50歳迎えたサンドウィッチマン 「ちょっと何言ってるか分からない」のルーツを語る
2025年4月19日(土)7時30分 クランクイン!
■今年でコンビ結成27年 ここまで一緒に来れた理由は?
——『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』の声優として、伊達さんはアートリア公国の王を、富澤さんは評論家を演じられました。伊達さんは収録に6時間以上かかったそうですね。
伊達みきお(以下 伊達):慣れないお仕事だったので、難しかったですね。例えば、振り向く時や、「あ」とか「う」とか、自然に出るような声は台本に書いていないので、すごく難しかったです。しかも、いったん最後まで全部録って、「お疲れ様です」ということで1回最初から聞いてみたら、最後の方と最初の声が全然違ったので、また全部録り直したんですよ。それで6時間以上(笑)。つらくはなかったですけどね。
——どんどん慣れて自然体になっていったわけですね。富澤さんはスムーズでしたか。
富澤たけし(以下 富澤):はい。「だいたいこんな感じかな」と思うものをあらかじめ作っていって、「もうちょっと作った方が良いですか」と聞いたら、「もう大丈夫」と(笑)。
——あっさり(笑)。でも、お二人とも普段の声と全然違うので分かりませんでした。
富澤:ホントですか。
伊達:安心しました。
——本作は夏休みの宿題をきっかけに冒険が広がっていく物語ですが、夏休みの宿題の思い出はそれぞれありますか。
富澤:僕はいつも夏休みの宿題を最終日に必死にやるタイプでした。塩の研究発表ではかなり褒められましたよ。
伊達:僕は自由研究で扇風機を作ったことがあるんです。ヒモをバーッと引っ張るとプロペラが回るというものなんですが、全然風が来ない。よく見ると、扇風機の羽って、しなっているじゃないですか。でも、小学生だったから分からなくて、ただ薄いプラ板を平らに貼り付けただけだから、無風で…。
——ちょっとしたインテリアにはなりそうです(笑)。
伊達:いや、ならないでしょ(笑)。「触ってみてください」と書いて展示しておいたら、みんなやってみるから、ヒモがからまってもうめちゃくちゃでしたよ。
——(笑)。お二人は今年でコンビ結成27年ですが、高校時代から続く友情が、仕事仲間に変わったり、家庭を持ったりと、さまざまな変化があったと思います。ここまでずっと一緒にやってこられた理由は何だと思いますか。
伊達:友達のままだからじゃないですかね。今は仕事のパートナーでもありますが、関係性の根っこが友達っていうのがデカいと思います。
富澤:ずっとライブツアーとかも一緒にやっていますけど、見ている方向や目標が一緒なんですよね。
——ネタ以外の部分で、お二人の中でルールにしていることや、自然とできた役割分担はありますか。
伊達・富澤:うーん…なんだろう…。
——例えばロケ番組を拝見していると、伊達さんがまず先に行って、後ろを富澤さんが歩いていく役割分担に見えます。
伊達:よく見ていますねえ(笑)。確かに、それは役割分担として自然とそうなってきたよな。特に決まり事はないんですけど、それがたぶん自然な二人なんです。
富澤:15歳からの付き合いなので、二人の間ではルールとかないし、地雷もないんですよね。たぶん暗黙の了解になっていて。
伊達:俺がされたら嫌だと思うことは、たぶん富澤も嫌だろうなと思うので、やりませんが。
——嫌だと思うのは、例えばどんなことですか。
富澤:顔をベタベタ触ってくること。
——(爆笑)。
伊達:たまにあえてやりますけどね(笑)。嫌がるのが面白いから。やりすぎてケンカになること? ありませんよ、大人ですから(笑)。
富澤:逆に、(伊達は)眼鏡を触るとすごく嫌がるんですよ。
伊達:汚れるから、それは誰でも嫌だろ(笑)。
——サンドウィッチマンさんは仲良しコンビの筆頭のイメージですが、昔は芸人コンビと言えば「プライベートでは連絡先も知らない」「仕事以外では全く会話もない」みたいに言われ、それがプロのカッコよさのように思われていた時代もありましたよね。仲の良さを隠そうと思った時期はなかったのでしょうか。
■目指すところは「さまぁ〜ずさん」
富澤:別に仲良くないですし。伊達:特別に仲良いだろ!(笑)
——(爆笑)。
伊達:たぶんそれ(プライベートは仲良くないコンビ)は関西系の芸人さんだと思いますね。僕らがずっと見ていたのは、さまぁ〜ず(当時バカルディ)さんとかで。上京してすぐ一緒に野球をした時、二人で一緒に車で来ていて、すごく仲が良くて、その頃から僕らが目指すところや関係性は、ずっとさまぁ〜ずさんなんです。仲の良さを見せないような人たちに、僕らはあまり会っていない。ネタやっているコンビはだいたい仲良いですよ。
富澤:そもそも仲の良さを隠すっていうのが、分からないですね。
——例えば学校のクラスなどで、女性同士はおそろいのモノを身に着けるなど、仲良しアピールする子もいる一方で、男性同士で仲が良いと周りに茶化されるようなことはありませんでしたか。
伊達:僕らは部活(ラグビー部)が一緒だっただけで、クラスは一緒になったことがないからなぁ。でも、確かに、うちの娘も友達とおそろいのモノ買うとか、やっているかも。
富澤:そういう仲良しアピールの意味が分からない。
伊達:僕らは同じモノなんて何一つ持っていない。同じになったら最悪だよな。
富澤:たまにTシャツとか同じモノをもらったりするんですよ。だから、「今日あいつこれ着てきそうだな」と思ったら、さりげなくズラしたりするのに、たまに合っちゃうんですよ(苦笑)。
——これだけ長い付き合いだと、お互いに近付いている部分もありませんか。昔の動画などを拝見すると、今の方がお二人は似ている気が…。
富澤:それは太ったからでしょう。
伊達:昔は細かったけど、体型が一緒の感じになってきたから。
——(笑)。コンビの出発点は、富澤さんが伊達さんを3年がかりで口説いたことだったそうですが、そもそも伊達さんのどこにそんなにも惹かれたのでしょう。
富澤:面白いところ。周りにツッコんだりする人って、他にいなかったから。ネタを作る時にツッコミとしてイメージしやすかったんですよ。
——ネタ作りの土台に伊達さんのツッコミがあるわけですね。富澤さんの「ちょっと何言ってるか分からない」というボケは、すごい発明だと思うんですが、それは実際にお二人の会話の中から生まれたものなんですか。
富澤:高校時代から普通に言っていましたよ。
伊達:みんな言っていたよね。
——どんな高校ですか(笑)。でも、高校時代にすでに誕生していたのはすごいですね。実際に伊達さんが何言っているか分からなかったわけじゃないですよね。
富澤:分からなかったわけじゃない(笑)。
伊達:ホントに分からなかったらヤバいでしょ(笑)。でも、よく考えると、みんな言っていますよね。
——言ってます。でも、みんなサンドウィッチマンさんのマネです。
伊達・富澤:(笑)。
——お二人の意外なルーツが見えてきました(笑)。では、50歳を迎えた今、それぞれドラえもんにお願いしたいひみつ道具は何でしょうか。
伊達:いっぱいあるけど…結局、タイムマシンですかね。迷うのは、過去に行くか未来に行くか。やっぱり過去に行くかな。伊達政宗さんってどういう人だったんだろうと思うので。ただ、タイムマシンってこの先もずっと作られないんですよね。もし作られていたとしたら、この世界にもう未来から誰かが来ているはずだから、それが残念です。
富澤:僕は暗記パン。年を取ってから、ネタ覚えにくくなってきているから。
伊達:ネタ覚えられるでしょ。自分で書いているんだから。
富澤:暗記パン食べれば一発だね。
——(笑)。最後にお互いのリスペクトするところを教えてください。
富澤:忙しくても休みの日はどこかに行くし、睡眠時間が短くても疲れた顔を全然しないところですね。
伊達:最近ちょっとガタがきてますけどね(笑)。(富澤は)ちゃんとネタを作ってくれるところですかね。サンドウィッチマンはやっぱり漫才とコントが軸なので。それを責任持ってやってくれるところはずっと尊敬しています。
(取材・文:田幸和歌子 写真:高野広美)
映画『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』は公開中。