「ネタに自信がない時は…」絵本作家・ヨシタケシンスケさんが明かす“エッセイ挿絵”の極意「上半分がフリ、下半分がオチ」
2025年4月20日(日)12時0分 文春オンライン
〈 「ヤクザ映画」の東映で社長に直談判 佐久間良子が“東映初の女性主演”を演じることができた理由 〉から続く
4月17日発売の 『週刊文春』 の名物連載「阿川佐和子のこの人に会いたい」に、絵本作家でイラストレーターのヨシタケシンスケさんが登場。 『週刊文春』の人気連載「ツチヤの口車」 の挿絵も手掛けているヨシタケさんが、本コラムにおける極意を語った。
(ヨシタケシンスケ 絵本作家・イラストレーター。1973年生まれ。神奈川県出身。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。2013年に『りんごかもしれない』で絵本作家デビュー。著書に『おしっこちょっぴりもれたろう』『あつかったら ぬげばいい』など。現在CREATIVE MUSEUM TOKYOにて展覧会「ヨシタケシンスケ展かもしれない たっぷり増量タイプ」が開催中。)
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オチを絵にしてはいけない
阿川 この挿絵は毎週描かれているんですか。
ヨシタケ そうです。火曜日の午前中に原稿が送られて来て、その日の夜には上げています。
阿川 その日の夜!? 偉すぎない?

ヨシタケ 偉いでしょ(笑)。本来の〆切は木曜の午前中なんですよ。だけど、誤字や内容的にNGが出たら怖いなと思って。心配性なんです。
阿川 心配性のほうが編集者は喜びますね(笑)。この挿絵って、土屋さんの文章に沿った絵であるのに加えて、ひと話作らなきゃいけないでしょう。これだけで連載ができそう。
ヨシタケ もうよく分かっていただいて。そこを目指してるんです。
阿川 ご自分でそう決めたんですか。
ヨシタケ 土屋先生からのリクエストは1個だけ。「文章のオチをそのまま絵にすることはしないでほしい」と。なぜかというと、やっぱり先に絵に目が行っちゃうので。
阿川 読む前にオチが分かっちゃいけないと。
ヨシタケ 実際始めてみたら、もう1個問題が出てきて。読者の方から、「このイラストに描いてあることは土屋先生のご意見なのか」と問い合わせが来たんです。これはマズいと思って、以来、土屋先生がご自身のことを書いている回は、男性の高齢者の絵を描かないようにしました。誰が読んでもエッセイの内容と絵は別物だと分かるようにしないといけない。かといって内容から遠すぎると挿絵の意味がなくなってしまうので、ちょうどいい距離感を探りつつ……。
ネタに自信がない時は…
阿川 それをたった半日で考えるんですか? どうやって?
ヨシタケ まずタイトルと文章を読み、キーワードをいくつか出します。その上で今回描けないのはおじさんの絵だとか条件を絞り、そこに合う内容を考える。「閃いた!」ではなく、描けないものを消去法で消していくんです。絵に入る文章は最大6行。上半分がフリ、下半分がオチで、上の文章を下の文章でひっくり返すというのが基本ルールになっています。
阿川 神業ですねぇ。
ヨシタケ とはいえ毎週やっていると、上手くいく時とそうではない時があって。ネタに自信がない時は、絵を可愛くするんです(笑)。
阿川 「絵で許してちょうだい、今回は」って?(笑)
ヨシタケ そう、それができるんですよ、絵と言葉の人間には。これね、大発明で。赤ちゃんとかの絵の時は、「こいつ、自信なかったんだな」と思っていただけたら(笑)。
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ヨシタケさんの幼少期から“大学デビュー”、両親や子どもとのエピソード、現在の作風を確立するまでを阿川佐和子が聞き出したインタビューの全文は 『週刊文春 電子版』 および4月17日発売の『週刊文春』で読むことができる。ヨシタケさんが挿絵を担当している土屋賢二さんのエッセイ 「ツチヤの口車」 もあわせてお楽しみください。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年2月20日号)