洋楽エッセンス香るサウンドで描く“特別な夜” 注目シンガーソングライター・由薫、ツアーファイナル公演レポート

2025年4月19日(土)10時0分 オリコン

『YU-KA Tour 2025 “Wild Nights”』ツアーファイナルの様子 写真:南部恭平

 シンガーソングライター・由薫が、3月にリリースした新作EP『Wild Nights』を携えて開催した東名阪ツアー『YU-KA Tour 2025 “Wild Nights”』が、17日に東京・LIQUIDROOMでファイナルを迎えた。

 地鳴りのような低音と青い照明に包まれたステージに、由薫とバンドメンバーが登場。幻想的な雰囲気のなか、「Dive Alive」でライブの幕が開けた。続く「Sunshade」では、腕を伸ばして「どこにもいない 君を探した」と切なく歌い、観客を夢幻的な音の世界へと誘う。「私と一緒に素敵な、そして激しい嵐の夜を味わってもらえたら」と語ると、インディーズ時代の初配信楽曲「Fish」を披露。10代の頃の怒りや孤独が込められたこの曲では、「酒飲んで さかなみたいになって…」という刹那的な歌詞が、ドリーミーな演奏により深い余韻を残した。

 そして、新曲「Mermaid」や、「お惣菜をひとりで体育座りして食べる夜もあるでしょ?」との語りから「勿忘草」を披露。茜色の照明のなか、由薫の歌声が「涙に染まった夕日も 迎えにきてくれた」と優しく響いた。静けさをまとった前半を締めくくるのは、代表曲「星月夜」。目を閉じ、胸に手を当てながら歌う姿からは、孤独から光へと向かう強い意志が感じられた。

 後半は一転、「ここからは一緒に盛り上がってくれますか!?」の声とともに「Clouds」へ。観客の手拍子が重なり、会場が一体感に包まれる。「Rouge」「1-2-3」と続けて披露され、エネルギッシュな空気がフロアに広がった。

 大学時代のエピソードも披露され、自身が音楽の道へ進むきっかけとなったのは、アメリカの詩人エミリー・ディキンソンの存在だったと明かした。生前わずかしか詩を発表せず、死後に千編以上の作品が見つかったという彼女の姿に勇気をもらったという。「誰にどう思われるかではなく、自分がやりたいからやる」という精神に共鳴し、『Wild Nights』のタイトルもエミリーの詩から取ったと語った。

 さらに「A word is dead(ことばは死んだ)」の詩を朗読し、「リリースした瞬間に音楽は初めて生き始める。こうしてライブで歌っているときこそ、自分の音楽が本当に“生きている”と感じる」と語りかけた。

 終盤、「ツライクライ」では力強く腕を振り下ろすパフォーマンスを見せ、続く「Feel Like This」では「Just wanna feel like this」とありのままの気持ちを解き放つように歌唱した。

 アンコールでは「Crystals」、そして「もう一度」を観客と合唱。最後はステージにひとりで残り、初の弾き語りツアー『UTAU』の開催を発表した。由薫はギターを手に「brighter」を歌い上げ、“特別な夜”の幕を静かに閉じた。サウンドメイクやアレンジ面で洋楽のエッセンスが香り、懐かしさがありながらも新鮮に響く由薫の楽曲の魅力が凝縮された、充実したライブとなった。

オリコン

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