーたちに感情移入して、本当の意味での悪人はいないのではないかと思ってしまうところが悩ましくもある。

(田中雄二)

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