術後に残った障がい「失ったものを嘆くよりも…」、造形作家の道歩む“鳥獣保護ボランティア”

4月20日(土)9時30分 オリコン

nao'さんによる、羊毛フェルト作品の文鳥

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 羊の毛でできた「羊毛フェルト」で、マスコットなどを作る手芸が人気。中でも、インコや文鳥など “鳥”に特化した作品で知られるのがnao’さんだ。大病を患ったことをきっかけに、造形作家としての道のりを歩み始めたという彼女。制作の傍ら、子どもの頃に始めたという鳥獣保護ボランティアの活動も続けている。nao’さんの制作への思いや、転機を聞いた。

■大病を患ったことが転機に、母の言葉に勇気づけられ造形の道へ

——羊毛フェルトで作品を作り始めたきっかけを教えてください。

【nao’sさん】作家として活動を始める前のことになりますが、命に係わる大病をしたことが転機となりました。術後の後遺症で視覚や平衡感覚などへの障がいと、体力も著しく低下してしまったため、以前のような生活を送ることができなくなってしまったんです。多少の回復は見られたものの、今も状況はそう変わりません。PC作業が大半を占める仕事をしていたのですが、モニターを凝視し続けることが困難となってしまいました。

 これからの私にできること、こんな状態だからこそできることとは何だろう? そんなことをよく考えていました。「失ったものを嘆くよりも、今あるものを大切にする。これも私に与えられた個性」、そんな母の言葉に勇気づけられ、自分にしかできないことをしようという思いから、学生時代に思い描いていた造形作家としての活動を始めました。

——普段はどのような生活を送っているのでしょうか?

【nao’sさん】イベントや手展示などへ向けて、制作中心の生活をしています。健康第一に考えて規則正しい生活を心がけるようにはしていますが、決まった時間に集中できないことも多々あるので、その辺りは臨機応変に時間を使っています。

■小学生から保護鳥の世話、力及ばずとも「それ以上の感動も与えてくれる」

——鳥獣保護ボランティアの活動も行っているそうですが、具体的にはどのような活動を?

【nao’sさん】都道府県によって事情が変わってくるとは思いますが、私の住んでいる県では鳥獣保護科という部署があり、いつもそちらから連絡を頂き、野鳥たちを預かっています。(※野鳥の飼育は認められていないのでご注意下さい)。拾われたヒナ鳥の親代わりになったり、傷を負った鳥たちの手当をするなど、野生へ復帰させることが主です。

 野鳥に関われる貴重な機会ではありますが、抵抗力の低いヒナ鳥は四六時中様子を見ていなければなりません。また、傷ついて野生へ還すことができない場合、最後まで面倒を見続けなければならないため、それなりの覚悟も必要です。健康な子を預かることは稀で、力及ばないことがほとんどですが、それ以上の感動も与えてくれます。成長し、放野までたどり着いた鳥が後ろを振り返りもせずどこかへ飛んで行く…「お礼も無しか!」と思えるくらいが一番です。

——いつ頃から活動しているんですか?

【nao’sさん】もともとは母が始めたことだったのですが、動物が好きだったということもあり、私も進んで手伝うようになりました。保護した鳥たちのお世話を始めたのは、小学生くらいからだったでしょうか。お世話をすることで一生懸命ごはんを食べてくれたり、傷が回復していったり、それがすごく嬉しくて、楽しくて、感動をたくさん与えてもらいました。これはボランティアではない、神さまがくれた鳥と関わるご褒美です!! という思いでお世話させてもらっています。

■目で捉えたものだけではなく、「触って、聴いて、時には匂いも嗅いで」

——鳥獣保護ボランティアの活動が、作品に影響している点は?

【nao’sさん】仕草や羽毛の生え方など、写真ではわからないところを観察できることです。作品にそのまま反映されなくとも、制作する過程で生かされていると思います。それは今後、どう表現していくかということへも繋がっていきます

——羊毛フェルトには動物の作品が多いと思いますが、鳥に特化しようと思ったのは?

【nao’sさん】「鳥可愛い! 鳥大好き!」、これが一番の理由です。もっとも身近な動物であり、師でもあります。力強く生きようとする、野鳥たちの姿勢を何度も見てきました。日々色々な表情を見せ、感動を与えてくれる鳥たちと、自分なりの形でもっと関わっていきたい。そんな思いから、鳥をモチーフとするようになりました。作れば作るほどハマってしまい、抜け出せなくなってしまいました(笑)。

——作品を作る上でのこだわりは?

【nao’sさん】私には視覚障害もあるので、目で捉えたものだけではなく、触って、聴いて、時には匂いも嗅いだりして(鳥好きは皆やっていると思います 笑)、体で感じたものを形として表現しています。自分なりにディフォルメを加え、鳥の良さを伝えられるような作品を目指して。「かわいい、かわいい…」と思って作ることも大切です。

——制作時間はどのくらいですか?

【nao’sさん】白いふくふく文鳥さんのボディ部分で、だいたい12時間前後でしょうか。見た目も触り心地もふわふわになるように、羊毛を植毛しています。くちばしは、粘土を削って盛り付けてヤスリをかける作業を繰り返し、形を作り上げていきます。作業時間は2〜3時間かと思いますが、硬化などの時間を入れたらちょっとわからないです。

——最近、文鳥やインコ、シマエナガなど、鳥の人気も高いようです。

【nao’sさん】鳥たちに興味を持って下さる方が増えるのは、嬉しいことです。入り口は可愛らしい見た目だけだったとしても、鳥たちが生息する環境や他の動植物たちへ関心を持つ、良いきっかけになるのではないでしょうか。鳥にもいろんな性格の子がいて、人が思っている以上にずっと賢いです。空を飛び、水中を泳ぎ、道具を使い、人語を理解して会話をする個体もいます。私の経験なのですべてに当てはまるかはわかりませんが、鳥たちは飼い主の意図を理解し、愛情を注いだ分だけ応えてくれるはずです。問題があるときは、鳥と人との関係にズレがあるのかもしれません。鳥たちの声に、少しだけ耳を傾けてみてください。

——鳥獣保護ボランティアの活動を通して、何か訴えたいことはありますか?

【nao’sさん】ヒナが巣の中にいるのにも関わらず撤去したり、いたずらに巣を破壊したり、害鳥と称してやたらと駆除してしまったり…悲しいですがそういうことがあるのも事実。種類にもよりますが、野鳥のヒナは巣立ちまで1ヵ月前後。お家の周りを汚してしまうかもしれませんが、どうか少しの間だけ待ってあげてください。人も自然の恩恵を受けて生きていることを、頭の隅っこに入れておいて頂けたらなと思います。

——では、作品を作り、公開することで伝えたいメッセージは?

【nao’sさん】私の作品作りのモットーは、「癒すこと、笑顔にすること、元気付けること」です。ふふふっと笑顔になって穏やかな気持ちになっていただけるたら嬉しいです♪

——今後挑戦したい作品や活動を教えてください。

【nao’sさん】ポージングを変えられる、動く鳥たちを作りたいと思っています。構想は練ってあって後は作るだけなので、完成したらSNSなどでご紹介できるかと思います。あとは、もうすぐ個展『ふわっと ふっくり ふくふく展』(5月18日〜26日 gallery 201)を行います。タイトルの通り、ふわふわの小鳥たちがお待ちしております。お近くへ来られた際はぜひ遊びにいらしてください。

オリコン

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